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少し待ってるとセージとその仲間がやってきた。
商人は居ないようだ。どこかで商売でもしてるのだろう。
「オッサン、待たせた……な……」
「オッサン言うな」
「プッ! オ、オッサン、何を装備してんだよ! ギャハハハハハハ!!」
「うるさいわ!」
「おじさん、可愛いね♪」
くそっ、やっぱり笑い者になった。
しょうがないじゃないか。まだチビなんだから。
こいつらの笑いが収まるのに10分もかかった……。
「あ~、腹痛ぇわ。久々にこんなに笑ったわ! おい、ザン、いい加減復活しろって」
「ツボったね、ザン♪」
そうなのだ。ザンは硬派なキャラでロールプレイしてるらしいので、笑ってる所を見られたく無いらしい。
だが、笑いたい。その葛藤で呼吸困難になってるのだ。アホか。
片膝付いてゼーゼー言ってるので困難な戦闘をしたように見えるが、ひたすら笑いを堪えただけなのだ。
「死ぬかと……思った」
「人の姿見てそれかよ! いっそ死ね!」
「まさか本当にHPが減るとは思わなかった……。恐ろしい精神攻撃だ」
「何が精神攻撃だ! 自爆だろうが!」
「まぁまぁオッサン、落ち着いて」
「オッサン言うな! ちっ、まあいい。で、何の用だ?」
「その前に説明してくれよ。それ、従魔か?」
「あぁ、従魔だ。ゴブリンに連れられてる所を保護した」
「オッサンが?! ウソくせー」
ウソじゃない。途中を端折っただけだ。
「虎も居るんだな。掲示板に書いておこう」
「虎も? じゃあ他にも居るのか?」
「あぁ。序盤で何かの赤ん坊が出るのは、5人に1人は遭遇するイベントだぜ」
「そうなのか」
「あぁ。まぁ大抵の人間がすぐに売却するけどな」
「なんでだ?」
「良い金になるからだよ。確かヘビの赤ん坊でも5000ゴールドだったはずだ。
虎の子供なら20000は軽く行くと思うぜ」
「ボーナスだね♪」
そんなに高いのか?!
売れば良い剣とか買えるじゃないか!
今から売るか……いてててて! 売らないから! 爪を立てるな! ゴメンって!
「それにな。育てるのには苦労するんだよ。
今一番育ってるので、まだレベル7って話だぜ。それでもまだ子供らしいからな」
「マジか……」
「その代わり、レベルアップで貰えるBPは高いって話だ。どうなんだ?」
「確かに。1つレベルが上っただけでBPが15も増えたな」
「やっぱりそうか。それ、多分だが、子供になると30くらい貰えるようになるぜ?」
「マジかよ!」
「マジマジ。無茶苦茶苦労するらしいけどな。
第一、持ってたら戦えないし。オッサンみたいにするやつは居ないぜ……ぷっ」
「笑うな! 後、オッサン言うな!」
「まぁ格好はともかく、良い方法なんじゃねぇか? 戦えてるだろ?」
「あぁ。頭は守らなきゃならないが、それは普通の戦闘でも当たり前の事だからな」
「そう言えば、猿の子供だったやつは背負ってるらしいわ。
子連れ冒険者って笑われてた」
確かにそれは笑うかもしれない。いや、人の事言えないか……。
「俺の事はいいんだよ。いや、貴重な情報だったけどさ。
それよりも何の用なんだよ」
「あぁ、悪い悪い。あのな、ログが来ただろ?」
「ログ? ……あぁ、何か来たな」
「興味無しかよ! そうだとは思ったけどな」
「何だったっけ?」
「武闘会開催のお知らせってやつだよ。オッサンは初心者部門に出場可能だろ?」
「そう言えば、そんな事が書いてあったと思うわ。で?」
「出ないのか?」
「出ないぞ?」
「結構な賞金や賞品が貰えるとしても?」
「あぁ、出ないな。時間のムダだ。その確認か?」
「そうだ。いやな、実は推薦ってのがあるんだよ」
そう言ってセージはニヤリと笑った。
嫌な予感しかしない……。
次話は明日投稿します。
その次は土曜日になると思います。




