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結局誰も目を合わせてくれなくて、一人ベンチで座っていた。
今の俺は背中が煤けてるに違いない。
「へへ。真っ白に燃え尽きたぜ……。真っ白な灰に……」
「あの~、ちょっと良いですか?」
「ん?」
「頭に乗せてるの、虎ですよね?」
「そうですけど?」
「やっぱり! 触って良いですか?!」
「ど、どうぞ……」
こちらが引く勢いで話しかけてきたのは、女性だった。
あっ、プレイヤーだ。
シロをひたすら撫ぜている。遠くから見れば、俺が撫ぜられているように見えるんじゃないだろうか?
シロもみーみー鳴いて楽しそう。
右手でじゃれついているようだ。左手は俺の頭に食い込んでるが。地味に痛い。
5分経ってから気づいた。頭から降ろせば良いって事に……。
今は俺の横に座っている女性の膝の上で遊んでいる。
俺と居る時よりも楽しそうだ。解せぬ。
丁度良いから、話を聞こう。
「この辺で、初心者でも狩りが出来る所ってありますか?」
「愚者の森ではダメなんですか?」
「……それ、どこです?」
「始まりの町に続く街道にある森ですよ。えっ? 知らないんですか?」
「始めたばかりでして」
「イベントは終わったんですよね? じゃあ……」
「あっ、イベントはやってないので」
「ええーーーーーーっ?!」
驚かれた。
聞けば、イベントを完了すると、レベルが10になるらしい。
逆に言えば、レベルが10以下だと、この町に来る事が出来ないそうだ。死に戻るので。
レベル5では無謀らしいわ。
「モンスター肉を投げて戦闘を回避ですか……。そんな方法が有ったんですね」
「偶然発見したんですけどね」
「それ、掲示板に載ってます?」
「さあ? 見ないので」
「ええーーーーーーーーっ?!」
掲示板を見ないくらいで驚くかね?
リアクションの大きい人だなぁ。
「それ、載せても良いですか?」
「良いですよ。でも、必要な情報ですか?」
「面倒な戦闘を回避出来るという点で、便利かもしれませんし」
「なるほど」
某RPGのトヘ○スみたいな物か。違うか。
どれくらいのレベルの敵にまで有効なのか判らないけど、知ってれば便利かもしれない。
おばあちゃんの知恵袋的な。
「それで、初心者でも狩りが出来る場所なんですけど」
「ああ、すみません。そうでしたね。
この町は東西南北に門があります。南門から来られたんですよね?
だったら西門の辺りが良いと思いますよ」
「出るモンスターは?」
「ツノウサギですね。始まりの町の街道左側に出るヤツです」
「あ~、アイツか~」
「あれっ? ダメですか?」
「いや、戦い方が判らなくて……」
「ええーーーーーーーっ?!」
そんなに驚く事じゃないでしょ?
シロもビックリして丸くなってるぞ。
「じゃあ、こうしましょう。
臨時でパーティーを組んで行ってみましょうよ。戦い方も教えますよ?」
「ありがたいですけど、良いんですか?」
「ええ。その代わりですね……」
「は、はい……」
「この子をモフらせてください!!」
あぁ、動物好きなんですね。モフラーでしたか。




