第四十五夜 ラフィンナ運河 ―海の異獣…新たな敵―
自警団の一行は、無事にラフィンナ運河の畔にある港に着いた。その港には、大きな船が一隻あった。それは、自警団など荷馬車を運ぶ為、人員を多く乗せる為に造られた船である。
ジェン、ナイト、アンネ、シーガ、ソル、リティたち自警団は、荷馬車や馬と共にその船へ乗り込む。
「久しぶりね。」
「そうだね。久しぶりの船旅だわ。」
ジェンはペラリと話していた。彼女も船旅の経験はあるが、ここの所…異獣討伐で無かったようだ。
「俺もだ。相変わらず、綺麗な海だな。」
フーティもそう言う。確かに、とても綺麗で美しい海だ。太陽の光を海は反射をし、宝石のように光り輝く。このラフィンナ運河の深さは千mあるとされていて、海中には人魚の一族が住まうと伝わっている。
「そう言えば、メイダは元気にしているのかな?」
「そうだな。最近、陸地に上がっていないようだし…やっぱり、運河に何か遭ったのか?」
「心配だわ…。久しぶりに、再会したいのに…。」
ジェン、ペラリ、フーティはそう呟く。そこへ―
「いやぁ~、あの人魚姫のメイダに会えるなんて!あぁ、何て良い日だろうか‼」
自警団の副団長こと…変態兵長のニックが船の上で堂々と大きな声でそう言う。その場にいる自警団団員は「はぁ~」となる。ジェンたちと同期でまだニックの事を知らない者は、彼女に質問する。
「なぁ、ジェン…。ニック兵長、どうしちまったんだ?」
「あ、えっとね…。その、ニックは………実は変態なんだ。」
『え⁈』
「女子の可愛さやら何とかに目が無いって………言っていた様な気がする。」
ジェンが同期とその話している間、ペラリとフーティは内心「ジェン、さっぱりと言い過ぎだろ‼」と思っていた。相変わらず、きっぱりと言ってしまう癖(天然?)はジェンに残っている様だ。
「このクソ兄貴‼大声で言うなって言ってんだろぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁ!」
「リ、リアフ‼に、逃げろぉぉぉ‼」
またもや、ビルフ兄妹の恒例の追いかけっこが始まった。いつも最後は、リアフにボコボコにされるニックである。自警団団員は、「ニックのその思考が無ければ、本当にモテていただろう」と誰もが思うだろう。
とそこへ、団長であるナイトとその妹・リティが来た。
「皆、これから出向する。船酔いとかは致し方ないが、歌には惑わされるなよ。」
『はい‼』
「それじゃぁ、出航‼」
リティが元気よく言うと、船は出港を始めた。港に残る海軍に手を振り、自警団は運河へと出た。
出港して数分後、船は運河の中間地点に到達しようとしていた。ジェンは、運河の様子を見ていた。メイダが無事なのか、人魚一族が無事なのか、心配だったのだ。
(メイダ。……どうか、無事にいて。神・ラーフのご加護があらんことを……。)
そう思った時だった。ジェンの耳に何かがうっすらと聞こえる。美しい歌だが、彼女にとって人を惑わす物だと感じた。
「ナイト!」
「どうした?」
「ジェンさん。どうしたの?」
ナイトとリティは、彼女の元へと行く。ジェンは海を見て、言う。
「嫌な歌が聞こえる。それに、徐々に近づいている。」
「え?聞こえないけど。。」
(もしかして、ファマスの言ってた歌のことか?)
ナイトがそう思っていると、船に乗っている海軍がナイトの元へと来て「海の怪物が出た」と報告した。海軍に寄れば、不思議な歌で人を誘うようだ。
「まずいな…。近づけないように、船に防壁を張るしか……。」
「それなら………っ‼」
ジェンが言って、何かに気付いたその時!海から何かが飛び出して、船の甲板に着地する。
「よっと!……久しぶりじゃない!ジェン。」
海から出て来たのは金髪に蒼の瞳を持ち、ジェンと同じスタイル抜群の少女だった。少女の手には、白銀色の金属に藍玉がはめられた三叉槍があった。
「ちょっと、私の事忘れちゃった?九年前、未来の人魚族族長って言われた―」
「メイダ‼久しぶり‼……何かあったの?」
「その通り。異獣の一派だけど、私たちと同じ体を持っている気持ち悪い奴がいるしね…。」
ジェンはメイダに詳しい事を聞く。メイダによると、人魚族と同じ姿をした者と半人半獣の者が歌に寄る呪いで人間を誘うと言う。
自警団にも運河で、新しい異獣が見つかったとの報告は数日前に入っていた。その名は―
「――セイレーンっていう、運河の新たな敵がね。」
「そう。人魚と同じ姿をしている者と上半身は人間で下半身は鳥の姿をしていて空を飛ぶ…。海と空の敵…厄介よ。」
「メイダ。私たちはナイツァノ王国に行く所なの。その敵の事を詳しく教えてくれない?」
「勿論って、言いたい所だけど……。迎撃体制に入った方が良さそうね。敵が来る。」
メイダはそう言って空を見ると、空を飛ぶセイレーンがこの船に向かってくる。また、海を見ると人魚の姿をしたセイレーンが来ていた。
「全く、しつこいわね!海丿神丿加護‼」
ナイトは自警団全員に、海の怪物の討伐命令を下す。ジェン、シーガ、リアフ、フーティは空中戦を、ナイト、リティ、ニック、ペラリは甲板からの攻撃に回る。メイダは人魚一族と共に、敵の人魚を討伐する。その他の者は、甲板からの攻撃を行う。
ジェン、シーガ、リアフ、フーティは元々神器を手にしており、セイレーンの歌には惑わされず、討伐する。
(一体、新手はどうして生まれたんだ?)
「ジェンちゃん、危ない!」
シーガはジェンに迫る空のセイレーンを、大鎌で斬り伏せる。彼女は、助けてくれた彼に感謝する。
「あ、ありがとう。」
「今度は気を付けなよ。」
「うん。…それよりも、どうして敵が私たちに気づいたんだろう?」
ジェンがそう言うと、海軍の者たちが声を挙げる。
「前方に障害あり!」
「大型の敵です!」
ジェンたちは船の前を見ると、そこには大型の人の形をしたセイレーンがいた。それだけではない、空には大型のセイレーンもいた。
「大型が二体……。」
「やるしかねぇだろ。俺の力、見せてやる!」
シーガはそう言い、覚醒の姿に変え、空のセイレーンへと向かう。
「シーガ!」
アンネは彼を追いかけたかったが、メイダに「船から離れれば、神器を持たない人は命を落とすわよ」と言われ、彼女は甲板に留まる。
「ごめんなさい。キツく言ってしまって……。」
「いいえ。メイダさんのおかけで、落ち着きを取り戻しました。」
「敬語は良いよ。メイダって呼んで!」
「う、うん。メイダ、よろしく。私は、アンネリーカ・ミルーセ。アンネと呼んで。」
「よろしく!さぁ、私達のできる事で敵を倒しちゃいましょ!」
「うん!」
アンネは自警団の弓矢部隊の指揮を出す。
「弓矢部隊!攻撃用意!」
弓矢部隊は矢を、リティ、リアフ、ペラリ、アンネは杖を構え、矢を魔法で作る。そして、海軍の者たちも弓や杖で矢を魔法で作る。
「船の前方の敵に撃ち方構え!…………撃てぇ!」
アンネはタイミング良く言う。彼女の指示によって、一斉に矢が放たれる。ジェンとナイトは剣の刃に神器の力を着用させ、飛翔で宙を舞い、同時に海のセイレーンに向かって斬りかかる。
二人の鋭い刃は、見事に命中した。が―
「効いていないのか?!」
「そんな!」
海のセイレーンの受けたはずの傷が再生されている。どういう事なのか?空のセイレーンを見るが、そっちも攻撃を受けても再生されてしまう。
「なんだよ、コイツ!」
シーガもジェンとナイトと同じ思いだった。すると―
「撃てぇ!」
アンネの指示が聞こえ、ジェン、ナイト、シーガを避けて、矢が放たれる。すると、海と空のセイレーンは同時に攻撃を食らったせいか、呻き声を挙げている。
⦅同時に攻撃!今だ!⦆
三人はそう思い、同時に海と空のセイレーンに斬り掛かる。
『うぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁ‼』
三人は勢いよく、力の限り魔力をセイレーンに当てた。効果があったのか、セイレーンは叫び声を挙げた。そして、奴らは塵の様になり、消えていった。
「やったのか?」
ナイトはそう呟く。船の周りにいたセイレーンも消えていった。海軍、自警団は危機が去った事を喜んだ。ジェン、ナイト、シーガたち空中戦を行っていた者たちは、甲板へと戻る。
「無事で良かったぜ。」
ソルはジェン、ナイト、シーガにそう言う。
「船も大丈夫みたいだし、これで安心できるわ。」
「リアフと同じ思いだよ。死ぬかと思ったし。」
「まぁ、ペラリの言う事も分かるな。」
リアフ、ペラリ、フーティはそう言う。確かにそうだ。巨大な敵と戦ったのは、殆どの者が初めてであろう。ジェンの同期も流石にビビってしまったそうだ。だが、それを乗り越え、勇敢に戦ったのは事実だ。
他の人の無事を確認し、船はナイツァノ王国へと向かう為、運河を進む。そして、ナイツァノ王国の港の景色が見える様になってきた。




