第二十五夜 年末大会 本番!
ライリーの子孫と分からないジェンは、混乱をする。そうかもしれない、いきなり「君は○○だ」と言われてもその確証がない限り、信じるに至れない。
「で、ですが…私は‼」
「ごめんなさい。混乱させてしまって…ですが、これだけではありません。貴方の左鎖骨の聖痕を治しに来たのです。」
「ジェンさん、落ち着いて。貴方の中にある呪いを解くだけだから!」
リティの言葉に彼女は理由を聞くと、リティは言った。
「簡単に言えば、ジェンさんの記憶や魔法を封じ込めているのを取り出すの。少し、苦しむことになるかもしれないけど…。…じゃぁ、そのまま安静にしてね。」
「は、はい。」
ジェンは横になったまま安静にし、目を瞑る。リティとナシィーは杖の宝玉を光らせ、何かの呪文を唱えた。シーガはその風景を見守る。そして、二人の杖から神々しい聖なる光が現れ、ジェンを包み込む。
凄い…。王家に伝わる、人の体内の呪いを消滅させる魔法…ラーフの光。
シーガはその光に見とれている。が、真剣な表情だ。よく見てみるとジェンは少し苦しんでいる様だ。
「うっ…。うぅ…。」
うめき声をあげるジェン…リティが言うには、呪いを受けている場合、王家の力を借りた本人自身で消滅させる。言わば、精神の試練でもある。そして、数分経つと…ジェンのうめき声は大きくなり…そして。
「出て行けぇ‼」
彼女がそう言うと同時に聖痕から禍々しいものが出て来た。精神の世界でジェンの力に敗れた為、その場で消滅した。
「…あ、ありがとうございます。…おかげで、元に戻れました。」
ジェンは体を起こす。そして、リティから手鏡を受け取り、聖痕を確認すると…淡い青の雫の形をした聖痕になっていた。リティ、シーガは喜び、ナシィーは微笑んだ。
ジェンは「どうしてこんな早く消滅させる事ができたのか」と訳を聞くと、ナシィーは「貴方の力に相当するものではなかった。おそらく、呪いを受けた時期、魔法の威力が足りなかったのかもしれない」との事だった。
「ありがとうございます、ナシィー女王。感謝いたします。」
「いえいえ。礼を言われるほどではありません。むしろ、頼みたい事があります。」
「頼み事ですか?」
「はい。知っている思いますが、我が息子・ナイトを救っていただきたいのです。あの子は本当は優しい子なのですが、最近は家族や城の者にも顔を出していないのです。成長過程の可能性もあると思ったのですが…。」
ナシィーの言う事にジェンは「これは答えるべきものだ」と即座に判断し、こう言う。
「分かりました。私はその悩みを解決し、女王陛下の力となり救いたい所存です‼」
「…!ジェン、その考えは昔から変わりませんね。」
“え?”
ジェンは不思議な言葉に「?」を浮かべる。
「さて、私は政務がありますのでこれで。」
「あ、お母さん。リティは、まだここにいるね!」
「分かったわ。気を付けて。」
ナシィーは保健所を出て、王城へ向かった。リティはジェン、シーガに話をする。
「今の所、王都の結界は無事だって。お母さんが言うにはあと、一年くらいは持つって言うんだ。」
「一年と言っても、リティちゃん。そう安心している場合じゃないって事だよね?」
「そうね。シーガさんの言う通り、お母さんも安心はできないと言っていたし、それにジェンさんの力が必要になるの。」
リティの言葉にジェンは「結界の儀」の事だと思い、リティに「結界を創るのは私だけなのですか?」と問う。
「うん…。本当はジェンさんのお父さんがその仕事を担う所だったんだけど、あの事件があったせいでジェンさんだけになっちゃって…。何か、押し付けみたいね。」
リティは心配な表情をしていると、ジェンは彼女の頭を優しく撫でた。
「押し付けではありませんよ。お父様もいずれは私の兄妹の誰かに結界の儀を教える所だったのでしょう。リティ王女のせいではありません。」
「そうだよ。リティちゃんのせいじゃないよ。悪いのは事件を起こした犯人なんだから!そうでしょ?」
「…うん!」
そして、ジェンは以前のように歩けるようになり、アンネとソルの元へ向かった。
「アンネ~!ソル~!」
ジェンは大きな声で二人の名を呼ぶ。すると、二人は彼女の声と姿に笑顔を浮かべる。
『…!ジェン‼』
二人は彼女の元へ駆けつけ、喜んだ。他の生徒も彼女の無事に大喜びで、祭り事と思わせる程であった。ジェンは「心配を掛けましたが、みなさんが無事で何よりです!」と生徒らに言った。
その後、ジェンはアンネ、ソル、シーガと話をする。
「実は、ナシィー女王様が来て…私の体にある呪を取り除いてくれたのです。」
「しゅ?」
アンネが疑問に思うと、シーガは答える。
「簡単に言えば、呪いって所だよ。ナシィー様とリティちゃんが、ジェンちゃんを助けたんだ。精神の試練みたいな感じで。ね?」
「まぁ、そんな所ですね。聖痕はおかげで元に戻りましたし、記憶は時間がかかりますが、徐々に戻るでしょう。」
「良かったな!」
ソルは嬉しそうに言う。アンネもシーガも同じだった。これで、年末大会前の災難は一件落着となり、生徒や町の人々は大会への期待を寄せる様になった。それは、今まで以上の盛り上がりを見せていた。
十二月になると、紅葉は散り、雪が降っていた。雪かきをする人や雪合戦する子供たち、大切な人へのプレゼントの買い物など、様々な出来事がある。ジェンはクラッド、アイカ、アレックス、フィノ、祖母に、アンネはロッソニにプレゼントを渡した。
その数日後のある日、学校内ではクラスごとでクリスマスパーティーが開かれていた。ジェンは、特別企画の企画者としてクラスの教卓の場所に立つ。
「皆さん、メリークリスマス!」
『メリークリスマス‼』
「今回、皆さんにプレゼントを差し上げます。魔導騎士の方には、魔法鞄を、杖騎士の方には、杖を納める鞘をプレゼントです‼もちろん、私の手作りですが、壊れない様になっていますので一生使えます。説明書付きになっていますので、お手軽に使えます!」
ジェンはそう言うと、一組全員にプレゼントをそれぞれ魔法で運び、彼らの手元に送った。一組の皆はとても喜び、パーティーはとても賑やかなものとなった。
そして、年末大会の日が近づいていた。
パーティーの後、三人は一〇三号室に集まり大会への意気込みを語っていた。シーガは今日、仕事と兵団でのパーティーに出ている為、来られなかった。だが、手紙を送り「大会、応援しているよ!」と書いてあった。でも、何故か、アンネは照れくさい表情をしていた(シーガが彼女宛ての手紙に何か書いてあったのかもしれない?)。
「私は、正々堂々と試合に挑み、悔いの無い勝利を取りたいです。」
「そうだね。…私は…、二人と一緒に勝って思い出に残こしたい!」
「俺たちは、いつも三人だ。助け合うのも悪くないよな‼」
そして、十二月三十一日の午前十時辺り…。闘技場では開会式が行われ、選手は試合の準備をしていた。闘技場に行く際、十歳未満は規制により入れない。
何故なら、大怪我で流血する場合がある為、精神的な障害を起こす訳には行かない。しかし、クラッドとアイカは基準を満たしている為、アレックスと共に闘技場にいる。フィノは「昼の用意をしてから、あとで行く。」との事だった。
ジェン、アンネ、ソルはトップバッターの為、準備運動を行い、武器の状態を確認していた。二、三年の先輩たちも彼らと同様に、準備運動を念入りに行った。
この大会での規則はこうだ。
其の一:使用する魔力、力を七割とする。
其の二:治癒魔法は原則三回までの使用とする。
其の三:相手が「降参」となった場合、これ以上の攻撃は許されない。
其の四:小道具の使用は可能。ただし、命や体の部位などを奪う道具は禁止する。
其の五:空中戦あり。闘技場の地面変化もあり。
其の六:試合後、相手を誹謗する様な過激な言動をしない事。(スポーツマンシップに則る)
万が一、魔法が命中せずとも観客には、魔法や刃物類などを防ぐ防壁が張ってある為、規則を守りながら思う存分に試合に挑められる。
ジェンたち魔導・杖騎士は、闘技場の青の入り口から…対する騎士学校は、赤の入り口から入場してくる。
ジェンたちは青の入り口でスタンバイをする。先輩たちに応援を貰い、気を引き締めた。
「いよいよですね!」
「うん!」
「はぁ、緊張するなぁ…。」
珍しくソルが言う。アンネは、彼にこう言う。
「ソルらしくないよ。いつも通りにやれば大丈夫。」
「そうですよ。」
「…あぁ、そうだな‼考えすぎたな。」
観客は、大賑わいだ。王室の席には、ナイト、リティ、ナシィー…そして、警備担当のシーガ。観客席のあちこちには、自警団の団員数名がいる。闘技場の審判席に、試合の終始を合図する審判がいる。審判の者が挨拶をする。
「さぁ、いよいよ始まりました!今年は希望となる者たちが何と、トップバッターで開催する事となりました。それでは、選手入場‼」
歓声が上がる。音楽と共にジェン、アンネ、ソルと相手の選手が姿を現す。クラッドとアイカは、ジェンたちへ応援をする。相手は、騎士学校一学年の男子三人である。
能力的に一学年の中で優秀な三人ですか…。良い勝負になりそうですね!とジェンは思う。
「それでは……始めぇぇ‼」




