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このままではモグラの皮を持ったままログアウトする事になってしまう。
そうだ! 商人を呼ぼう。
本来なら防具に加工したいんだが、ナイフの交換条件だったからね。
確かフレンド登録とか言ってたよな。
連絡の仕方? ……聞かなかった。
どうしよう。こういう時はヘルプ君だ!
早速ヘルプ君を起動する。
えっと……どうやって調べるのかな?
ググる方法は無いのか! って考えたら入力する所が現れた。
虫眼鏡みたいなマークが付いてる。
で? 入力方法は? キーボードはどこですか?
おおっ?! 考えた事が表示される!
《「入力方法 キーボード」で検索した結果、該当しませんでした。》
知ってるよ! ってか今知ったよ! 考えると入力出来るんだろ?
再度「ググる」と考える。
するとまた虫眼鏡が出たので、今度は「フレンドに連絡」と考える。
《「フレンド 連絡」で検索した結果、1件該当しました。》
《フレンドに連絡をする方法。
ポーチに入っている携帯電話を利用しよう!》
ポーチに携帯電話?
そんな物、入ってないぞ?
もしかして、またチュートリアルをしないと貰えないパターンなのか?!
いやいや、待て待て。確か商人はフレンド登録したって言ってたぞ。
って事は、俺も持っていないとおかしい。
再度ポーチを調べると、横にチャックがありその中に入っていた……。
チャックって一般的にはファスナーって言うんだよね。
アメリカではジッパーだったかな?
で、チャックで巾着から来た言葉らしいね。
な~んて逃避してる場合か!
ポーチの横なんか知るか! こんな所に入ってるなんて絶対気づかないわ!
憤慨しつつ携帯電話を取り出す。
スマホか。何かアプリとか入ってるかと期待したが、電話帳しか入って無かった。
いや、「¥」マークがある。
タッチしてみると、便利なアプリが沢山表示された。
マップとか方位磁石とか良いね。
んん?! 「¥500」って書いてあるな……。課金かよ! 無し無し!!
さっさとアプリを終了し、電話帳を開く。
そこには、(^o^)だけがあった。
あぁ、思い出した。商人の名前は「笑顔」だったな。
判りづらいわ!
とにかく連絡しよう。
「はいは~い。コラムさん、どうしました?」
「買い取って貰いたいんですけど」
「おっ! 早速入手しましたか! 今、どこです?」
「会った所に居ますよ」
「こっちは今その町に向かってる所です。後30分くらいで到着しますけど、待たれますか?」
「そうですね。待ってます」
「判りました。では」
無事連絡出来た。
しかし、こうやって電話帳で見ると、登録数1件ってなんか悲しいな……。
リアルで友達が居ないみたいな感じがする。
まぁ、仕事後にまっすぐ帰り、ゲームしてるけどさ。
いや、友達がいない訳じゃないんだ!
ほら、40代にもなるとさ、皆結婚したり転勤したりでさ、なかなか会えなくなるんだよ。
俺は誰に言い訳をしているのだろうか?
そんな事を考えてると、30分経ったようだ。
通りの向こうから商人さんが歩いてきた。
おや、セージも一緒のようだね。
「お待たせ! ちょっと隣の町までクエストしに行っててね」
「セージとパーティーなんですか?」
「そうですよ。あれ、知りませんでした?」
「そういやぁ、言ってなかったかも」
「じゃあついでに紹介しますよ。
右に居るのが剣士のザン君、左に居るのが錬金術師のミャオさんです」
「よろしく、勇者殿」
「よろしくね、勇者さん♪」
「ちょっと待とうか。その勇者って何?!」
「えっ? 知らないの?」
「このオッサンはな、掲示板とか読まないんだよ」
「オッサン言うな。で、掲示板と何の関係が?」
「オッサン、一部の掲示板で有名だぜ?」
「はぁ?! 何で?!」
「そりゃ、モンスター肉を平気で食べるからだろ」
「誰がそんなの書き込んだ?!」
「えっ? 私ですが何か?」
「お前か~~~~!!」
このクソ商人め! やってくれたな!!
俺の知らない所で好き勝手やりやがって!!
「ちょっとちょっと! 私、掲示板に書くって言いましたよね?」
「はぁ?! いつよ?!」
「食べた時に言いましたよ? 何も言われなかったからOKなんだと思ってましたけど?」
「気持ち悪くて言えなかったんだよ! って言うか、それどころじゃ無かったわ!」
「そうなんですか? でも今更取り消せないし。諦めてください」
なんてこった! 頑張って消せよ!
大体、ラスボスを倒しに行くんだから、全員勇者だろうが!




