第四十九夜 真実は、フィーメ町にあり
ナイトは、王剣に光を着用させ、敵を完全に殺さず、闇を取り出し、それを斬って行く。リティも兄と同じ様にして、真珠の宝玉を斧に変身させて行ていた。
(ジェン、頼む…。お前の力が必要だ。この敵の数じゃ、いつまで持つか分からねぇ‼)
確かに。相手…敵の数は、自警団よりも多い。皆、頑張ってはいる…。ナイトは、ジェンの力にはまだ先があると信じていた。だからと言って、彼女に押し付ける訳では無い。でも、彼はフィーメ家の力が伝説の通りなら…と言う希望を胸に抱いていた。
アンネとメイダは連携して、戦う。二人は、敵がいる場所へ走って行く。
「アンネ、行くわよ!」
「うん。…光弾!」
アンネは、光弾を放ち、空中で光を放たせて敵の視界を奪う。メイダはその隙に三叉槍の刃に光を着用させて、間合いを一気に詰めて敵の闇を祓う。
闇の塊は敵から現れて、一つに集まる。
「そこだ‼」
アンネは背中に白き翼を生やし、勢いよく紅水晶の三刃薙刀で闇の塊を斬った。
リティとソルも、アンネとメイダと同様に連携を取っていた。
「行くよ!リティ!」
「うん!」
「盾‼……風‼」
ソルは、自分とリティに襲い掛かる敵を盾で弾き飛ばす。
「光矢‼」
リティは敵がソルによって宙を舞うのを見計らい、複数放つ。見事に全て命中し、闇の塊を誘い出す。ソルは藍玉の宝玉を矛に、リティは真珠の宝玉を斧に変えて、一斉に闇の塊へ立ち向かう。
『はぁぁぁぁぁぁ‼』
二人は、一斉に闇を斬った。同時に、敵全員の闇を団員たちは討ち祓う事が出来た。
「これで、全員か?」
ナイトはそう尋ねると、ソルは彼に言う。
「あぁ。敵の気配は感じないし…、大丈夫だ。」
「よし。シーガ、フウカ、二人は母さんとジェンとアンネさんを安全な場所に送ってくれ。」
『了解!』
任務を受けた二人はジェン、アイカ、ナシィーの三人を王都内へ送り始める。すると―
「いててぇ……。」
「ここは?」
ヴィルハンの兵士が目を覚ました。彼らはナイト、リティ、ナシィーの姿を見ると、必死になってこう言う。
「た、助けて下さい‼」
「な、何だ?急に、どうした?」
ナイトは「落ち着いて話せ」と言うと、ヴィルハンの兵士がこう言う。
「ヴィルハン王国は、俺たち一般人を、女、子供関係なく兵士にするつもりなんです‼」
「本当です!本当は戦いたくなかったのです。」
「ご無礼を承知してます。我々を助けてください‼」
「え、あ、えっと…。」
「良いですよ。では、王の間に来てください。」
ナイトが悩んでいた先、ナシィーはそう言った。彼は「良いのか?」と疑問を持つ。ナシィーはこう言う。
「実は、私の父上が亡くなった以降…ヴィルハンは経済も低迷し、民は皆徴兵されていると耳にした事があります。しかし、貴方たちは、まだ闇の呪いが消えておりません。私が取り除いてあげましょう。ここは危険です。王都へ戻りましょう。」
こうして、フィーメ街道で自我を取り戻したヴィルハンの兵士を、ナシィーは王の間にて残っている闇を完全に祓っている。
その間、ジェンは王城の彼女自身の部屋のベッドに横になっていた。回復はしたが、驚くべき事を言った。ナイトは、ジェンに質問する。
「ジェン…それ、本当なのか?」
「嘘じゃない。今すぐ、フィーメ町に行かなきゃ!」
「おい、そんな状態では無茶だ。」
「そうよ、ジェン。今は休みなさい。」
アンネにそう言われてしまったジェンは仕方なく、ベッドに再び横になった。彼女の部屋にいたナイト、アンネ、シーガ、ソル、チャールズとマリア、メイダの皆は、「明日、ジェンの体調の回復次第でフィーメ町へ行こう」と決めた。
それはチャールズとマリアの伝令によって、自警団のアジトにいるリアフ、ニック、ペラリ、フーティ、ツキノ、フウカに伝えられた。
「それは……もしかして、ジェンちゃんは九年前の事を?」
ペラリがそう尋ねると、チャールズは頷いて答えた。
「うん。思い出したみたいだった。僕はあまり覚えていないけど、怖かったのは覚えている。」
「私も。地獄だった…。」
「大変だったでしょうね。」
リアフは、噂で言われているフィーメ町消滅の事を思い出し、悲しさを浮かばせる。フーティも「リアフと同じ気持ちだ。怖かっただろう」と言い、続ける。
「でも、俺たちは九年前の真実を知らない…。ジェンが全て話してくれるなら、全て明らかになる。」
「あぁ。フーティの言う通りだ。俺も、よく分からないからな。」
普段、うるさいはずのニックがやけに真剣になっている。それ程、なのだろう。チャールズとマリアは九年前と言えど、六歳と言う幼さだ。彼らに取って、相当辛いものだろう。
「父さん、母さん…。」
チャールズは亡き両親の事を思い、涙を流していた。
王の間にて。ナシィーは、すべての闇をヴィルハンの兵士から取り除く事が出来た。
「ナシィー様、ありがとうございます。」
「いいえ。……それで、ヴィルハン王国はすべての民を徴兵すると言うのは本当ですか?」
ナシィーがそう問うと、ヴィルハンの兵士の一人が頷いて言う。
「は、はい。新たに就いた国王になってから、徴兵命令が下されました。私たちも、無理矢理徴兵されました。」
「新たな国王…。」
「はい。徴兵された者は魔法によって操られて、兵士として命令を聞いては動くだけとなってしまうのです。魔法には逆らえず、私たちは何人もの……ナシィー様の民を、自国の民を殺めてしまった事も…。」
「……。」
それから、時は早く流れて翌日となった。ジェンの状態は完全に元に戻り、自警団は彼女が言っていた『フィーメ町』へと向かう事にした。自警団は、新たにヴィルハンの兵士の一人を向かい入れることになった。万が一の事もある為、ツキノとフウカはナイツァノ王国へ戻り、軍を派遣させる準備に取り掛かった。
その者の名は「ジャド」。歳は十六で、母国に家族が残されているようだ。
「よろしく、ジャド。」
「こちらこそ。シェンレヴィ・フィーメ殿。これからは、貴殿方の一員として、頑張ります。」
「敬語は良いよ。仲間なんだから。私の事は、ジェンと呼んで。」
「……ありがとう!」
ジャドは、そう言った。そして、自警団はフィーメ街道に着き、準備を整えた。
「皆、これからフィーメ町へと向かう。情報によれば、異獣が多数いると言われる。全土にいる異獣は少なくなったが、ここは突破しなければならない。……エルシィーダンに神の加護を!」
ナイトは、王剣を天へと掲げた。団員たちは、武器を天へと掲げた。そして、最終準備を整えて全員、馬や荷馬車に乗る。ジェンは万が一の事も考え、荷馬車に乗り込む。
「出発だ!」
『おぉぉぉぉ‼』
自警団はフィーメ街道へと、目的地の町へと目指して行った。そこまでの道のりは、団員たちにとって戦いが待ち受けていた。
しばらくして、街道の三分の一辺りまで進んだ所だろうか…。ジェンは、荷馬車から周囲の様子を見ていると、何かの気配に気づき、伝令兵に告げる。
「伝令兵さん。」
「どうしましたか、ジェン様。」
「ナイトに。知性の異獣の進軍あり…迎撃と突破の準備を伝えて。」
「了解しました!…はっ!」
伝令兵は馬を走らせ、戦闘にいるナイトの元へ向かった。彼女と同じ荷馬車に乗っていたアンネは―
「ジェン。まだ、異獣は見当たらないけど…。」
「いや、この先で待ち構えているわ。……やはり、どうしても私たちの邪魔をしたい様ね…。」
彼女の言葉に怒りが混じっているのを、アンネ、リティ、ソルは感じた。しかし、何故、異獣も見えていないのに彼女はいると断言したのか…。すると、そこにチャールズとマリアが来た。
「姉さん。異獣の気配、感じたか?」
「うん。待ち構えているよ。」
「お姉ちゃんは、無理しないでね。」
「ありがとう、マリア。大丈夫、出来る限りの事は尽くすよ。」
そう言うと、「全員、武器を構えよ‼」と伝令兵が伝えて行く。ジェンは宝剣を抜刀し、荷馬車の上へと昇る。彼女の乗る荷馬車は丈夫な為、上に乗っても平気だ。アンネ、ソル、リティも彼女と同じ場所へ来る。
(来た…。絶対に、通させてもらうわ。)
「行くぞぉぉぉぉ‼」
ナイトの掛け声と共に、自警団の騎馬隊は走り出し、異獣へと進軍を始めた。同時に、異獣も彼らの存在に気付いたのか、行かせまいと進軍する。
「光矢!」
ジェンは先制攻撃を出し、異獣を数匹討伐する。また、アンネは弓矢部隊に指示を出す。
「私達は、空の異獣を仕留めます!攻撃用意‼………撃ち方構え!」
そして、「撃てぇ!」と彼女の声が弓矢部隊に届く。空の異獣は矢によって討伐される。
ナイト、シーガ、メイダ、ニック、リアフ、ペラリ、フーティは、異獣の群れに入ると同時に鞍から空中へと飛ぶ。
「エルシィーダン・ラーフ・王剣‼」
ナイトは覚醒の姿になり、技を繰り出して異獣を始末する。シーガもメイダも彼と同様に、覚醒の姿となり―
「ヴァンア・ラーフ・大鎌‼」
「マード・ラーフ・三叉槍‼」
シーガは強力な闇光線で、メイダは強力な衝撃電流光線で異獣を片付ける。ニックとリアフは、兄妹の連携を駆使する。
「兄さん!」
「おう!」
リアフは、杖の上に乗ったニックを高く押し上げて空中に舞わせる。ニックは、鋼の剣で素早く異獣を斬りつけ始末する。
ペラリとフーティは、二人で攻防を行う。異獣からの攻撃をペラリが防御し、フーティは二丁の銃で異獣の目を潰す。そして、彼女が異獣を斧で斬りつけ討伐する。
あともう少しだが、まだ異獣は彼らに襲いかかる。ナイトは、王剣で大型異獣へと立ち向かう。しかし―
「ぐはっ……!」
不意を突かれ、ナイトは打撃を喰らい、力が出なかった。ジェンは遠くから見守っていたが、体に違和感を感じた。
(何だろう?力が……。)
「………あまねく息吹、大地と空……駆け抜けるは―」
ジェンはそう言うと、光を強烈に放った。アンネ、ソル、リティは目を瞑る。光が収まると、ジェンの姿はどこにも無い。彼女がいた場所には、一角獣の角と天馬を合わせた白馬がいた。
「あれは……。」
「天馬?一角獣?」
不思議に思う三人だったが、白馬は勢いに乗って空中を駆けて、とある場所へと向かっていた。
アンネ、リティ、ソルは一体、何が起きたのだろうと考えたが、異獣の侵攻により後回しとなった。
ナイトは異獣に不意を突かれ、飛翔で体勢を整えるが―
「うっ‼」
二度目の異獣からの攻撃が直撃し、ナイトは地面へと落ちて行く。彼は気を失いそうだった。その時、何かが彼を拾った。それは、先程アンネたちの元から駆けて来た白馬であった。ナイトは助けてくれた事に気付き、意識を完全に取り戻す。
「……っ‼助かった、のか?」
⦅ナイト、大丈夫?⦆
「…っ、その声……ジェン、なのか?てか、平気なのか?」
⦅うん。まさか、一族の力がこんな時に…。でも、何で姉さんや兄さんじゃなかったんだろう?⦆
「そんな事より、今は敵を始末する事が先だ。悪いが、俺の脚となってくれるか?」
⦅勿論よ。さぁ、行くよ!⦆
彼女の言葉に、ナイトは鞍にまたがる。同時に、ジェンは彼の怪我を治癒で治す。ナイトは「ありがとうな。よし、行くぞ!」と言い、右手に手綱を、左手に王剣を握りしめた。
白馬は再び異獣へと立ち向かうべく、翼を羽ばたかせ宙を駆けて行く。
異獣はこちらに気付き、攻撃をする。白馬は瞬時に避け、ナイトは炎刃で攻撃を行い、片目を潰して火傷を負わせる。
「出でよ‼王家・大炎‼」
ナイトは王剣に大炎を着用させ、大きく振るう。同時に、シーガは「ヴァンア・ラーフ・大鎌」、メイダは「マード・ラーフ・三叉槍」、ニックとリアフは「子爵炎」、ペラリは「螺旋突風刃」、フーティは「螺旋大波」を繰り出す。
強烈な攻撃を受けた大型異獣たちは、瞬く間に塵と化して消えていった。大勝利である。ジェンは、人の姿に戻る。ナイトは体調を心配するが、完全に回復したと彼女は言った。
自警団は異獣の群れを突破した事の勝利に、歓喜の声を上げ、フィーメ町へと進軍した。
ジェンは、チャールズとマリアと共に自警団より先にフィーメ町…故郷へと足を踏み入れた。
そこは、ジェン、チャールズとマリアがあの日までの美しさを目にしたフィーメ町は、火に焼かれ、瓦礫の残骸だった。
ナイト、アンネ、シーガ、メイダ、ソル、リティ、ニック、リアフ、ペラリ、フーティ、ダティ、ジャドは、その光景に目を奪われた。
ジャドは過去にフィーメ町へ通った事があったらしく、今の景色の酷さに怒りが湧く、と話す。当然、皆もそうだ。誰が、何の目的のために…。
「お父様…お母様。」
ジェンはそう呟き、とある大通りの真ん中に立った。目の前には、黒く染まった人骨の塊があった。彼女はチャールズとマリアには見せない様に、彼らを少し距離を取らせていた。
「……。」
(お母様…。ごめんなさい。私が…。)
ジェンは、目から涙を流した。目の前にある人骨の残骸は、彼女の母親だったのだ。
すると、ジェンのペンダントが淡い光を放った。そして、目の前に美しい女性の姿があった。しかし、体は透明がかっている。
「母さん!」
「お母さん!」
チャールズとマリアは、そう言い駆けつける。そう、彼らの母親……フィーメ公爵夫人である。
「ジェン、チャールズ、マリア、無事だったのね。良かった。」
「お母様。私……ごめんなさい。」
「いいえ、ジェンのせいじゃないよ。私とお父さんの不覚だったの。」
遠くから見守っていたナイトたち。彼らは、フィーメ公爵夫人の姿を見て、悲しみに包まれた。
昼になり、自警団は町の近くにキャンプを立てた。あの後、ジェン、チャールズ、マリアは母親と話をしたらしい。母親は、何かを伝える為に現界したが、話を終えた後、天へと帰っていった。
寂しそうで一人きりのジェンを見て、ナイトは彼女の隣に座った。
「大丈夫、か?」
「ナイト……。」
彼女の目尻は、ほのかに赤くなっていた。余程、悲しい出来事を目の当たりにしたのだろう。ナイトは、事件の真相を知らない……だから、自分ができる事は何だろうと悩んでいた。
「本当に、すまなかった。」
「え?」
「三年くらい前に、お前が……救援の遅れを取った事許してくれたが……。それでも、悔しいと言うか…そんな自分がいる。」
「ナイト。……貴方は悪くないもの。フィーメが、私が不覚を取ったから、こんな事に……。」
ナイトは彼女が「自分のせいだ」と感じ、こう言う。
「馬鹿……お前のせいじゃねぇ。こんな悪行を成した奴が悪い。何も関係のない人を巻き込むのは、誰だって許せねぇ。だから、お前が全て背負うことは無い。」
「……ぐすっ。」
「お前、たまには泣いても良いんだぞ。我慢し過ぎだ。」
ナイトは、不器用な言葉で言ってしまった事に少し後悔した。が、彼女にとって嬉しい一言だったらしく、彼の手を握って涙を流した。握り締めたその手は優しかったが、怒りと悲しさが混同した様な感じだった。
ナイトは空いている手で、彼女の頭を優しく撫でた。ジェンはその手が優しさに溢れていると感じた。
数分後、ジェン、チャールズ、マリアは自警団の団員を集め、【あの日の真実】を打ち明ける事を伝えた。
「大丈夫なの?ジェン。」
「心配無用だよ、アンネ。これは、いずれ伝えなきゃいけないから。」
そう言ってジェンは、過去の……かつてのフィーメ町の出来事を語り始めた。
読者の皆さん、読んでいただいてありがとうございます。さて、『Awakening Of Magic』は五十話を迎える事ができました。いや、長くて短かったような感覚です。
次回から、フィーメ町の過去の出来事を話して行きます。「ジェンの両親の出会い」から「あの日の事件」までの物語を紡ぎたいと思います!
どうか、よろしくお願いします‼




