25・ 気の休まる暇が有りません。
『それに心も痛んでますぅ』
ココ様が沈痛な声音で言いました。
『如何なされたのですか?』
『だって、給仕長ちゃん中庭の一面のお花畑を一瞬で氷漬けにして、粉々にして、吹き飛ばしてしまったのですよぉ~『花は食べられません、もっと有効活用してしかるべきです』とか言って、ひどすぎると思いませぇ~ん?』
『ひどすぎます!』
私、即答です。
『でしょ、でしょ、お花を大事にしないなんてぇ~』
いえ、花なんて食べられない物は、どーでもいいですが、給仕長ったら、やる事が大胆過ぎます。管理部署が何処かは知りませんが、直ぐに許可が下りるとは到底思えません。まさかとは思いますが、申請書類を私名義で、どこぞの部署に届け捨てにして無許可でやった、とか? 背すじに悪寒が走っちゃいました。給仕長の暴走に歯止めが効かなくなっている気がします。
『そもそも特殊結界ぐらい、ロキちゃんが作ればいいのにぃ』
ココ様が意外な事を言い出しました。
『私には無理です。ココ様のように、そんな高度な魔法が使える訳ありませんもの』
『勉強不足ですよ。これだけの魔素を。宝の持ち腐れですぅ』
何でもココ様曰く、私の身体中から魔素が滲みでているので、私の傍にいると魔素が取り込めて、心地良いとの事です。滝の傍のマイナスイオンを吸収して、穏やかな気持ちになるのと同じような物なのでしょうか?
『貴女たち魔族は勉強、研究、努力もなしに無造作に魔法を使っているからです。人間たちの方が資質がない分、魔法を基礎から理論立て、研鑽を積み、より高度な魔法を習得するのに余念がありませんよ。私に言わせれば#魔王城__こちら__#でまともに魔法を使えるのは、魔王ちゃんと、給仕長ちゃんぐらいで、後はロキちゃんを筆頭に、制御もできずに力任せに魔素を駄々漏らししているような方ばかりなのですから』
うわ~、お説教が始まっちゃいました。でもココ様、お乳の谷間で寛ぎながら言われても、説得力ありませんよ。
『う~ん、お小言は良しとして、ロキちゃんのお乳のおかげで元気になったので、お腹が空いてきました。給仕長ちゃんが『ロキエル様に美味しいものを食べさせて頂けますから、気合を入れてお願いします』って言うから、ココは頑張ったのですよぉ~』
『えぇ、それはもう、商品開発部の娘が腕によりをかけた逸品の試食会がありますから』
『楽しみですぅ~』
『そろそろ、準備もできた頃合いだと思いますので、さっそく会場にご案内いたします』
『よーし! いくぞー!』
掛け声は勇ましいですが、お乳の谷間からは離れないのですね。
ココ様も、かなりの食いしん坊さんですので、美味しいお料理が食べられると、ご機嫌なのか、羽をパタパタさせてくすぐったくって仕方ありません。
執務室を後に、開発室に向かいます。扉に手を掛けると、
『待って! ロキちゃん!』
私のお乳の谷間を飛び出して、ココ様が裂くような悲鳴にも似た、甲高い声を上げました。
『如何しました、ココ様!?』




