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Awakening Of Magic  作者: Hanna
第二章 王都内の事件簿 編
19/87

第十六夜 生徒の異変とアンネの力

 それに、よく考えてみるとアンネの母が殺されてしまった年数も一致する。彼女の母、ヘンリはジェンの父の妹である事も関係あるのか…。だが、授業であった為、あまり深く考えない事にした。


 昼休み。昼食を終え、ジェンは工房室へ用がある為、アンネと別れる事となった。


「ごめんなさい。少し、考えたい事がありまして。」


「良いの。自分で何とかできるよ。」


 ジェンは工房室へ向かい、アンネは訓練所で魔法や武術の練習をする事にした。すると、数人の女子が訓練所に現れる。


「ねぇ。」


「な、何ですか?」


 アンネはリーダー的な女子に声かけられ、おずおずと返事をする。すると―


「アンタ、シーガ君とどういう関係?」


「え?と、友達ですけど…。」


 アンネは素直に答えると別の女子生徒がこう言う。


「はぁ?友達って言うの?ウザいんだよ。」


「イケメンが友達だから良い子演じて、何様のつもり?」


「シーガ君は私たちだけの物なの。アンタみたいな(けが)れた者は、近づかないでくれる?」


 アンネは、暴力や暴言など何もしていない女子たちからの悪口を言われ、混乱する。すると、丁度そこに―


「アンネ。」


 ジェンが現れた。アンネは即座に彼女の元へ行く。ジェンはアンネの様子を見て事情を察知する。


「ごめんなさい。一人にしてしまって。」


「アンタ…、何?」


「いえ、アンネを呼びに来たんです。では。」


 ジェンはアンネを連れて、工房室へ向かった。アンネは窮地を救われ、安心する。ジェンはアンネに先程の状況を話してもらい考える。


「やはり、アンネへの嫉妬の様ですね。」


「でも、何か雰囲気が違うと言うか…。あの人たち、前は大人しい人たちだったはず…。」


 アンネの言う事にジェンはそう言えばと考えて言う。


「確かに。何度か話をしていますが、様子がとてもおかしい感じです。シーガは今、自警団(ヴィジェラーンティ)の遠征に付き合っていますので時間は要しますね。アンネ、これからはなるべく、一人にならない様にしてください。身の為です。」


「う、うん。」


「それはそうと、今、アンケートを考えていたんです。」


「それって、(さや)とか魔法鞄(マジックバック)の事ね。いいかも。製作、私もやってみたい‼」


「良いですよ。ソルもシーガも誘おうと思っています。」


 そして、二人は工房室で材料などの確認も行い、アンケートのコピーを担任へ提出し要件を話す。担任は理解できているか不明だったが、コピーをしてくれた。ジェンはそれを放課後前のHR(ホームルーム)で行いたいと言った。

 ジェンとアンネは放課後、アンケート収集をしながら話をする。


「そう言えば、思っていたのですが、集団で先頭に立っていた彼女……人間ではない雰囲気を持っている様な気がします。」


「え?じゃぁ、皆気づかないのは何で?」


「分かりません。ですが、調べてみる必要はあるかと思います。」


 ジェンは、詳細をアンネに話した。彼女が言うには、集団のリーダ的存在の女子の右鎖骨辺りに何かの刻印があり、邪悪な何かを感じると言うが、確信はない。さらに、訓練所で教えて見ていた際に変化があった。それは、前は(スピア)をよく使うと言っていたはずが、(アクス)に変わっていた。数日前から気になっていたことを話した。


「まぁ、虐めは何とか辞めさせます。アンネは普通にしていてください。大事(おおごと)にしないように頑張りますから。」


「ありがとう。いつも世話を焼かしちゃって…。」


「いえ、困っている人を見過ごす訳には行きません。」


 その後、ソルの見舞いに行くと、少しは治ってきた様だ。


「もう、ソルは食べすぎ‼」


「注意をよく聞かないから、(バチ)でも当たったのでしょう。」


「わ、わりィ…。」


 ソルは二人に謝る。けど、治って来ている事に二人は安心と嬉しさがあった。


「それに、今日はシーガ君も帰ってくる日でもあるし。寝込んだままで腹が痛いって小馬鹿にされるの嫌でしょ?」


「なっ‼そうに決まっているだろ⁈」


「うふふ。」


 ジェンは頬を赤くするソルが可愛いと感じ、クスクスと笑った。ソルは布団で顔を隠した。そして、彼に授業の事を分かりやすく伝えた。

 そのすぐ後に一〇三号室に戻り、アンケート収集を開始する。内容は魔導書か(ロッド)どちらか、好きな布の色を書いてもらうだけ。二人はそれぞれ集計や材料のシナリオをまとめる。

 そうしているうちにあっと言う間に夕方となり、夕食の時間となる。

 食堂で二人は美味しく食べていた。今日の夕食は二人とも同じ、うな重定食である。ナイツァノ王国産の(うなぎ)は、とても身が美味しいと評判である。(うなぎ)に染み込んでいるタレもナイツァノ王国独自の物。(うなぎ)を焼いている所を見たが、洋風とは違い炭で直火焼きにしていておいしそうだったのだ。さらに麦飯、野菜たっぷり味噌汁と栄養バランスよくとってある。


「おいしい‼」


「これ、ソルにも食べさせてあげたいですね。」


「確かに。絶対、食べたがるよ!」


「そうですね。」


『アハハハハ!』


 二人は笑い合った。その後、ソルに少なめのうな重を持っていくと喜んで食べていた。でも、よく噛んで食べていた為十分にお腹が腹八分目となった。そして、二人は部屋へ戻り風呂を済ませて横になる。


「明日は確か、第一壁(ファーストウォール)の見学の予定確認だよね?」


「はい。明後日が見学日となります。楽しみです。」


「うん。ふわぁ~…。」


「もう、そろそろ寝ましょうか。明日の為にも。」


「うん。おやすみなさい。」


 二人はそれぞれのベッドに入り睡眠へと入った。



 暗闇の中、アンネの正面にいる誰かが何かを言っている。それは徐々に聞き取れるようになっていき―


「お前はここで死ねぇ‼」


 正体不明の誰かが、ナイフを振りかざしてアンネに振り下ろして行く。



「……‼」


 アンネは勢いよく起き上がる。時計を見ると数時間後で、朝を迎える頃合いであった。早過ぎる様な気がしたが、彼女は普段着に着替え、(ロッド)を装備して部屋を出て、稽古を行う為に訓練所へ向かった。


 あんな夢を見たの…久しぶりだった。それにジェンも、一カ月に一回は同じ夢を見るって言っていたっけ?あれは、本当に辛いだろうね。でも、皆それぞれ辛い事もある。それから逃げちゃ駄目!諦めるな、アンネ。ちょっとやそっとで、()えない‼


 と思いながら、アンネは訓練所に着くと、(ロッド)の宝玉を桃色の三刃薙刀(さんばなぎなた)に変身させ、薙刀術と魔法を合わせた稽古に励んでいると、何かの気配を感じ稽古を止めて気配のする方へ目を向ける。


「……何者だ!」


 訓練所を覗く者がいた。アンネは何者か尋ねると、謎の人物は訓練所に降り立ち、姿を現す。それは、アンネに声を掛けていた集団のリーダーの女子であった。


「あら、もう気付くなんて。早いわね。」


「何の用があるの?」


「まったく、せっかちね。まぁ、教えてあげよっか。アンタを殺して、友人を捕まえに来たんだよ。」


「何ですって!」


「えい!」


 奴は、闇魔法弾(テネリス・ブーレット)を放つが、アンネは即座に光防御(ルークス・ディフェ)で攻撃を防ぎ、光刃(ルークス・ソード)を放つ。奴は、避けて言う。


「魔法に長けているな…。なら!」


 奴は今までにない強大な闇の魔力を貯め込み―


「死ねぇ‼」


 アンネへ、強大な闇の魔力は放たれる。彼女は「不味い」と思ったが、防御(ディフェ)を繰り出すのに一歩遅れてしまった。


 駄目!やられる!


 と思ったその時。光雨(ルークス・アグテ)がアンネの目の前に降り注ぎ、強大な魔力は破壊された。


「私の友人に手を出すとは、卑怯です。」


「ジェン!」


「間に合って良かったです。それよりも、やはり彼女は偽物でしたか。」


「偽物⁈」


 ジェンは、詳細を話す。ソルが腹痛で寝ていたのは半分嘘で、一〇六号室の様子を調べたのだ。何故か、他の部屋とは違い鍵がかかっており、ドアの隙間から闇の気配が漏れていたのだ。さらに下の隙間にあったのがアンネへの脅迫手紙である事。ソルはドアをこじ開け、縄で縛られていた少女を助けたと言う。


「なんて野蛮な‼」


「貴方の正体は、私が見破りました。姿を現してください。悪魔(デヴィル)‼」


 すると、少女の姿は跡形もなくなり悪魔の姿へと変わった。大きさは三mくらいで、爪は鋭い。それで攻撃を食らうと、たまったものではない。


悪魔(デヴィル)‼」


 (おぞ)ましい姿にアンネは驚く。ジェンは冷静になり、推測を言う。


「これはおそらく、呪術師によって召喚されたのでしょう。行けますか、アンネ?」


「うん。勿論!」


 二人は構えて、連携攻撃を行う。ジェンが先攻し、アンネが後攻を行って、光の魔法を用いた悪魔(デヴィル)に損傷を与える。そして、隙をついて両眼を二人同時に攻撃し視界を奪う。が、悪魔(デヴィル)は耳を立てる。と、その時!


「ジェン、危ない‼」


「うわぁっ‼」


 悪魔(デヴィル)の爪が彼女を直撃し、壁に打ち付けさせ、彼女の体に損傷を負わせる。アンネは、彼女の元へ駆けつける。


「ジェン!」


「大丈夫です。傷は深いですが、治癒(ヒール)の魔法で何とか……ぐはっ!」


 ジェンは、口から血を吐いてしまう。


「ジェン。ここは私に任せて!」


 アンネはジェンに怪我を負わせた怒りを出し、(ロッド)の宝玉を三刃薙刀(さんばなぎなた)に変身させ奴の正面に立ち構えて、こう言う。


「お前の周りに女子たちを従えていたのは、催眠術か?それとも、呪いの魔法か?私を陥れて、殺すために仕組んだんだろ?私が、あの名家の血の一部を引き継いでいるからか?本気で行かせてもらう‼」


 すると、ジェンのペンダントが青月長石(ブルームーンストーン)の輝きを放つ。同時にアンネの瞳は、瑠璃色の輝きが増して、背中には片翼一.五mの白き翼が生えた。

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