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Awakening Of Magic  作者: Hanna
第六章 自警団 編
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第四十二夜 諦める訳には… ―卒業へ―

 魔導(マジック)杖騎士(ロッドナイト)学校の「郊外訓練事件」から二日が経った。ジェンは目を覚ましたが、しばらく休養を貰う為に王城の彼女の部屋のベッドへ横になり(くつろ)いでいた。


 “はぁ…。私ったら、皆に迷惑をかけてばかりだわ…。訓練事件も、私を捕らえようとして異獣が押し寄せて来たし…”


 ジェンはあの事件を境に、記憶が徐々に鮮明となって来た。自分の兄妹の事、両親の事…。しかし、家族を亡くした原因は未だに思い出せない。


「アンネ、ソル…シーガ、ナイト…皆。私って…迷惑な存在なのかな?」



 同時刻。アンネはナイトやナシィーの許可をもらい、城へと入っていた。


 “大丈夫かな?”


 アンネはジェンのお見舞いに来ており、見舞い品にナイツァノ王国の菓子を持って来ていた。そして、彼女の部屋に辿り着き、「ジェン、入るよ」と言い入室してベッドに横たわるジェンの元へ行く。


「アンネ…。わざわざ…。」


「わざわざじゃないよ。…私が勝手に、皆の代表でお見舞いに来たの。」


「勝手じゃないよ。…ありがとうね。こんな世話を掛ける私の友達でいる事に感謝するよ。」


「そんな!迷惑じゃないっての。友達は迷惑をかけても、それを互いに協力して解決するってもんでしょ?」


「……。」


 ジェンはアンネの言葉に何か思ったのか、天井を見る。


「……?ジェン?」


「あ、いや。考えてみれば、そうだなって思ったの。……何か、私、馬鹿な考えをしてたって。」


「ふふ。誰だって、馬鹿だって思うようなことはあるよ。……あ、そうだ。ファデル校長にしばらく休むって言ったら、了承してくれたよ。国ごと救っているジェンだし、十分に休養を取って欲しいって。」


「校長が…。世話を焼かせてしまったわね…。感謝します…校長。」


 ジェンはそう言った。アンネは、見舞い品の和菓子をジェンに話す。彼女は「丁度、食べたかったものだ」と言って喜んだ。アンネは食べやすさを考えて、草餅を買って来たのだ。彼女はジェンの上体を起こし、草餅を渡した。

 ジェンは草餅一つを手にして、口にする。


「ん‼美味しい‼」


「よかった!試食して、美味しいと思って買ったの。……あ、それで、ナイトから伝言があって。」


「ナイトが。」


「私たちが卒業した後、ナイツァノ王国に連れて行ってくれるそうよ!…あと、ジェンの事を心配していたそうよ。今、自警団(ヴィジェラーンティ)の方で忙しくて、見舞いに来れなくて悪いって言っていたよ。」


「そうだったの。ナイトは、本当に優しいわね。」


 “あ、でも、これって、ナイトにジェンには言わないでくれって言っていたっけ?……まぁ、いっか”


 と、アンネは思いつつ、ジェンとの会話を楽しんだ。

 その頃、ナイトは自警団(ヴィジェラーンティ)のアジトにて書類確認等を行っていた。しばらく、忙しかったせいで山済みで、妹のリティは兄である彼の手伝いをしてい?。


 “あぁ…この所、自警団(ヴィジェラーンティ)の仕事をすっぽかしてたな…。まぁ、でも、リティも手伝ってくれているし…頑張るっきゃない”


 と、彼は思って懸命に書類をまとめる。


「お兄ちゃん!この書類、どうすれば良い?」


「あぁ……、これはサインして、保管しておけば大丈夫なやつだ。」


「オッケー!」


 リティはそう言い、ペンを走らせる。


 “お兄ちゃん。…真剣だな。よし!私も負けていられない‼……ところで、ジェンさんは大丈夫かな?”


 と、ジェンの事を心配しながらリティは書類をまとめて行った。

 自警団(ヴィジェラーンティ)の団員は異獣の対処による負傷者が多く、時には死者が出ている。自警団(ヴィジェラーンティ)だけではない、駐屯団(ガラスン)天馬(ペガサス)飛竜騎士(ドラゴンナイト)兵団も、負傷者と死者が出た。

 それは、これまでよりも規模は大きく、異獣の脅威を確証させるものだった。しかし、ジェンの言葉やその仲間たち活躍により、民は光を見失わなかった。


“自分たちは無力…でも、出来る事で役に立ちたい”


 それは、小さな願いでも大きな願いであった。



 それから、一年という月日があっという間に経とうとしていた。ジェンはあの後、完全に回復して学校生活を送り、卒業の日となった。

 卒業式の後、入学式が行われ、入学生の中にはクラッドがいた。彼はもう、十三歳……逞しく優しさと正義のある少年となった。


「クラッド君、もう十三歳なのね。カッコよくなったね。」


「そうだな。俺らは卒業だけど、アイツはちゃんとした騎士になれるさ。」


「ソル。その考えは、どこから来るの?」


 ジェンがそう言うと、ソルは「俺の勘だ」と自信満々に言う。ジェンとアンネは、流石に苦笑いだった。


「皆〜、卒業、おめでとう!」


「シーガ。仕事は大丈夫なの?」


「大丈夫!三人共、自警団(ヴィジェラーンティ)に入ってくれるのは嬉しいよ!」


 シーガはそう言い、三人に肩組をする。四人は笑い合った。その後、ジェンの伯父のアレックスによって写真を撮り、ジェンたちは夜の卒業兼入学パーティーに出席した。


「姉さん!」


「クラッド、入学おめでとう。」


「あれ?姉さん、敬語取れたのか?」


「うん。まぁ、色々と事情があってね。」


「無理に話さなくても良いさ。……あっ、友達に呼ばれちった。後でな!」


 クラッドはそう言って、彼の友の元へと駆け出した。ジェンはそれを見送り、グラスを持ったまま会場のバルコニーへと出た。


 “あっという間の三年だったわ……。私達は、十六歳…か”


 と、彼女がそう思っていると、ナイトが声をかける。


「卒業、おめでとう。」


「ナイト……。ありがとう。」


 グラスで軽く乾杯する。その音は、綺麗に鳴る。


自警団(ヴィジェラーンティ)に入団、ありがとうな。」


「お礼なんて、良いよ。私は、随分とお世話になっているもの。迷惑だって掛けてしまったし。」


「迷惑じゃねぇよ。……むしろ、救われてる。お前がいなかったら、この国は異獣に追い込まれていたかもしれない。」


「…ありがとう、ナイト。」


 ジェンがそう言うと―


「あっ!いたいた!ジェンちゃん、ナイト君!」


「シーガ!」


 彼だけでない、アンネとソルも来ていた。


「お前、何で来んだよ…。」


「あれ?ナイト君、拗ねてる?」


 シーガがそう言うと、「拗ねてねぇし!」とナイトはキッパリと言う。シーガは「そうかな?」と言うとジェンと肩組をしたかと思うと、頬で髪の毛を擦る。


「あ〜。ふわふわ。やっぱり、ジェンちゃんの髪の毛、優しい。」


「こ、こらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」


「うわぁぁぁぁぁ!」


 ナイトが怒り、シーガは楽しんでいるのかいないのかという所で、ナイトに捕まらぬ様に走る。


「相変わらず、って感じだな。」


「ナイトがいてくれて良かったけど…。もしいなかったら、私が鬼になってたわ。」


「アンネ。鬼って、女が自分から言うか?」


「え⁈あ、た、例えよ‼」


 アンネは、ソルに言われた事に恥ずかしくなり慌てる。ジェンは、楽しいやり取りに微笑んだ。


 “皆、相変わらず…だね”


 その後、ナイトとシーガの小さな争いを納めた彼らはパーティー会場の中へと入り、楽しい夜を過ごした。そして、卒業生たちはパーティーの最後に、学校にこう言った。


『ありがとうございました‼』

 


 その翌日。ジェン、アンネ、ソルは自警団(ヴィジェラーンティ)のアジトのとある広場に集まっていた。そこには、ナイト、リティ、リアフ、ニック、ペラリ、フーティ、ナシィーがいた。

 ジェンたち以外にも自警団(ヴィジェラーンティ)に入団する者もいる。

 全員揃ったのを確認して、ナイトはこう言う。


「新入団員の皆さん。自警団(ヴィジェラーンティ)へ入団していただき、誠にありがとうございます。私達は、時に危険な任務を背負う事もあります。しかし、それでも――」


 ナイトが話した後、新入団員の皆は自警団(ヴィジェラーンティ)の証であるバッジを左胸辺りにつけた。これから、正式な自警団(ヴィジェラーンティ)団員として、暮らしてゆく。

 ジェンは入団式を終えた後、アイカ、アレックス、フィノの元へ行き、今までの感謝とこれからは王城にて暮らす事を話した。アイカは寂しかったが、ジェンはいつでも会いに行くと伝えた。


 その日の昼。ジェン、ナイト、アンネ、シーガ、ソル、リティは、ナイトの部屋のバルコニーにて昼食を摂っていた。


「そうだ。皆……仕事が安定次第、ナイツァノ王国に行くぞ!」


「え?!マジっすか‼」


 とソル、


「お兄ちゃん、本当!」


 とリティ、


「あぁ。本当さ。」


 とナイト、


「流石!ナイト君、やるね!」


 とシーガ、


「ナイト、ありがとう!」


 とアンネ、


「久しぶりに行けるのね。ツキノとフウカ、どう立派になったかな…。」


 とジェンは言う。六人はその事に喜んだ。

 ジェンは記憶に蘇った後、ナイツァノ王国を心配していた。手紙で、招待された時はとても嬉しかった。

 その事を祝福するかの様に、街は桜が満開している。そして、心地よい風が吹き、散った桜が舞い上がっていた。


 ここで、諦める訳にはいかない。まだ、異獣は根絶やしにされていない。人々が不安を抱えることのない国、世界……自分たちで築く。


 彼女は、心に熱き思いを持っていた。

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