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手にある毛玉をじっと見る。
じっと見る。
じっと見る。
もぞ
うおっ! 動いた!
「みー、みー」
うおっ! 鳴いた!
どうやら毛玉ではなく、何かの赤ちゃんのようだ。
見た目は虎の赤ちゃんにも見えるが、猫かな?
だって、虎の赤ちゃんって大きさ的に、両手のひらに乗らないだろ?
猫の赤ちゃんは町内で見た事ある。このくらいのサイズだった。
ん? 待てよ?
これって従魔に出来るんじゃね?
おおっ! タイムリー!!
と言うか、商人の町に行った事で起きるイベントじゃないだろうか?
ゲームってそういうの多いじゃん? 一定の条件を満たすと行けなかった所に行けるようになるとか。
ただなぁ……。これ、赤ちゃんじゃん。
手の中でプルプル震えてるよ? みーみー鳴いてるし。
こいつが戦いのサポートが出来るようになるのに、どれだけ時間がかかるのよ?
それに従魔の枠は2匹までって聞いたし、これを従魔にしたら後1匹だけになる。
じゃあ見捨てるか? もしくは店に売る?
……すげー罪悪感がある!!
くそっ、これは運営の罠か?! 飼えと。育てろと。
待て待て。落ち着いて考えよう。
俺の指の吸っている猫は置いといて。
運営の罠っぽいけど、そもそもレベルが低い状態で商人の町に行ったのは俺だ。
もっとレベルが上がってから行く所なんだと思う。
そういう人は、赤ちゃんの従魔を拾っても問題無く育てられると思われる。
で、こういう場合、売っている従魔よりも高性能だったりするんだよな。
という事は、多分だが二度と入手出来ないと思われる。
初回ボーナスのようなものだ。
従魔にした方が圧倒的に良い事ってのは判る。
問題は育てられるのかって事。
自分を育てるのに精一杯だというのに?!
悩みながら、もう一度手元を見る。
猫は俺を見上げて、ぷるぷる震えながらみーみー鳴いてる。
よく見れば涙目じゃないか!
くっ! 卑怯だぞ! 見捨てられないじゃないか!
俺は動物好きなんだよーーーーーっ!
負けた。
俺は負けた。
運営に負けた。
ちくしょー、飼えば良いんだろ、飼えば!
それには従魔登録が必要だ……。おぅ、しっと! また商人の町に行かなきゃダメじゃないか。
も一度ダッシュかよ。何度も通用するとは思えないんだけどなぁ。
それに手に持ったまま走るってのもどうだろう。
ポーチには……当然入らない。別にカバンかなんかに入れて下げて歩くしか無いだろうな。
う~ん、しょうがない。困った時の商人だ。
連絡してみよう。もしかしたらあのパーティーが町まで行く用事があるかもしれないし。
そうなら便乗して行けば良い。
従魔の情報も持ってるかもしれないしね。
早速電話をしてみた……留守電かよ。
って事はログインしてないのか? もしくは電波の届かない所に居るか。
電波って何だよ! ゲーム内だから関係無いだろ!
う~ん、困ったな。
与えるならミルクだけど、持ってないし。
くそっ! 走りますよ! 頑張りますよ!
俺は右手にモンスター肉、左手に猫ってスタイルで走る事にした。
間違えて猫を投げないようにしないとな……。




