第四十夜 突然の襲来!
そして、ジェン、アンネ、ソルは、訓練授業を受ける事となった。他の生徒は、少々ガタガタな攻撃や変な方向に攻撃を飛ばしたり、飛翔に苦戦する者がいたりした。三人は、それぞれの優れた技術を用いて、訓練をする。担任は、やれやれと言う思いで評価シートに「文句なし」と書き記した。
その後、評価シートを渡された三人は「やれやれ」と思いつつ、担任の高評価を喜んだ。
「よっしゃぁ!完璧って事だな。」
「まぁ、そう言う事みたいね。」
「呆れ顔で記入していたけどね。でも、油断は禁物!」
ジェンがそう言うと、ソルは頷いて言った。
「そうだな。ジェンの言う通り、何が起こるかは分からないからな。」
「そうね。過信は禁物、って言うもんね。」
あっという間に昼となり、ジェン、アンネ、ソルは、ナイト、シーガと共に食事を摂っていた。巨大な枝から眺める風景を見ながら、ジェンはコップに注がれたスープを飲みながら、何かを考えていた。
「……。」
「自分の事について、考えているのか?」
「!ナイト。…まぁ、そんな所。」
ナイトはジェンの隣に座り、優しく話しかける。
「まだ、思い出せないのか?」
「うん。兄妹と家族の事は少しずつ…でも、両親の事とフィーメ町が何故、崩壊したのか…まだ。」
「そうか…。俺も、実際に行った時は、もう、何もないって言う感じで焼け跡が一面に広がっていた。」
「そう…。やっぱり…。」
ジェンはそう言って、落ち込む。ナイトはそんな彼女を見て、一呼吸をしてこう言う。
「全く……そう落ち込むなよ。お前は、相変わらず真面目って言うか…。」
「そ、そうなの?」
「そうだよ。…だから、その…もっと楽しい事に目を向けたら良いんじゃないか?」
「楽しい事?」
「あぁ。確かに、真面目に考える時はあるけどよ。今のうちだぞ?楽しめるのは。」
ナイトはそう言って、ジェンの頭をクシャっと撫でる。
「うわぁっ!」
ジェンは、彼に頭をクシャっと撫でられて驚き、目を丸くする。ナイトは彼女の表情を見て、言う。
「お前は、笑顔が一番だよ。今まで、そう教えてくれただろ?俺だって、お前に救われたんだから。」
「……あ、ありがとう。そ、それで、フィーメ町は、ここからどこにあるの?」
ジェンはナイトにそう聞き、彼はフィーメ町の場所と訪れた当時の事を話した。
その頃、アンネ、シーガ、ソル、リティは二人の様子を見ていた。
「ジェンさん。お兄ちゃんと話していて良かった。」
「リティ、どうして良かったなんだ?」
ソルはリティに質問すると、彼女は微笑んでソルに話す。
「あぁ、えっとね。実は、お兄ちゃん、ジェンさんの事が好きって言うかそんな感じなんだって。でも、ジェンさんはそう言うの分からないんじゃないかって、少し落ち込んでいて。」
「そ、そうなんだ。だけど、ナイトは、一緒にいるだけでも安心するって事だろうな。」
「そうみたいね。」
リティはそう言って微笑んだが、心の中でこう考えていた。
(あぁ、でも、お兄ちゃんは、この事を誰にも話すなって言ってたっけ?まぁ、いいや。いつか、分かっちゃうことだし。)
ジェンとナイトの会話する様子を見て、シーガはこう呟いた。
「それにしても、ジェンちゃんは昔に戻ったようだね。」
「シーガ、ジェンの昔を知っているの?」
「まぁね。敬語だった時は、流石に驚いちゃったけど。本当は、少しフレンドリー的な所はあるんだ。天然さは、相変わらずだけど。」
「そ、そうなんだね…。」
そう話していると、そこにリアフが来た。アンネとシーガは、挨拶をして彼女と話を始める。
「リアフ先輩は、王都の外を見た事はあるのですか?」
「勿論。アンネちゃんは?」
「いいえ、私は幼い時にナイツァノ王国に行ったのですが、今は一度も…。」
「そっか。」
「でも、ナイトがいつかナイツァノ王国に行かせてくれると言っていたので、楽しみです。」
「それは、良い機会じゃない。私も最近、行っていないからね。」
「俺も、全然行っていないなぁ。ツキノ君とフウカちゃん、元気にしているかな?」
その後も、訓練は再開された。担任の依頼で、ジェン、アンネ、ソルはクラスメイトらや学年の生徒らへのアドバイスを行った。すると、苦戦気味の生徒らが少しずつコツを掴んで来たらしく、笑顔で訓練をする者も出て来た。
その様子をナイトとシーガ、リティは眺めていた。
「ジェンさんたちは、凄いね。皆、楽しそうにやっている。」
「そうだな。ジェン、アンネ、ソルはそんな才能を持っているに違いないさ。」
「俺にも、そう言うのが欲しかったな。人が押し寄せられると大変なんだよねぇ。」
「お前は、モテるから良いだろ…。」
ナイトは呆れて、そう呟いた。リティは、彼の言葉に少々苦笑いをするのだった。
その日の夜。ジェン、アンネ、ソルは共に食事を終えた後、夜空を見ていた。外から見た王都は壁で街の明かり見えないが、城の高い場所の明かりは薄っすらと見える。そして、空は無数の星が散りばめられており、美しかった。
ジェンの前世は、排気ガスや街の灯りなどによって、星は一等星や二等星、三等星くらいしか見えていなかった。
「綺麗だね。」
「あぁ。今日はやけに晴れていて、星がいっぱい見えるぜ。」
(…久しぶりに見たわね。思い返すと、兄弟でよく見ていたのを思い出す…。)
「何か、嫌な予感がするな…。」
ソルが呟いた、その時だった。警報を示す鐘が突如、鳴り出したのだ。ジェンたちは、すぐさまテントがある方に向かうと、生徒らはテントを速やかにしまって王都へ避難していた。
「何があったの⁈」
ジェンが尋ねると、生徒はこう答えた。
「ジェンさん‼…異獣が!」
「え⁈来るわけないと思っていたのに…。」
「……早く避難してくれ…。このままじゃ‼」
ソルがそう言うと、森の中へと飛翔で飛んで行った。ジェンは彼の名前を呼んだが、既に奥へと言ってしまった。アンネはリティと共に、まだ避難していない生徒らに声を掛けて、王都へ避難させる。
「皆、落ち着いて避難して!」
ジェンは呼び掛けて、避難を誘導する。すると、森の奥から異獣の叫び声が上がる。距離からすると、少しは離れてはいるが、油断は出来ない。そして、殆どの生徒が避難を終えると、ジェンは宝剣を抜刀する。
(ソルを戻さなければ…。)
彼女はそう思い、飛翔でソルが向かったとされる森の奥へ向かう。アンネとリティは、彼女を追いかける様に、後を追う。
ジェンは、夜目の魔法で視界を良くする。すると、飛ぶ真正面から蜘蛛型の異獣が出現し、風刃で討伐する。そのまま進んで行くと―
(……っ‼)
そこは、異獣によって戦死した数人の兵士たちがあった。その光景にジェンは頭痛に襲われて、ふと何かが脳内に流れ出て来る。しかし、ぼやけていてよく分からない。
(な、何だろう…今の。……それよりも、この奥からナイトの王剣の力が…‼)
「ジェンさん‼」
「ジェン、何をしているのよ!早く、ここから逃げましょう!」
「勝手にごめんなさい。けど、ソルがこの森のどこかにいるの。」
「えぇ⁈あの、馬鹿‼」
「そんな。……ソルさん、女の子に心配かけてどうするのよ。お兄ちゃんの所に行くしかないわ。」
「怒られるのは分かってるけど、今はソルの回収を優先だね。」
ジェンの言う事に二人は頷いて、ナイトたちがいる場所へと飛んで行く。ジェンは、彼の王剣の力を感じる方向へ進む。すると、予想通り異獣と戦っているナイトたち…自警団の姿があった。
「ナイト~‼」
「…っ‼ジェン、どうしてここに‼」
「悪いけど、ソルを見なかった?」
「そう言えば、アイツ…森の奥へ飛んで行ったのを見たな…。」
「えぇ⁈そんな、回収しに来たのに…。」
ジェンは、ナイトにここに来た経緯を説明する。彼はすぐに受け入れ、自警団の所から離れぬ様に言った。それにしても、異獣の数はざっと「三十」と言った所だろう。何が起きたのだろうと、ジェン、アンネ、リティは安全な場所の巨大な枝の上で話をしていた。
「どうして、こんな事に…。」
「リティ、ここは比較的…安全な森なんだよね。」
アンネがリティに質問すると、彼女は頷いて答えた。
「うん。王都からも少し近いし、あまり来る事は無いんだけど…。」
リティも驚いていた。今まで、この様な事は無かったようだ。しかし、何故突然に異獣がこの森に人間がいると分かっていて来たのだろうか?
「……おかしいわ。異獣に知性の印が無い…。……っ‼二人共‼」
ジェンは飛翔で飛び、アンネとリティを空気を操って自分の方へ引き寄せる。すると、自分たちのいた方から異獣の攻撃が当たる。間一髪だった彼女たちは、怪我せずに済んだが―
「なっ‼これは‼」
彼女たちが見たのは、大きさは中くらいの異獣だが…結界の儀で見た異獣そのものであった。それに気付いたナイトは、ジェンたちの前に来て剣を構えた。
(絶対に、ジェンや仲間に手出しはさせない‼)




