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Awakening Of Magic  作者: Hanna
第五章 結界の儀 編
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第三十八夜 結界の儀 ―後編―

 ナイトとシーガが見たのは、とても巨大で奇妙過ぎる異獣であった。


「シーガ、こいつ。」


「あぁ、ヤバいぞ。アイツらに見せる訳にはいかねぇ。ココで食い止めるぞ!」


「おう!」


 二人は飛翔(フーガ)で飛び、奴の(かしら)の方へ向かう。着いてみると、地表からとても高い事が分かる。巨大な異獣は、目をギロッっとさせて二人を見つける。


「見つけた様だけど、遅かったなぁ‼」


 シーガは、すさまじい速さで奴の右目を大鎌(ジャダク)の刃で潰して、すぐさま離れた。


「よくやった、シーガ。だけど、安心はできないな。」


「あぁ。でも、吸血鬼(ヴァンパイア)にとっちゃ、月夜は、体調が絶好の日だからな。油断はしないが。」


「じゃぁ、戦うぞ!ジェンの様子も心配だけど。」


 ナイトがそう言うと、シーガはこう言う。


「問題ない様だ。ここからじゃ、順調だな。」


「……ッ‼危ない‼」


 ナイトは、奴に攻撃されそうになったシーガを助ける。シーガは「すまない」と言い、ナイトと共に戦闘に挑む。



 その頃、第一壁(ファーストウォール)では蝙蝠(こうもり)を完全討伐した為、地表にいる異獣と戦っていた。アンネ、ソル、リティは(アロー)で対処をする。駐屯団(ガラスン)の兵士たちは、ディンの優秀な攻撃により優勢にある。

 リアフ、ニック、ペラリ、フーティは順調に討伐を進めていた。


「兄さん。そっちは?」


「問題ない。こっちは全部片付いた。」


「お~い!」


 上空からペラリとフーティが来た。


「ペラリ‼そっちは?」


 リアフはペラリに聞くと、彼女はリアフとニックの元に来てこう言う。


「私たちの所は片付いた。けど……。」


「どうした?ペラリ。」


 ニックがそう問うと、フーティが答えた。


「ナイトとシーガの所で、今までにない大きさの異獣がいた。二人が止めているので精一杯だ。」


「何だと!」


「それよりも、兄さん。ジェンの事もあるぞ。」


 リアフの言葉により、ニックは「まず、ジェンの元へ行こう」と言い、四人は彼女らの元へと向かった。



 その頃、第一壁(ファーストウォール)でジェンが突如険しい顔をしていた。


「ジェンさん。」


 リティは心配をする。環の数はあと十本だが、ジェンの頬骨あたりに金剛(ダイヤモンド)が張り付いている。誰にも分からないが、彼女は一生懸命で今、苦しい最中にあるのだろう。

 そこにリアフ、ニック、ペラリ、フーティが戻って来る。


「リアフさんたち、大丈夫だったの?」


「リティ、大丈夫。だけど、ナイトとシーガのいる場所には今まで見た事も無い巨大な異獣がいる。なぁ、フーティ。」


「あぁ。このままだと、奴はジェンに向かってまっしぐらさ。」


「そんな‼助けないと‼」


 アンネは、ナイトとシーガの元へ行こうとしたが、ソルは彼女を止める。


「ソル。何をするのよ!シーガ君たちが‼」


「ダメだ‼お前が行って、大怪我でもしたら…。代わりに俺が行く。」


「ソル。でも、私は…。」


「助けたい気持ちは分かる。けど、シーガはお前に危険な目に遭わせたくなくて…ここに置いたんだ。」


 ソルの言葉にアンネは「分かった。でも、気を付けて。」と言った。ソルは、飛翔(フーガ)でナイトとシーガの元へと向かった。


 “頼むよ、ソル。私が出来なかった事を…。託すわ。”


 とアンネは健闘を祈った。



「ジェンさん‼」


 リティがそう叫んだ時、ジェンに異変が起きた。環はあと七つとなったが、彼女の左目と口から血が流れていた。体に負担が強い状態なのだろう。


 とその時…‼


《ドカーン‼》


 遠い所から爆発音が響く。ジェンたちがいる場所から二百mか、もう少し先の所で、奴が姿を現す。


「何あれ‼」


 リティは、恐怖と驚きに包まれる。フーティは、アンネとリティに説明する。


「あれが、異獣の群れの主だ。」


「と言っても、奇妙過ぎです。気持ち悪い…。」


 確かに。アンネの言う通り、奇妙で気持ち悪い。奴は暴れては地鳴りを響かせる。駐屯団(ガラスン)の兵士たちも、腰を引いている者が多い。

 空中で戦っているナイト、シーガ、ソルは奴の勢いで押されている。


「くそっ‼キリがねぇ‼」


 シーガは、奴の攻撃が激しい事に怒る。彼は先程、攻撃を避けれずに地面へ叩かれた。


「やぁ‼」


 ソルは奴に向けて(アロー)で攻撃をする。しかし、刺さっても奴はビクともしない。


「ったく、ここを突破されたらおしまいだ‼」


 その時…。奴の口から火光線(フランマ・レイ)が放たれる。その攻撃は、ジェンの元へと直撃する。


「ジェン‼貴様ぁぁぁぁ‼」



 第一壁(ファーストウォール)では、奴の攻撃により被害が出た。アンネ、リティ、リアフ、ニック、ペラリ、フーティは防御(ディフェ)で守って軽傷で済んだが、駐屯団(ガラスン)の中で死者が出てしまった。



 この時、ジェンの意識は全ての環が消えて、とある空間に出る。そこは、まるでウユニ塩湖のような景色だ。ジェンは、目の前にいる小さな少女に気付く。


「貴方は?」


「私?私は、ジェンレヴィだよ。お姉さんの子供時代の姿だよ。」


「今も子供ですよ。」


 十四歳のジェンは微笑む。七歳のジェンはこう話を始める。


「…でもね。お姉さんは、まだ本当の自分っていうものに慣れていないんだ。」


「本当の自分?」


「うん。七年前にお姉さんが私を別の人として作っちゃったの。……たまに、敬語がなかったでしょ?それは、七歳の私の人格って言うものが出ているんだって。」


「人格…。でも、本当の自分に戻る方法が私には―」


「あるよ!」


 七歳のジェンはそう言う。


「え?」


「私が…お姉さんに全部を返すんだよ‼……記憶は、まだ思い出せないけど…。」


「え?で、でも、そうしたら…貴女は⁈」


「良いの。元々、お姉さんが私を生んでくれたものだよ。だから、いつか返さなきゃ。ね?」


 七歳のジェンは笑顔を浮かべる。十四歳の彼女にとって、それはとても悲しい笑顔だった。


「良いの、ですね?」


「うん。」


 そして、ジェンは白く強い光に包まれた。



 同時に、王都(エルダ)の結界は見事に完成した。ジェンも無事に生還し、こちらの世界に戻って来た…。


「ジェン‼」


「ジェンさん‼」


 彼女の無事に皆が喜んだ。


「待たせて悪かったね。でも、私は奴の元に行かなくちゃいけない。」


 ジェンは、そう言って宝剣(クラ・ソラウ)を台座から片手で抜く。


「もしかして…ジェンさん。元に?」


 リティは、気付いた。これが、本来のジェンの話し方であると。


「そうだよ。記憶は戻っていないけど、あの子が返してくれたんだ。だから、今、助ける‼」


 そう言ってジェンは背中に白い翼を生やして、猛スピードで奴の元へと飛ぶ。頬骨の金剛(ダイヤモンド)と左目や口からの流血は元に戻らなかったが、彼女は奴の元へ向かう。


「はぁぁぁぁぁぁ‼」


 ジェンはそのまま突っ込み、奴の尻尾部分を切断する。現場にいた三人は驚いた。


「ジェン‼」


「ジェンちゃん‼」


「ジェン、お前‼成功したのか!」


 ナイトの質問に、ジェンは頷いて言う。


「えぇ。あとは、奴を片付けるのみ!行くぞ!」


 四人は、一斉に斬りかかる。奴は攻撃をするも、四人は同時に避けて―


『うぉぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁ‼』


 叫びながら、奴に止めを刺した。奴は、叫びを挙げながら塵となって消えた。四人はほっとした。

 が、ジェンはそうではなかった。儀式で結界を「初めから創る」事を代償に、力を酷使した苦しさと頬骨の金剛(ダイヤモンド)…だが、一番の代償は疲労だった。

 ジェンはそれに耐えきれず、力が抜けて飛翔(フーガ)を解いてしまい、瞼を閉じてしまう。


「ジェン‼」


 ナイトは急いで王剣(イーリス)を鞘に納め、両手で彼女を姫様抱っこでキャッチをする。


「ジェンちゃん!」


「不味い。急いで治療しないと…。」


「ナイト、急ごう!」


 ソルは第一壁(ファーストウォール)にいる仲間の元へと戻る。ナイトはジェンを連れて、シーガと共に学校の保健所へ向かった。



 翌日、ナイトはジェンの看病に当たっていた。アンネ、リティ、リアフ、ペラリによって手当され、完治はしたが、儀式の疲れでまだ寝ていた。


「ジェン……馬鹿だよ、君は。小さい時から、無茶して。」


 ナイトは、寝ているジェンに向かってそう言った。彼は、隣のベッドにいるシーガの容態を聞く。


「大丈夫か?」


「うん。覚醒の姿じゃなかったら、死んでいたかもしれないけど。生きているって思うとホッとするよ。」


「正直、僕もだよ。生きていて、驚くよ。」


 二人は、今の心境を語った。確かに、あんな奇妙な異獣と戦ったのだから。


「けど、これから少し忙しくなるな。ジェンが無茶したから、駐屯団(ガラスン)に詫びしなきゃいけないし…。」


「ナイト君。ジェンちゃんの事は任せて。今、自分にやるべき事をしてきなよ。」


「君、ジェンになにかするんじゃないよね?」


 ナイトは睨むような眼差しでシーガに言うと、彼は笑って言う。


「あっはは、しないって!嫉妬し過ぎたよ。」


 嫉妬…か。ったく、それは君が疑わしい事を言うからだろ?


 と、ナイトはそう思いながらも病室を後にした。



 儀式から数日後…。ナイトは民に結界が再び戻り、それはジェンが成し遂げた事だと報告した。彼は正直、不安だった。何故なら、ジェンが無理やりに行った事だからだ。しかし、予想外に民は大喜びだった。


「ジェンさんがやってくれるとは、なんと感謝したらよいか‼」


「万歳‼」


「おかげで不安が消えましたよ‼」


 などの声が上がる。ナイトとリティ、ナシィーは民の笑顔を見て安心した。それから、王都(エルダ)は七年前の賑わいに戻り、貧しい人々は一般と変わらない生活を送れるようになった。

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