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第4話 買い物2

「うむ、この椅子はなかなか座り心地が良いな。秘密結社の総統に相応しい……」

「麗奈、これ3万もするぞ……」

「何を言う。これから3年間毎日座るんだ。良いものを買って何が悪い」


 大手家具メーカー「似鳥(にとり)」にて、俺たちは家具を見て回っていた。今までのところ購入が確定したのは本棚(4万8000円)、地球儀(6000円)机(2万5000円×5)。軽く20万は超えそうだ。


「ここの家具は安いし質もいい。いい買い物をしたな」


 椅子に踏ん反り返って麗奈は高笑いを始める。他の客が見てるからやめて。


「さて、他に何を買おうか。あれ売ってないかな。ほら、鹿の頭部の飾り物とか。トラの毛皮でできた絨毯とか」

「あるわけないだろ。どこの闇市だ」


 麗奈は値札に目もくれることなく商品を購入する。結局30万円近くかけて部室の家具を揃えた。


「……かしこまりました。究明高校に土曜日の午前中着で配達するよう手配いたします。お支払いは?」

「現金で頼む」


 麗奈がポンと札束を渡すと、店員は目を剥いた。


「汚い金ではないです。……多分」


 俺は余計とは理解しつつもそう付け加えた。




 次に向かったのは電気屋だ。こちらも「吃驚(びっくり)カメラ」という大手家電メーカーである。


「最新のパソコンを2台用意してくれ。金に糸目はつけない」


 店内に入るやいなや、麗奈は近くの店員に話しかけた。中年のおっさん店員は一瞬で目を輝かせると嬉しそうにパソコン売り場に案内を始める。


「あ、それから最新のクーラーと小型の冷蔵庫も。ポットも売ってくれ。あとは扇風機……間違っても羽がついてるのはやめてくれよ?おっと忘れるところだった。プロジェクターも一式頼む」


 移動中にも関わらず麗奈は店員にまくし立てる。店員はここ数年で1番の喜びと言わんばかりの笑顔を見せると内線でボソボソと話し始めた。他の店員に伝えているようだ。「いいカモが来た」と。


「あまり時間を取りたくない。創、悪いがパソコンを買っていてくれ。私は他の家電を見てくる。あ、あとスマートフォンも買っておこう。プライベートと別の方がやりやすいだろう」


 店員のおっさんが小さくガッツポーズをしたのを見逃さなかった。よかったな、今月の営業成績はあんたが1位だろう。




「26点合計で94万8542円になりまーす!」


 満面の笑みで会計をすませるおっさん。


「世話になったな。釣りはいらない」


 札束を渡す麗奈。


「いや、釣りはください」


 お釣りを受け取る俺。


「ご来店ありがとうございましたー!」


 謝罪してんのかって勢いで頭を下げるおっさん。


 店舗の外に出ると、あたりは薄暗くなっていた。


「もうこんな時間か。行きの電車でも言ったが私はマントと軍帽が欲しい。早く買いに行こう」

「いや、そんなもんどこにも売ってないだろ……」

「そうなのか? 小耳に挟んだ話によると『湯煮黒ゆにくろ』というお店は相当品揃えがいいと聞いたが」

「断言しよう。あるわけがない!」


 あからさまにしょんぼりとする麗奈。


「……まあ、ネット通販ではたくさん売ってあるみたいだけど」


 麗奈は欲しいおもちゃを見つけた幼女の如く眼を輝かせた。


「さすがだ! 天才メカニックは工学だけでなく情報学にも精通しているのだな!」


 今時常識の範囲だと思うが。薄々感づいていたがこの女はかなりの世間知らずらしい。



◯●


 土曜日。学校が休みとなるこの日ではあるが、俺は朝早くに部室にいた。座り心地の悪いパイプ椅子に腰掛け。くるくるとスマホをいじる。


「おはよう!」


 バァーン、と扉が開け放たれ、麗奈が現れた。約束の時間5分前のことである。

 麗奈はいつも通りセーラー服を着こなし……いや、余計なものが。


「その格好って……」

「どうだ、なかなか似合うだろう」


 麗奈は黒い軍帽を被り、膝あたりまでありそうなこれまた真っ黒なマントを羽織っていた。


「家からその格好できたのか?」

「当然だ。やがてこの国のトップに君臨する私が何を恥じる必要がある」


 麗奈はどさりと荷物を落とし、椅子に座った。


「ところで、創はつけていないのか?」

「……いや……」


 俺はバックの中から荷物を取り出した。それは昨日俺の家に送られてきた商品。無駄にでかい箱に入っていたのはごっつい安全ゴーグル。ベルト型の小型バック。それから黒い軍手。

 どうやら、麗奈のメカニックのイメージに合う小道具をかき集めたらしい。


「なんだ、ちゃんと持ってきてるじゃないか」

「まあな……」


 俺は渋々それらを装着する。ごっつい安全ゴーグルは意外に軽かった。


「よし、秘密結社のメカニックっぽくなったな」

「そりゃ何よりだ」


 これで道を歩くのはなかなか痛いやつじゃないか?


「とこれでそのロボットはなんだ?」


 麗奈がようやく食いついた。部室の奥に並んだ三体のロボット。いずれも二足歩行で人間っぽい形にまとめられている。


「これは【カラモチ11号】だ。今日は重たい荷物を運ぶみたいだから連れてきたんだ」

「よ、余計に面倒にならないか? こいつら自体が重たそうだけど」

「なんてこというんだ。マーク1。見せてやれ」


 俺がそういうと一番右のロボットの目が光る。


「おおっ!?」

「この本棚を持ち上げてくれ」


 ロボットは本棚の前に立つ。巨大な本棚は1人で運ぶのは不可能かに思われるが。


「す、すごい!」


 カラモチ11号は右腕だけでそれを持ち上げだ。




カラモチ

創が戦闘用ロボットの片手間に開発した運送用ロボット。名前の由来は力持ちから。1号から11号まで存在。500キロまで持ち上げることができる。

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