第二十六夜 試合、開始‼ ―王子の異変―
審判の合図によって、試合が始まった。相手は三人同時に走り、突っ走って来る。
「アンネ…先手をお願いします!」
「OK‼」
アンネは一人で前に出る。相手は馬鹿にしたような感じでいる。
「まずは…‼」
相手の目の前に二mの水の壁が立ちはだかる。
「ひるむな!進め‼」
相手の三人は、水壁を抜けるが、三人の姿が無い。一体どこへ?
「ソル、今ですよ!」
「任せろ‼…雷矢‼」
ジェンたちは、飛翔ですぐに相手の背後へ回ったのだ。アンネは、水壁を解除し、ソルの雷矢が通れるようにする。
『うぎゃぁ‼』
相手三人は、ソルの魔法により痺れを伴う。しかし、水をくぐり抜けた事により伝導性が増したので、痺れが強くなる。が、三人の少年は治癒で痺れを取り、そのうちの一人が剣を振るって光刃をジェンに向けて放つ。
ジェンも即座に反応し、素手で闇光線を放って光刃とぶつけ、爆発を起こす。この時、相手の少年たちと観客…審判、ナイト、ナシィー、クラッドとアイカ、アレックスは驚いた。だが、彼女のクラスメイト全員は歓声を挙げる。
ジェンが「素手で魔法を使った」事。今まで無かった魔法を生み出す方法が今、ここで披露された。クラスメイトは何度も見てきている為、慣れているのだ。
「何をぼーっとしているのですか?正々堂々と行きましょうよ‼」
ジェンは相手の三人にそう言うと、ハッと我に戻ったのか「おう‼」と返事をした。そして、一対一の武術・魔法勝負が展開される。
ソルは槍、相手は剣で戦う。武器上、槍は剣に強いと言われているが、相手はソルの攻撃を上手くかわす。
避けるなんて、見事だな。でも、本気までは行っていないから…本気で行こうか。
ソルは、目を鋭くして刃に魔法を貯めて相手の隙を狙う。そうしていくと、相手に二度、掠り傷を負わせる事ができた。相手も黙ってはいない。ソルの左頬に一本の掠り傷が出来ている。先程、先手を打たれた時に負ったらしい。
アンネは、鋭い薙刀術で力を調節して突きや薙ぎ払う動作を駆使する。相手はアンネのスピード、リーチの長さによって苦戦しているが、隙をついてアンネに掠り傷を負わせていた。
やるわね。リーチが長い分、手元に受け流す武器が無い…けど、さっき、ジェンが素手で魔法を繰り出したのを…私とソルにもできるのなら‼
アンネは力を振り絞って、素手で魔法を繰り出した。相手を遠ざける風魔法弾を放ち、相手を驚かせる。
ジェンは、短剣を鞘に納めたまま、空手の構えを取っている。それも、姿勢一つ崩しておらず、傷一つも負っていない。相手は、体の所々にジェンの拳や蹴りの痕がある。
「お前、どうやって素手で魔法を出しているんだ‼」
「それは…自分で考えてみてはどうでしょうか?自分で考え、相手の弱点を見つける…。それも戦いの醍醐味でもありますよ?私は、貴方たちが身に付けている防具装備の弱点を見抜きましたし…。」
「おのれぇ‼」
ジェン曰く、こうだ。
其の一:まず、アンネが生み出した水壁とソルの雷槍。相手の胴体に激しく反応していたことから、腹や背中に電撃や水魔法を与えられるのが弱点。
其の二:先程、ジェンが相手の持っている剣の持ち手の手首に炎足をかました時に「熱い!」と反応があった。そのため、両方の手首の装備は炎魔法が弱点。
其の三:さらに、足の向う脛に闇歯止を放った時には相手は動けなかった事で、弱点と見抜いた。
結論を言ってしまうと、魔法防具を造る際に対抗できる魔力の傾きが出てしまった様だ。
ジェンは、相手が本気になって挑んできたのに気づき、いよいよ短剣を抜刀した。刀身は普段よりも神々しく輝いていた。相手は鋭い剣術でかましてくるが、彼女は全て避けたり剣で受け流しをしたりする。
「何故だ‼俺の方が…剣術は上だ‼」
相手の少年はジェンに刃を振るうが、彼女に短剣で受け止められてしまう。彼女は、相手の剣の刃に沿って少年に接近しこう言う。
「確かに、才能で決まる事もありますが……一番は、努力です。……力任せに振るうんじゃありません‼」
ジェンはそう言いながら、腹に水魔法を纏った足…水足を強烈な力でかまし、相手を向こうの壁まで飛ばした。相手は、衝撃などにより気絶した。
やり過ぎましたね…。でも、実力は認めます。いい勝負と経験でした。
そして、決着はついた。ジェンたちの勝利である!同時に歓声が上がる。七年程前から魔導・杖騎士学校は、大会で大活躍な場面が無かったせいか…大盛り上がりである。
そして、二学年、三学年と試合が行われた。二学年は惜しくも負けてしまったが、三学年は勝利した。しかし、騎士学校二学年の相手を誰がすべきなのか…ジェン、アンネ、ソルと三年の先輩たちで話し合っていた。
「どうしますか?先輩は。」
ジェンは、三年の先輩のチームリーダーに尋ねる。
「そうだな…。お前たちは優秀だが、俺たちの希望でもある。ここは、俺たちに任せてくれ‼」
「せ、先輩⁈」
ソルは驚く。いや、ジェンとアンネもそうだ。二回連続で出場は、体力の消耗を見てる限り過酷に程近い。もし、動けなくなってしまった場合、最悪になりかねない。
この大会は、三つのチームが全滅するまで戦う形式で、一つのチームが敗れると控えているチームが出場し試合を行う。
「大丈夫だ。これは、先輩の意地だ。強いから勝つが間違っている事を教えるのさ。」
こうして、ジェン、アンネ、ソルは決勝まで控える事となり、三年が次に出場し、試合が始まった。やはり、体力に差があり一時押される状態へとなった。ジェン、アンネ、ソルや魔導・杖騎士学校の生徒ら、観客も応援する。
ジェンは、二年同士での試合を見ていた際に気付いた点や不可解な点を、先輩たちに伝え、戦力へとつながる様にしておいた。が、今は心配でいっぱいだ。
心配する中、三年のリーダーが勝利へと導く先手を打った。二年の三人は、相手が背中を必死に守っていたのだ。ジェンはそれを見抜いた。何故なら、魔法防具の力を増加させる宝石が背中に見えているからである。それを三年の先輩が剣で破壊したのだ‼ほかの二人も相手の背中の宝石を破壊した。
これを見た相手、騎士学校の二年は焦りが出始めたのか、力任せに迫って来た。三年の先輩たちは意地を見せ、相手を怯ませて勝利を納めた。
『やったぁ‼』
三人は、喜びに包まれた。ジェンたちの先輩も涙を流していた。三年の先輩たちにとって、これが最後の年末大会だ。兵団に入団し、この王国の未来を築く者へと成長する。思い出の一品が一つ増えた所だ。
「大丈夫か?」
三年のリーダーは、相手チームのリーダーに手を差し伸べる。相手の少年は、三年の先輩の手を取り立ちあがる。
「お見事です。まだまだ、ですね。」
「いや、防具は立派なものだった。これからは、また驚かせるものを作ってくれ!」
「は、はい‼」
相手チームのリーダーの少年は、意気込んで返事をした。そして、昼食の時間となりそれぞれ食事を始める。クラッドとアイカの母・フィノが選手の為に昼をご馳走してくれた。しかも、全て丹精込めた手作り料理!皆それぞれ、美味しくいただく。
「フィノさん、わざわざありがとうございます。」
「いいのよ。皆、頑張っているから私も頑張ってみたの。」
フィノの手料理を完食して、アンネ、ソル、生徒らはお礼を言った。そして、いよいよ決戦。王子・ナイトとのチャレンジ戦の争いが繰り広げられる。
“ここで負けたら、先輩たちの努力が水の泡だ!”
三人は、同時に思った。しばらく休憩をした彼らは、武器の状態や準備体操…先陣作戦を確認する。
闘技場の観客席では、徐々に昼食を終えた人々が再び集まりつつある。王族の席では、ナイトが準備のためいない。リティは、近くにいたシーガに質問する。
「ねぇ、シーガさん。お兄ちゃんに、何か様子がおかしい事はなかった?」
「そうだね…。あ、確か、王剣を持っていくのかと思ったら、断っていたな。」
「お母さん。」
「えぇ、やはり最終戦は厳しいかもしれない。シーガ、貴方に頼みがあります。」
ナシィーは、緊張を高めるべきだと心の奥底で強く思った。
ジェンたちは青の入り口前でスタンバイ。深呼吸をして、審判の入場合図を待つ。そして―
「選手、入場‼」
ジェンたちが入場する。彼女は周囲を見渡したが、違和感があった。審判席に審判がいない事、自警団団員が観客席のあちこちに用心している事…。さらに…。
「今日は、魔導・杖騎士学校の実績の素晴らしさに免じて、ルール其の二の治癒魔法を無制限使用を許可する。」
“え⁈”
「どういう事だ?」
「やっぱり、それ程激しい戦いなんじゃないの?ジェン、どう思う?」
「分かりませんが、アンネの言う通り…激しい試合が繰り広げられるでしょう。」
赤の入り口…彼らの正面には、決戦相手のナイトと精鋭の騎士学校の生徒だ。精鋭の生徒はナイトの前に立っていて、いかにも防御体制である。だが、アンネはふとこう呟く。
「ねぇ、何か嫌なオーラを感じるんだけど…。」
その時‼ジェンは何かを感じたのか…素手で空気を操り、対戦相手の生徒二人を自分の方へ引き寄せる。同時にナイトが刃を振るっていた。怪我は負っていないものの、ナイトの行動に誰もが疑問を抱いた。




