表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Awakening Of Magic  作者: Hanna
第一章 魔導・杖騎士学校 編
9/87

第七夜 慣れて来た学校生活

 ジェン、アンネ、ソルは、仲間として学校生活を楽しく送っていたが、悪の手が次々と襲い掛かる⁈

 三人は、悪の手を鎮める為に騎士としての志を持って、挑む!

 リティが学校を訪れてからその日の放課後……ジェン、アンネ、ソルは一〇三号室で話をしていた。ソルは、二人の部屋に入って三度目だが、まだ少し女子の部屋になれない様子だ。


「それで、ジェン。何を話すの?」


「リティ王女からの話なんですけど…彼女の身内に助けて欲しい人物がいるそうです。」


「リティ王女が?」


 アンネとソルは首を傾げると、ジェンは説明する。


「はい。彼女のお兄様でして…。」


「ナイト王子か?」


 ソルは、王子の名前を挙げる。ジェンは頷いて、こう言う。


「それで、彼は何らかの事情があると。」


「それで、何とかしたいと言う思いでリティ王女は、ジェンに協力を依頼したのね。」


 アンネの言う通りである。ジェンは、アンネとソルに詳細を話して、外部には漏らさぬ様にお願いした。


「なるほどね。ナイト王子の様子がおかしい…か。嫌な予感がするよ…。」


「俺もだ。しかし、王子が大変じゃ…この先、どうなるんだよ?」


「でも、会える方法は一つだけあります。……年末大会です。騎士(ナイツ)学校と対戦し、どちらかの学校の一チームのみ、彼と一戦を交える事ができるんです。リティ王女が言うには、今年が最大のチャンスであると。」


「分かったが…。大会で話しながらの決着は、難しくないか?」


 ソルの言う事も一理ある。万が一、失敗した場合…只ではすまされないだろう。勿論(もちろん)、ジェンも分かっていた。


「リティ王女だけでなく、母親であるナシィー女王様も彼の様子がおかしいと申していました。」


「女王様まで…。何で?」


 アンネがそう言うと、ジェンは腕を組んでこう話す。


「彼から悪の気配を感じていると…。それも、ただの悪ではないと言っています。私たちは、善と悪の心を持つのが、当たり前です。心の悪とかでは、無い何かがあると…。」


「マジか…。アンネの言う通り、嫌な予感だな。」


 ソルは言う。アンネも彼の言葉に頷く。ジェンは、考えて述べた。


「年末大会に向けて、鍛錬を重ねるしかありませんね。……ところで、アンネ。自警団(ヴィジェラーンティ)のアジトへ潜入した調査はどうでした?」


「ちょっと、待ってて。……これなんだけど。」


 アンネが取り出したのは、彼女自身で執筆したメモであった。ジェンの記憶の手がかりが無いかと、休日に自警団(ヴィジェラーンティ)のアジトへ潜入し、調査していたのだ。透明(インビジブル)魔法(以後、透明(インビジブル))を使ったおかげで見つからずに済んだ。


「何だ、これ?」


自警団(ヴィジェラーンティ)が話していた一部に不思議な絵を見つけたから、帰って描いてみたわ。知性のある異獣に刻まれていたみたい。」


「知性のある異獣、ですか…。厄介な敵が出て来たようですね。」


「なぁ、ジェン。お前の左鎖骨にあるやつと同じじゃ、ないよな?」


 ソルがそう言う様に、ジェンと資料に書かれている物が似ている。アンネもそう思っていた。ジェンの聖痕の事は二人は知っているが、どうして異獣に刻まれているのと同じなのか疑問に思う。


「そうですね。最初は驚きました。ですが、どうしてこうなったのか見当もつきません。……でも、こうしている場合ではありません。今、目の前にある課題をクリアするのみです。現在、それしか私たちにはできませんから。」


「そうね。でも、いつか参考になる時が来るわ。とっておいた方が良いよね?」


「あぁ。絶対に必要な時が来るかもな。」


「ソルがそこまで言うなら、とっておくね。」



 三人は話題を変えて、中間試験に向けて話を始める。


「試験って、ただ魔法を的に当てるとかじゃないのか?」


 ソルは余裕ぶっているが、アンネは彼の背中を「ビシっ」と叩く。


「あんたね…。技術と機動、臨機応変な対応が問われているのよ。」


「そうですね。アンネの言った通り、三つに一つは難題を出すでしょうね。」


「そう、だったな。いてぇ……。まぁ、俺たちには相当難しいのを出してくるだろうな。」


「確かに。言われてみれば、そうね。」


「努力を積んで行けば、必ず力になると言いますし、練習を少しでもコツコツと頑張りましょう。」



 数時間後、夕食になると学校の鐘が鳴る。三人は食堂へ向かい、食べ始める。


「うん。やっぱ、旨いな‼」


「ソルは、スタミナ食をよく食べるわね。」


「勿論さ。そうしないと、体が元気にならないんだ。」


「元気なのは良い事ですが、早食いは禁物ですよ。気を付けてください。」


 ジェンがそう言うと、早速…ソルは早食いで(むせ)てしまう。アンネは、ジェンにこう質問する。


「そう言えば…、年末大会は私たちの学校と騎士(ナイツ)学校のそれぞれの学年の代表が競い合うんだよね?」


「はい。魔導騎士(マジックナイト)短剣(ダガー)と魔導書、杖騎士(ロッドナイト)(ロッド)で個人にあった武器を応用して戦う。騎士(ナイツ)学校は、自分で鎧を製作したり、厳しい訓練を受けて精神をも鍛えて戦うと言います。」


 ジェンはそう説明した。彼女の言う通り、学校が異なれば、学ぶ内容も異なる。魔導(マジック)杖騎士(ロッドナイト)学校は、主に魔法を身に付けて武術を取得する。騎士(ナイツ)学校は、武術や体力づくりを終えた後、魔法を学ぶ。

 どちらも実績は素晴らしいが、最近は騎士(ナイツ)学校が年末大会で連覇を飾っている。



 一〇三号室。ジェンは風呂終えて、パジャマ姿で教科書を読んでいた。アンネは、髪を熱魔法で乾かし終えて、洗面所から出て来た。


「アンネ、少しお話しても良いですか?」


「?どうしたの?」


「その、アンネが時々食堂で窓の外をよく見ている様ですが…。すみません。理由が無いのに、こんな質問をしてしまって。」


 ジェンはそう言うが、アンネは慌てて言う。


「いや、ジェンは悪くないよ。ちゃんと理由はあるもの。……実は、六年前から行方が分からない子がいて。私たちと同い年で男子なの。」


「なるほど…。それで心配をしていたのですね。無理もありません。…アンネ、その人の特徴とかありますか?」


「えっと…吸血鬼(ヴァンパイア)の一族って言っていたわ。あ、でも、これはあまり口外しない方が良いみたいで。」


吸血鬼(ヴァンパイア)……思い出しました!八年前から行方知らずと言われる一族です。……アンネ、その人の事を話してくれませんか?」


 アンネはジェンの願いを聞き入れ、吸血鬼(ヴァンパイア)である少年について話を始めた。



 春のある日、六歳のアンネは母・ヘンリと共に買い物に出かけていたその帰りの事…。アンネは、狭い街路で一人の少年が倒れているのを見つけた。


「お母さん。倒れている子がいる!」


 アンネはヘンリにそう伝えると、一緒に少年の元へ行く。倒れていた少年は、酷いけがを負っていた。ヘンリは急いで少年を抱え、アンネは荷物をできる限りもって、家へと向かった。

 アンネの父・ロッソニは少年の体についた汚れを落とし、ヘンリは怪我の手当てをした。アンネは様子を見るなど、看病に努めた。少年は、金色でちょっと癖のある髪の毛をしていた。

 数分後、アンネが様子を見ていると、治療を受けた少年が紅玉(ルビー)の様な美しい色の瞳をゆっくりと開く。


「…!気が付いた?」


「‼…誰だ‼」


 少年は上体を勢いよく起こすが、傷が少し痛む様で少し苦しい様子だ。


「待って。まだ、治っていないし。いきなり動いちゃ駄目!」


 アンネは少年にそう言うも、敵意むき出しの少年は鋭い眼差しで彼女を見る。


「お前、何もんなんだ?ここはどこだ?」


 すると、丁度そこへアンネの母・ヘンリが来た。少年は警戒をする。


「お目覚めになりましたか?大丈夫ですよ。ここは安全です。」


「も、もしや、あんたは⁈」


 少年はヘンリに「ある事」を尋ねた。アンネは当初、よく分からなかったそうだ。ヘンリは、彼に助けた張本人はアンネである事を紹介した。


「よ、よろしくね。名前は何て言うの?」


「僕は、シグアーガ・ヴァンア。…シーガと呼んでください。」


「シーガ君、よろしくね。」


「じゃぁ、私は夕食の支度をするわね。アンネ、シーガ君の事お願いね。」


「はーい!」


 ヘンリは、アンネの部屋を出て下の階へと向かった。アンネは、ごく普通の一軒家で暮らしている。

 シーガは、アンネにこう話して来た。


「ねぇ、君はいくつなの?僕は、七歳だけど。」


「あ!同じだ!」


「良かった。アンネちゃんと同じで。」


 ちゃん付けで呼ばれた彼女は、少々驚いたが、彼をみてふと疑問が浮かんだ。アンネは、緊張をしつつも話をする。


「シーガ君って、私よりも肌が白いね。羨ましいなぁ。」


 すると、七歳とは思えない程の大人な目付きになり彼はアンネを見る。


「あれ、知らないの?僕は…これだよ。」


 シーガは口を薄く開き、とても鋭い犬歯をアンネに見せる。まるで、噛み付かれたら痛そうなものである。


「え?」


「これを見ても分かんないか…。僕は、吸血鬼(ヴァンパイア)だよ。」


 アンネは、友人から聞いたことがあった。吸血鬼(ヴァンパイア)は、人間の血を喰らって生きる者。男性は女性、女性は男性の血を喰らう。そして、特徴なのは日焼けもしない真っ白な肌に、犬歯がとても鋭い事と紅玉(ルビー)の様な美しい瞳である。

 シーガは怖がるアンネを見て、大人な目付きから七歳の無邪気な目線になる。


「大丈夫だよ。噛み付いたりしないって。むしろ、怖がらないで欲しいかな。僕の家族、全員死んじゃってさ。」


「そう、なの?」


「うん。吸血鬼(ヴァンパイア)の住んでいた里は、誰かによって無くなってしまったんだ。吸血鬼(ヴァンパイア)の一族は何もしていないのに…。僕は、必死に逃げて来たけど…この首の(あざ)は残ったまま…。」


 酷い‼シーガ君たちが何もしていないのに。…あの痣、何とかならないかな?


 と思いながら、ある事を思いついたアンネは、机にあるアクセサリーケースの中から、紅玉(ルビー)の宝石がついた首飾り(チョーカー)を取り出して彼に言う。


「ねぇ、これはどうかな?痣、見えていたら大変かなって思って。」


「あ、良いね。それ!……でも、いいのアンネちゃんのを借りて?」


「良いよ。と言うより、貰ってよ!友達の証!」


 シーガは、紅玉(ルビー)のチョーカーを身に付けた。彼はアンネを初め、ヘンリとロッソニにも心を開き、家族の様に生活を送っていた。

 しかし、その年の夏にアンネは「事件」に遭遇した。同時にシーガは行方知らずとなり、以来七年…再会がないまま時が過ぎた。



「そうなんですね。六年前、確か謎の集団によって里が滅んだと聞きました。良かったです…、生き残りがいて…。」


 ジェンの言葉にアンネは「いつか、また会いたいと思っている」と言い、窓から満月の夜空を眺めた。


 その同時刻。月明かりが王都(エルダ)を照らす中、魔導(マジック)杖騎士(ロッドナイト)学校の屋根上に癖っ毛の金髪に紅玉(ルビー)色の瞳を持った少年がいた。ベルトの後ろには、二本の手軽な鎌が装備されていた。


「やっと、見つけたよ。…今まで、寂しくさせてごめんね。でも、君を守ってあげる。この俺がね。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ