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15・ 絶対食べたくなりました!

 

「何だ、マリ。またロキエルに意地悪されたのか?」


 給仕長たちと入れ替わるように、のっそりと勇者が入室して来て、言いました。


「ちがうよーだ!」


 あらあら、泣き疲れて、暴れ疲れて、くったりしていたマリが急に息を吹き返しました。

 勇者は知ってか知らずか、良く分かりませんが、沈鬱な雰囲気を一瞬で吹き飛ばしてくれました。能天気もたまには役に立ちます。ここは素直に心の中で勇者に頭を下げておいて、私も何事も無かったかのように、その流れに乗っかる事にします。


「ねぇ、マリ何故あの赤ワイン煮は「まあまあ」なの?」

「赤ワインが、いまいちなの」


 料理酒と言えば安酒で良いなどという考えは大間違いで、お酒の質が何より大事ということですね。美味しい赤ワインなら給仕長に頼めばよかったのですが、今更言い出すのは、食い意地が張ってるように思われて恥ずかしいです。これは何とか良いワインを自力で手に入れるしかありません。


「ねえ、マリ、コンフィはまだ残っているのでしょ?」

「あるよ」

「じゃあ、良い赤ワインがあれば作ってくれる?」

「いいよー!」

「なあ、マリ。「良い赤ワイン」と言っても「料理に合うワイン」って、別物だろ。それと同じで「料理する食材に調味料として合うワイン」ってあるのか?」

「マリはお酒のおいしさってわからないけど、香りでだいたいわかる」

「あぁ、酒の調合師、ブレンダーって味覚より嗅覚が大事だって聞いた事があるな」

「お城の酒蔵庫には無いの?」

「わからない、もらったの」

「誰に?」

「厨房の人」


 なるほど、どうせ余り物の酸化した様な調理用の安ワインを、マリに押し付けたのですね。後で請求書をチェックして、開発部に回されているようなら調理部に突き返してやりましょう。


「マリは地下の酒蔵庫に行った事はあるの?」

「ないよ」

「分かったわ、マリ、赤ワインを探しに行くわよ!」


 マリの手を取り、席を立ちます。


「勇者さま、ロキ、なんか怖い」


 マリ、小声で言っても聞こえているわよ!


「何故、勇者までついてくるの?」

「いや、暇だし、旨いもん喰いたいし」

「仕事しなさいよ」

「俺、無職だし」


 衝撃の事実発覚です。マリの教育上、悪影響間違いなしです。


「勇者、どうやって生活しているの?」

「モンスター退治とか、たまに人間界でうろついてる悪魔の討伐とか、でも一番実入りのいいのは、くそ生意気な冒険者とかを……ふ゛んげっ」


 マリの教育上、これ以上は聞かせられません。


「マリ、勇者の上で飛び跳ねていないで、行くわよ」


「は~い、勇者さま、いくよ!」

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