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27・ 何ですか! みんなして。

  

 サンドウィッチとホットドッグが見る間に大皿に山積みになって行きます。


 賄い作りが一段落したところで、改めてココ様を紹介しようと、マリの許へ向かい、ラビちゃんとウルちゃんを手招きして、


「マリ。紹介する……」


 突然、ココ様が緑色の粒子を煌めかせながら、私のお乳を飛び出しました。

 まさか鱗粉じゃないですよね? パンにかかって食べられなくなったら、いかにココ様といえど容赦はしません!

 すると、新緑の香りのする柔らかな一陣の風が吹き、粒子が渦を巻き、ココ様本来のお姿が顕現しました。煌めく緑色の粒子を纏ったようなオーラを全開にしています。

 ココ様は片膝をつき、マリの手を取り、


「ヴェール・ココ・グラン・レセプトと申します。以後お見知りおきを。ココとお呼び下されば幸いです。わたくしも、マリとお呼びする事をお許しいただけますでしょうか?」

「…………すげーきれい」


 イラッ!

 マリは口を半開きにして立ちすくんでいましたが、やっとの思いと言った様子で口にしたのが、その一言です。まぁ、否定はしませんが、いきなり姿を顕した驚きと、丁重な挨拶をされた事を含めての評価に決まっています。

 は! いけません。

 ラビちゃんとウルちゃんが抱き合って震えながら、私とココ様に交互に視線を投げかけています。どうやら不機嫌オーラが滲み出てしまっているようなので、深呼吸をして気持ちを落ち着かせました。

 そんな事は意にも介さず、ココ様がマリに問いかけます。


「さっそくですが、マリ。わたくし勉強不足で「まかない」なる言葉を知らなかったのですが、従業員用の特別なお料理との事で。お恥ずかしい話なのですが、わたくしとても空腹でして、「まかない」を頂戴しても宜しいでしょうか?」


 ココ様、役者です。

 見る者すべてに悲哀を感じさせる、はかなげな表情、台詞回しで言うものですから、さすがにマリも否と言えません。


「はい、お口に合うか、心配ですが、ぜひ、お召し上がり、下さい!」


 イラッ!

 何ですかマリは、たどたどしいながらも似合いもしない丁寧な言葉で。そんな言葉づかいができるとは知りませんでしたよ。

 ココ様は満足気に頷くと立ち上がり、ラビちゃんとウルちゃんの方に向き直り、微笑みを浮かべ、


『ラビとウルですね。わたくしの事は覚えておりますか?』

『緑ノ大精霊様。もちろんでございます。私如きの名を覚えて頂けるとは、感謝の念にたえません。一度だけですがお会いさせて頂きました』


 やたらと畏まってラビちゃんが返事をするのは、まぁ、当然といえば当然としても、


『お言葉を、お掛け頂き、光栄の至り。その美しさ、忘れようも、ございま、せん』


 お~い! ウルちゃん『っス』は、どこ行ったあ~。お世辞は貴女には似合わなすぎですよ~。


『あれ? ココじゃないか』


 食材庫の中からのっそりと顔を覗かせて勇者が言いました。普段と何も変わらぬ物言いに、何だか安心してしまいます。


『相変わらず失礼なフンコロガシですね。こんなのがまさか魔王城にいるとは。ロキ、聞いておりませんよ?』

『はい、言う必要もなければ、価値も無いと思っていましたので』

『それは、そうですね』


 ココ様、納得です。

 あ! 今更ながら気付きましたが、ココ様は日本語でマリに話しかけ、しかも完璧なネイティブでした。

 何百年、何千年と悠久の時を生き永らえているココ様ですから、日本語の一つくらい何処ぞで覚えたとしても不思議では無いのですが……。


 気になりますね。


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