12・ 鉄板の組み合わせです。
『お二人とも、宜しいですか?』
突然、魔王様がテーブルを軽く叩いて、皆の耳目を集め言います。
『この「フライドチキン」はレストランでもピザ専門店でも取り扱わせませんよ。ロキエルさん、ピザの出店をすぐに軌道に乗せて「フライドチキン」専門店の出店準備に取り掛かって下さい』
何を言い出すかと思いきや、また面倒事ですか。
『魔王様、まだ食べもしないうちから……』
『何を仰いますか。この「コンフィ」に、あの香りですよ。爆発的人気になるに決まっています』
ホント、時々、魔王様は有無を言わせぬ威圧感を醸し出してくるから、嫌になります。しかし、ここで首を縦に振る訳にはいきません。
『魔王様、「ピザ」にしろ「カレー」にしろ、そしてこの「フライドチキン」にしろ、ひとたびこの世に出れば、瞬く間に世界中を席巻してしまうでしょう。しかし、以前にも申し上げた通り、その弊害も生まれて来るに違いありません。時期尚早に過ぎます』
『いや、しかしですね……』
『いや、魔王「フライドチキン」は「カレー」と同じで、まだ香辛料に馴染みのないこの世界では早すぎる。まずは「ピザ」でじっくりと消費者の、料理に対する意識改革を浸透させてからだな。「ピザ」もそうだが、あの「ピメントオイル」が良い橋頭堡になるだろうよ。それに、この鴨、青首鴨って言っていたから野鳥だろ? 野生種を狩猟して一定品質の安定供給ができるのか? 一体幾らで仕入れられるんだ? 高価であろう香辛料も、食用油もしかり、廉価で販売してこそ、世界中に店舗展開する事ができると思うぞ』
おー! 理路整然とした勇者の助け舟です。
何だか頼もしいぞ、勇者!
『なるほど、少々浮かれ過ぎてしまったようです。まだ検証、精査をしなければならない問題があるという事ですね』
と、話しているうちに、フライドチキンが出来上がったようで、マリが皿を運んできてくれました。何という圧倒的芳香なのでしょう、ウルちゃんの眼が血走っています。
『アツイウチニ、クライヤガレ!』
『まあ、魔王様、マリもこう言っていますし、まずは試食してみましょう』
私が言うより我先に口にした勇者が、
『おい、ロキエル、この旨さ尋常じゃないぞ。さすがにスパイスは、あの、白ひげ爺さんのチェーン店の、世界最強のフライドチキンには今一歩及ばずと言ったところだが、極上の鴨を使っただけあるな、コンフィの味わいと相まって、総合力として、あの店のフライドチキンを遥かに凌駕しているぞ』
なんですとー!
マリのお料理の腕も、勇者の味覚も信頼はしていますが、あの店の、世界最強のフライドチキンの上を行くとは、俄かには信じられません。
「マリ、まさかフライドチキンも食べちゃ駄目とか言わないわよね!?」
「いわないよー。ロキも食べて、食べて、おいしいから!」
マリが「おいしい」と、断言したではないですか!? 勇んでフライドチキンに伸ばす手が、ふと、急停止です。はっ! 忘れてはいけません。
『給仕長「キンキンニヒエタ」……』
って、もう目の前に用意されていました。




