外伝Ⅶ ファマスの教え ―神器・ジャダクの本当の力と未来―
ジェン、ナイト、ソル、リアフ、ニック、フウカがエルシィーダンへと転送され、数時間が経ち、朝を迎えた。朝食を終えたシーガは、アンネと部屋にて話をしていた。
「本当に、ジェンたち大丈夫かな?」
「大丈夫だよ。ジェンちゃんにはナイト君が付いている。二人なら、心配ないよ。それに、ファマスの言う事も可能性はある。」
「うん。…でもさ。ファマスさんの言葉…何か、怖い感じがする。」
アンネはそう言う。シーガは「何故?」と質問すると、彼女はゆっくりと答えた。
「ファマスさんが言っていた…屍の事件で、これは未来の闇の予兆って。あの子、何か知っていると思うの。」
「俺もだ。彼女は、嘘を付いていない。目がそうだ。」
「私の名、呼んだ?」
その声に二人は、バルコニーへと目を向ける。立っていたのは、ファマスと言う少女だ。
「その声は、ファマス?」
「お、女の子だったの?」
「静かに。私の事は、あまり多くの人には知られない様に言われているから。お願い!」
ファマスは手を合わせて、必死に言った。二人はあまり深く問い詰めずに了承し、何故ここに来たのかを質問した。
「貴方たちに、未来を伝えに来たのと神器についてね。」
「未来と、神器について?」
アンネはそう呟く。ファマスは頷いて、こう言う。
「そう。実は、この数分後にアイカさんが誘拐されてしまうんだ。」
『誘拐⁈』
「しーっ‼……それで、ナシィー様は犯人の残酷王の元へ…フィーメ街道あたりに向かう。けど、そこからが重要なんだ。このままじゃ、アイカさんは致命傷を負っちゃうんだ。その前に、彼女を助けて欲しいの。そして、ヴィルハンの兵士を殺さないで、助けてあげて。」
「た、助けるって。どういう事だよ?」
「ヴィルハン王国の兵士たちは、闇の魔術によって操られた民なの。彼らの意識は闇の底…。つまり、民を無残に利用している。彼らを助け、ヴィルハン王国の事情を探って欲しい。私からのお願い。無茶をさせてしまうかもしれないけど、私は長く皆さんと一緒にいられないの。」
ファナスは申し訳なさそうに言う。アンネは「事情があるなら、仕方ない。言えないなら、言わなくていい」と彼女を和ませた。
「ありがとう。そして、貴方…吸血鬼の神器…大鎌を持っているでしょ?」
「あ、あぁ。」
「その神器は、吸血鬼の純血ならわざわざ紋章…聖痕から武器化しなくてもいい方法があるの。」
「要するに、素手で戦えるというのか?」
「うん。大鎌は、そのまま武器化して使っても良いんだけどね。神器ごと体内に宿す事も可能なの。」
ファマスが言うのは、わざわざ武器としてではなく。体に宿し、素手や足に着用を行えば、以前と変わらず戦闘が行えるというもの。それは純血であるほど、力は発揮されるようだ。
「でも、俺は神器を手にしてからまだまだだ。出来るか、分からない。」
「いえ。貴方は純血ですし、今でも間に合います。さぁ、ここの訓練所にでも行ってみよっか。」
ファマスはそう言い、シーガの腕を引っ張り部屋を出る。アンネは、慌てて彼らの後を追った。
訓練所には、誰もいない。ここに来るまでも人と会っていない。ファマスは、人にあまり遭遇しないタイミングを計っている様だ。
「さて、まずは大鎌を実体化させて。」
「あぁ。」
シーガは、右手甲に刻まれた紋章から大鎌を実体化する。ファマスはそれを見て、こう言う。
「じゃぁ、私に続いて呪文を言って。」
「呪文?どうして?」
アンネが質問すると、ファマスは答える。
「大鎌を体内に宿す時、それを行う呪文があるんだ。だけど、それが出来る吸血鬼が減って来ちゃったんだ。でも、貴方はそれを行える力を持つ。……よし!じゃぁ、私の後に詠唱してね。」
「あ、うん。」
ファマスは、呪文を少しずつシーガに教える。シーガは彼女の言う呪文を詠唱する。
「神器・ジャダクよ。我の問いに答え給え……我が神器の力を発揮できるのならば、我が身に宿れ。そして、力を与え給え!」
そう言うと、神器は光を放ち、シーガの周囲に渦を巻く。そして、渦の光は彼を包み込んだ。アンネは、眩しさに目を瞑る。しばらくして、目を開けると、大鎌はシーガの中へと入り込んだ。ファマスは言う。
「やはり、貴方に相応しいようだね。吸血鬼なら、分かると思うけど、赤い月の誓い……頑張ってね!」
そう言い、彼女は訓練所から消えた。二人は急いで仲間の元へ、ファマスが告げる次の危機を伝えに行った。




