第六十四夜 苦悩と務め
反乱軍が集まる拠点は、都から遠く離れた郊外であった。そこには、兵士や騎馬民族の人々や征服された各国の王がいた。湯は彼らに声を掛け、「今の王国を解決し、元の国を共に戻そう」と意見を合致させて共に戦う事を決めた様だ。
「朕の国の者が他国へ悪い事をしてしまった時、どうしようかと悩んでいたが、ビルガメシュ様とエルアドのおかげで助かったのだ。今は、他国同士で協力関係を持っているのだ。」
「凄いな。…あ、あのさ。その……朕って何を意味しているんだ?」
ナイトはよく分からず、商に尋ねると「朕は、王となる者の一人称だ」と答えた。答えを聞いたナイトは「なるほど…」と渋々と言った。そして、本部のテント前に着き、ナイトは商とビルと共に他国の王も参加する会議に出席をした。
ジェンたちは支給された宿のテントを貰い、そこでしばしの休憩を取っていた。
「卑弥呼様。」
「卑弥呼で、良いよ。私も、ジェンって呼んで良いかな?」
「うん。それで、卑弥呼は、ビルの事をどう思うの?」
ジェンはエルの傍に座り、そう質問する。卑弥呼は答える。
「どう思う……。そうね……昔と違って、ビルの父親は王国の態勢を整えて、神権政治から民主政治に変えてさらに維持と発展を促したの。多少の心配はしたけど、彼女なりに勉学に励んで国の象徴に相応しい自分を目指したんだ。」
「そう言えば……エルは前世が王だったと聞いたけど…。」
「うん、本当よ。子供の時は可愛かったみたいよ。でも、青年になったら暴君で暴れまくったみたいよ。」
「え、ぼ、暴君⁈」
「そう。私も聞いた時は、信じらんないと言う事までしているしね。」
卑弥呼はそう言いながら、話を続ける。
「私が来た時は、エル前世で友達だった人が死んでしまって、不老不死探索を終えた伝説から数十年……二代目の王・ビルガメシュ二世に転生していたんだ。」
ジェンは「どうして転生しているのが分かったのか」と卑弥呼に聞くが、「私にもわからない。ごめんなさい」と言い、続ける。
「生前の友の事を聞いたけど、もう話す事は無いだろう……俺は神と人を繋ぐ王ではなく、人の文明を築く王の道を選んだのだからなって言っていた。賢者として、越えるべき壁だったんだと思う。私も、英雄たちの世界で彼と話をして、完全な賢者になったからね。」
「英雄たちの、世界?」
ジェンがそう言うと、卑弥呼は「実は、自分の父親の母……祖母が天狐と言う善なる狐の妖怪で、自分はその血を強く受け継いでいて三分の二が半妖」と話す。
実際に、卑弥呼はジェンだけに白狐の耳と尻尾を見せる。ジェンは、これが卑弥呼の本来の姿と言う事に驚いたが、白い毛並みが綺麗で怖いと言う思いはこれっぽっちも無く、「綺麗!」と言った。
卑弥呼は「ありがとう」と言い、エルの話に戻り続ける。
「そして、エルが前世を思い出した時は、私も驚いたさ。奇跡ってやつかもね。まさか、自分が未来を視ずに無邪気に、皆の為に努力をする少年に転生しているとは思わなくて、彼がそれに気付いた時は、少々イラッとしたらしいけど、これはこれで悪くないし、楽しめているって言ってたわ。以前は、寝不足と過重労働を重ね過ぎて、一度目は冥界に落ち、二度目は初めての発熱を起こしたらしいから。」
「へぇ~……って、えぇ⁈」
ジェンは驚く。何故、寝不足してまで働いたのだろうか?人間にとって、寝るのも生物にとって重要な行為である。エルは、カンナギにその訳を話していたようで、彼女は二人だけの秘密として話す。
「彼はね……一度、迷惑をかけてしまった。一度目の人生で、幼少期はとても賢かったのに……青年になれば、自分が一番で自分の価値観が基準、宝や美女も手中に収め、力を示した。
第三者から見れば、暴君ってやつだ。友の死を悼んで、不老不死を求めたが、結局得られず、若返りの草しか手に入らなかった。
そして、戻った時には故郷は荒廃していた。十年近くも放って置いたから、人は近くの都市に移動していた。帰った時は、門でずっと待っていた妻に怒られた。
それで、これからは王としての務めを今までしてこなかった分を果たそうと決めたのだ、って言っててさ。本当に、賢王は不器用な人って思ったわよ。」
「なんて、無茶な…。」
ジェンは呆れてこの言葉しか出てこなかった…。
「ジェンと同じ様な言葉を、二度目の人生でも言われたみたい。女王である彼女の前世から王様がいなくなったら、誰が王を務めるんですかと言ってな。そん時に、根負けしたみたいで、最終的にはプロポーズしたものね。」
「ふふ。良い人なんだね、エルは。」
「まぁ、自慢の女帝で、自慢の妻だって言っているもの。」
卑弥呼の話に、ジェンはビルとエルの絆の雰囲気に憧れ、彼女にこう質問した。
「ねぇ、卑弥呼。私も、ナイトの妻として、この戦いが終わったら、王妃として即位するんだけど……自分は何が出来るんだろうって思うの。手伝うのは分かるけどね。……どうしたら、彼を支えてあげられるかな?」
ジェンの問いに、卑弥呼は彼女の表情を見る。それは真剣で不安が出てしまっている。彼女は、ジェンの表情を見た後、正面の景色を見てこう答えた。
「……答えは、一つじゃないよ。でも、貴女なら、あの王子をいつでも支えられるよ、絶対。あの王子、ここに来るまで私に、アイツにいつも支えられていて、助かっているし、愛しい存在だと言っていたわ。だから、自信を持って良いんだよ。ジェンが落ち込んでは、ナイト王子も落ち込む。ただ、悩んでいる時は溜め込まず、相談しやすい相手にするんだよ。私なら、いつでも来てあげるから。」
「あ、ありがとう。……なんか、卑弥呼のおかげですっきりしたかも。さて、そろそろお腹空いた頃だし、食糧を調達して夕食にしよう!」
「私もそうしよう。私も、貴女たちの食事に同席して良いかな?」
卑弥呼は少し照れながら、一緒に食事をしていいかと尋ねた。ジェンは「勿論よ」と言い、続ける。
「それに、皆優しいから、卑弥呼やビルとエルと仲良くしたいって思ってるよ。さぁ、行こう!」
ジェンは卑弥呼の手を握って、食糧調達へと向かう。卑弥呼は「あぁ、ジェン。ま、待って!いきなり引っ張らないで!」と困りつつも、彼女に付いて行ったのだった。
夕食が進む中、ナイトとエルと湯は小声で話をしていた。
「エルって、前世が王だって聞いたが、どんな国の王だったんだ?」
「む?朕も聞きたいぞ!」
「それを聞いて、どうするんだ?……いや、お前は、王としての在り方を聞きたいと言う事か?」
エルに図星を突かれたナイトと湯は、黙ってしまう。でも、本当だ。彼らは今、代理や隊長として務めているが、この戦いが終わった後、上手くやっていけるか心配なのだ。エルは、彼らの様子にふっと笑って言う。
「俺が王として生きた時代は、王は絶対的な力の器を持たねばならなかった。けど、今は力だけでなく、知恵や才能を発揮する時代だ。
絶対的と言う力程まで行かなくとも、知恵や才能を生かした国づくりや軍略で成功した者もいる。俺は、お前が立派な王として国を発展させると思うぞ。
お前は、王としての知識や力、才能を持っている。それに、仲間を信頼する心を持っている。以前の俺に、欠けていたものだからな。」
「……エルにも、そんな苦労があったんだ。てっきり、苦労無しの王様だったのかと思った。」
「朕も思ったぞ。お前は、剣術に優れているから元々才があっての苦労無しかと思ったぞ。」
ナイトと湯がそう言うと、エルは「たわけ」と落ち着いて言い、話す。
「苦労がないのは、人としてあってはならぬ事だ。人は、常に困難に抗い、幸せや生きがいを見つけるものだ。
俺は、貴様が様々な困難や苦労を乗り越えて来たのを見込んで、立派な王になると褒めたんだぞ?
人は常に矛盾と思いながらも、歩むべき道を行くしかない。運命を受け入れろ。でも、抗う事を忘れるな。」
エルの言葉にナイトは「あぁ。やっぱり、エルは男の中の男だな」と心で思った。男として、ビルを守る騎士として支えている彼はやるべき事を見据えているように見えたのだ。
「まぁ、難しい話はこれまでだ!さぁ、乾杯!だな。」
エルは明るくそう言って、ナイトと湯の手に彼の盃を押し付ける。ナイトは盃を手にして、笑顔で「お前は、俺の友達だぜ!乾杯!」と言った。エルは、ビルや卑弥呼、湯と故郷の友人だけでなく、新たな友を得た。それは、無邪気さを楽しむ彼の本当の「喜び」でもあった。
シーガとフーティもナイトとエルの間に加わり、エルと友になった。ペラリは、ジェンとビルと卑弥呼と共に会話を楽しみ、友達関係を気付いた。
例え、どれだけ離れていたとしても、どんな身分であろうとも、「友と言う絆」は決して崩れるものではない。勿論、「夫婦」と言う特別な関係もだ。ジェンとナイトは、互いに悩みが晴れて、友達が新たに増えた事に嬉しく、太陽の様な笑顔を見せていた。
そして、ナイトは「故郷にいる仲間も、次あった時に友達にしてくれないか?」とビルとエルに言う。二人は当然の様にこう言った。
『自分たちの友の友を、友にせずして何になる』
楽しい夕食はあっという間に過ぎて、就寝をすれば、朝を迎えた。それは、大戦の始まりが迫る事を示しているのであった。
敵本拠地に攻め入るのは、ナイト、ジェン、フーティ、卑弥呼。湯、ビル、エル、シーガ、ニック、ペラリは、敵の兵士たちが構える門の前にて戦う事になった。味方の兵は十万ちかく、敵は十五万で強力な兵士もいると言う。覚悟を決めての戦いは、新たな王国を築くための戦いでもある。
1月31日で一周年を迎えます!
あっという間だ!って感じました。
※誤字脱字がありましたら、お願いします!すみません




