外伝Ⅴ 自警団の仕事
自警団に入団して、早くも一週間が経った。
「この書類は、こっちに回して……。」
ナイトは団長室にて、書類をまとめていた。すると、部屋のドアが開き―
「ナイト。手伝おっか?」
「あぁ、悪い。頼む。」
ナイトは自警団の団長として書類をまとめていた時、ジェンが声を掛けて来た。実は、彼女はリティに「ナイトはどこにいるのか」と探していたのだ。彼女はナイトが溜め込んでいた書類の一部を取り、ペンを走らせ、手伝う。
ジェンは何度か、父親が書類をまとめているのを見た記憶があり、見よう見真似で「Nighart・E」と書く。
ジェンは他の兵団の報告書には彼の名を刻むが、重要な事が書かれた書類は書かない事にした。
数分後、ジェンは書類の一部をまとめ終えた。が、ナイトは引き続き、書類をまとめている。彼女は「彼に休憩が必要だ」と思い、急いで部屋を出てアジト内にある台所へ赴き、和菓子と緑茶を用意し、再びナイトのいる部屋へと赴いた。
「ナイト…。」
「……。」
「ナイト!」
「…っ‼わりィ、ジェン。集中してた。」
「ごめんなさい。…でも、少しは休憩しないと。これ、和菓子と緑茶を持って来たよ。」
「あ、ありがとうな…。」
ナイトは作業を止め、和菓子と緑茶を飲む。
「美味いな!ナイツァノの食べ物って、エルシィーダンと違ってて良いな。」
「うん。」
ナイトは、ジェンの分の和菓子や緑茶が無い事に気付いて席を立ち、部屋にある小さな食器の棚から小皿とコップ、フォークを持って来て、和菓子と緑茶を半分ずつ分けた。
「ほら、お前も食えよ。」
「え、で、でも。」
「お前も、疲れているだろうし……食べておいた方が良いぞ。」
「あ、ありがとう。」
ジェンは、ナイトから半分の和菓子と緑茶を貰う。それらを口にすると、ジェンは微笑んでいた。ナイトは、彼女の姿を見てふと思った。
“ったく、お前は無自覚すぎ…。そういう行動、可愛いっつうの。”
「……っ‼何考えてんだ俺‼」
「ん?どうしたの?」
「あ、いや、何でもない。……そうだ。明日、俺たちは騎士学校と魔導・杖騎士学校のどちらかの授業に参加して、色んな事を教えるらしいぞ。いきなりだが、どうだ?」
ナイトは恥ずかしい気持ちを紛らわす為、別の話題を投げかける。ジェンはその話を聞いて、「楽しそう。やってみたい」と口にした。彼は「自分は騎士学校に。ジェンは魔導・杖騎士学校に行くで良いか?」と言った。
「勿論。困っている子たちを助けてあげたいもの。」
“本当に、お前は優しいな”
翌日。ジェンは魔導・杖騎士学校へ、ナイトは騎士学校へ赴き、学校生徒の支援を行っていた。
ジェンは、二学年となったクラッドと話をしていた。
「随分上達したね。」
「ま、まぁな。はぁ……。」
「どうしたの、クラッド。」
「あ、いや。昨日、アイカの奴と喧嘩しちまった…。」
彼曰く、育ち盛りとなった自分とアイカが余った食べ物をどちらが食べるかで言い争いになったらしい。アレックスに怒られた二人だったが、仲直りが未だに出来ていない状況だった。
「ふふ。」
「な、何だよ。姉さん。」
「仲が良いって証拠。それだけ、自分の気持ちを伝えられるって事じゃない。…勇気を出して、謝ってみたら。まだ、許しを貰えなくても、謝るだけでも心はスッキリするし、相手にとっても変化が起きるよ。」
「そ、そうか?……まぁ、やってみるよ。」
クラッドは随分と男らしさが出て来た。ジェンは彼の成長を喜び、彼の優しさとその男気をいつまでも大切に、と心で思った。
一方その頃、ナイトは生徒たちから質問を受けていた。
「じゃぁ、最後の質問だぞ。……君は何か質問あるか?」
「は、はい。あの、ナイト様はお好きな方はいらっしゃるのですか?」
プライベートに関する事だった。彼は予想外な質問に、どうすれば良いのか内心困惑状態だった。
「え、まぁ…こ、これからって所だ。……騎士として、誰かに一生仕える…大切にする。お前たちも、そう言う人を見つけろよ。」
「ナイト様、顔が赤くなっていますよ?」
「むっ、そ、それは、あ、暑いんだよ‼」
ナイトのごまかしは何とも愛らしかった。その姿に生徒たちはクスクスと微笑んでいた。




