第四十一夜 森での戦闘と反逆
ナイトはジェン、アンネ、リティに襲い掛かった異獣に刃を向ける。
(ったく、女を狙うとかタチ悪いぞ!)
彼の隣に、大鎌を持ったシーガもやって来る。ジェン、アンネ、リティは体勢を整える。ジェンはアンネにリティの護衛を頼み、ナイトの隣に来る。
「ナイト、こいつ、いきなり攻撃してきた。間一髪だったけど。」
「無事で何よりだよ。」
「それにしても、大きさが異なるのに儀式と同じ奴だなんて…。」
(シーガの言う通り…。知性の異獣に違いない。)
「二人共、攻撃を開始するぞ。けど、無茶はするな。」
『はい‼』
ジェン、ナイト、シーガは戦闘に入る。向こうもこちらの存在に気付いたのか、攻撃をして来る。すると、アンネとリティの元に「探していた彼」が来た。
「ソルさん⁈」
「ソル‼」
「すまない…。」
「すまないじゃないよ‼ソルがいなくなって、私たち心配したんだからね‼この馬鹿っ‼」
「……っ、わりィ。」
ソルは凄く反省していた。彼はアンネに謝り、薙刀になっている杖を手にしてジェンたちがいる方へと向かった。
「加勢します‼せやっ‼」
ソルは、異獣に攻撃をする。
「ソル‼」
「ジェン、すまない。勝手に…。」
「反省いているなら、話は後!」
「お、おう。」
彼らは、共に攻撃を行う。しかし、最悪な事に異獣に付けられた傷は、不気味な事に消えて回復する。
(どういう事だ…。コイツ、誰かに操られているのか?)
すると―
「……っ‼フーティ先輩‼」
ジェンの声がしたかと思うと、彼女は何故かフーティと刃で対峙していた。フーティは代々、護身用に持っている短剣で、ジェンに斬りかかって来たというのだ。何故だろうか…誰もが驚く。異獣はあの一匹だけだが、全員に混乱が走る。
「ジェンちゃん!」
シーガは大鎌を紋章に戻して、フーティに殴り掛かる。しかし、彼は上手く避けて異獣の頭の上に乗る。すると―
「うがぁぁぁぁぁ‼」
異獣は叫んで、暴れ出した。ジェン、ナイト、シーガ、アンネ、兵士たちは異獣から離れ、体勢を整える。
「何で、フーティが…。」
彼と一番親しいペラリはそう呟いて、フーティに向かって言う。
「フーティ‼何をやっているの⁈」
ペラリの声が届いたのか、フーティは嘲笑って言う。
「何って…。憎き一族を殺しているだけだ。…ラーフを慕う人間は、この世から消え去れば良い!」
フーティはそう言うと、何かを口ずさんで異獣に命令を下す。すると、異獣は口から炎光線が出る。全員は避け切る。ナイトは「自警団は異獣の隙を伺い、撤退せよ‼」と命令し、リティを含む騎士たちは撤退をした。
リティは、心配しつつも急いで撤退を始める。ジェン、アンネ、ソルもタイミングを計って撤退をする、その時‼
「……っ‼」
ジェンは異獣に逃げ場を遮られ、フーティの攻撃と異獣の攻撃を避ける。
(何よ⁈もしかして、私を捕らえようと……っ‼)
次の瞬間、異獣からの触手の打撃を受け、ジェンは巨大樹の枝元に叩きつけられた。
「ジェン‼」
ナイトは彼女の元へと向かうが、フーティの攻撃が彼を阻む。
「フーティ‼何故、こんなことをする!」
「フン!言っただろ。一族を皆殺しにするんだよ。」
「そうはさせない‼俺は、負ける訳にはいかねぇんだよ‼」
ナイトは飛翔で宙へ飛んだまま、刃をフーティに向ける。すると、背後からシーガがフーティに殴り掛かる。
「目を覚ませ‼フーティ‼」
予想外な事だったのか。フーティは不覚を取り、シーガに殴られた。同時に、眼帯が取れた。ナイトは、彼の瞳を見て驚く。
(何だ⁈怪我を負った瞳が……。もしかして、呪いの様なものが左目に罹ったって事は…。)
「シーガ。フーティの左目の呪いを解くぞ!」
「ナイトも気付いた?同感だ。……フーティの事は俺に任せて、お前はジェンの元へ行け‼」
「了解‼」
ナイトはシーガにフーティの事を託し、ジェンの元へと飛んで行く。シーガはアンネに「お前は先に避難してろ!」と言い、ソルに護衛を頼んだ。
アンネはソルと共に森の外へと避難し、ジェン、ナイト、シーガたちの武運を祈った。
「ジェン‼」
ナイトは苦戦するジェンを援護し、異獣の攻撃を王剣で弾き返す。彼女はナイトが来てくれた事に安心した。しかし、油断はできない。異獣やフーティが狙っているのは、ジェンであると考えていた彼はどうやってこの状況を抜け出すか、施策を考える。
「ナイト‼」
「……っ‼」
異獣は、ナイトに向かって攻撃を仕掛ける。ナイトは防御で攻撃から身を守り、ジェンは痛みに耐えて異獣に風刃を当て、怪我を負わせる。
「ジェン、あんまり無理するなよ。」
「分かっている。けど、貴方一人で戦わせる訳には行かないわ!」
シーガはジェンに教わった空手で、フーティと接近戦を行っていた。フーティは彼の空手によって、苦戦していた。吸血鬼ならではの身体能力のおかげでもあったが、ジェンの空手は吸血鬼の強靭さを増さしていた。
「この俺が…追い込まれるはずが‼」
「いい加減。目を覚ませよ…フーティ‼」
シーガはフーティに拳や蹴りをかまし、相手の体力を減らして行く。
(油断はできねぇが、ここで負ける訳には‼)
「おぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁ‼」
シーガは平手でフーティの左目に目掛けて腕を伸ばし、顔の左半分を掴んで―
「目を覚ませぇぇ!フーティ‼……呪解放‼」
彼は、大鎌に秘める力…呪いの解放魔法だ。しかし、これは吸血鬼一族…大鎌を持つ者しか、この魔法を放つ事は出来ない。
効果が出たのか…フーティの左目から呪いと思われる塊が出て来て、ナイトとジェンが相手している異獣に取り込まれた。
「あれ?俺、今まで何を?」
「フーティ。大丈夫か?」
「まぁ。しかし、皆は?」
「話は後でする。…悪いが、撤退命令がナイトから出た。」
「そうか。…ナイト王子‼ジェン‼」
フーティがそう言う。その直前、彼らは異獣の攻撃で巨大樹の幹に打ち付けられていた。ナイトは無事だったが、ジェンは打ち所が悪かったらしく気絶してしまっている。
二人は助けに行こうとした瞬間、異獣は触手でジェンを捕らえ、口の中へと入れ込んだ。
『……っ‼』
その場を見ていた三人の青年たち。異獣はジェンを捕らえたまま、南の方へと向かってゆく。ナイトは治癒で痛みなどを完治してジェンの宝剣を手に、彼女を捕らえた異獣を飛翔で追いかける。シーガとフーティは、怒り一心のナイトを落ち着かせる為に飛翔で彼を追いかける。
「貴様ぁぁぁぁぁ‼ジェンを、返せぇ‼」
ナイトは大切な人を連れ去る訳には行かない…許せないと言う怒りに燃え、異獣に斬りかかる。しかし、後ろからシーガが止めに入る。
「ナイト、落ち着け。お前ひとりで挑んで死ぬつもりか。」
「……っ‼…すまない。」
「王子。このままでは、森を抜けて南へ向かう。どうする?」
「……フーティ…。お前は、注意を引く事は出来るか?無理を言って悪いが…。」
ナイトがそう言うと、フーティは口角をあげて「喜んで引き受けるよ。やってやる。」と言った。そして、ナイトはシーガに「大鎌の力を使って森周囲に結界を敷き、異獣を逃さぬ様に」と言う。シーガは快く受け入れ、ナイトの背後に下がって手の甲にある聖痕を大鎌へと変化させ、神器の宝石を光らせる。
「神器よ。汝に願う。異獣に囚われし者を救う為、この森から異獣を逃さぬよう…結界を築き給え‼」
すると、神器・大鎌は呼応し、森の周囲に結界を築いた。同時に、フーティは異獣の前に出て異獣の注意を引く。
ナイトは集中力を極めて、左右の剣を強く握る。そして、王剣と宝剣の力を使って、異獣に囚われたジェンの位置を把握する。
(ジェンは、異獣の口の中か…。気味が悪い…。だが、お前を殺して…ジェンを返してもらう。)
すると、異獣はいきなり暴れ出して、ナイトに攻撃をして来る。その時を逃さなかった彼は、王剣の力で覚醒の姿になり、猛スピードで異獣に斬りかかる。
異獣は、触手や魔法で攻撃を仕掛ける。ナイトは王剣、宝剣を駆使し、触手を斬り、魔法を分断させてゆく。異獣は、対抗するべく攻撃を仕掛けた。その攻撃はナイトの頬にかすり傷を負わせた。彼は目を鋭くさせて―
「せやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
ナイトは、二つの刃を異獣の尾から飛翔で頭に向かって一直線に斬って行く。彼は頭の方へ来ると同時に、異獣の脳を深く刃で二つに切り裂いた。彼が斬り終えると、フーティは魔法銃で異獣の頭部を吹き飛ばした。
異獣の口の中からジェンが宙に浮かんで現れる。ナイトは王剣を鞘にしまい、片手で上手く彼女をキャッチした。
「王子。大丈夫か?」
「あぁ。悪いが、ジェンを頼む。」
「分かった。」
フーティはナイトからジェンを預かり、抱える。シーガは結界を解いて、彼らの元へ来る。
「大丈夫か?」
「あぁ。掠り傷が出来たが…。それよりも、ここを出よう。王都に帰ったら、ジェンの治療を優先だ。」
『了解!』
三人はそう言い、ジェンを連れて王都へと帰還した。




