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予定通り19時にログイン。
ヤベぇな。満腹度が30%のままだよ。
HPやMPも回復してないし。
やっぱりログアウトじゃ回復してくれないのね。
ステータスを見ながら悩んでると、男性が近づいてきた。
筋肉隆々のいかにも戦士って風貌だ。
「コラムさんですか? セージさんの紹介で来た者ですけど」
「え~と、あっ、そうだ。そうです。俺がコラムです! 忘れてました!」
「……自分の名前を忘れないでくださいよ。しかもデフォルトなのに」
「いやぁ、名乗る事が少ないので……。で、貴方は?」
「おっとすみません。自分は『笑顔』と言います」
「笑顔さん……?」
「判りにくいですか? えっとこう書きます」
筆記用具を取り出して何かを書き出した。
そこには「(^o^)」と書いてある。顔文字かよ!
「掲示板とかにはこれで書き込んでますので」
「はぁ。そんなのも名前に出来るんですね」
「セージの言ってた通り、本当に何も知らないんですね!」
「良いじゃないですか!」
「いや、良いと思いますよ。楽しみ方は人それぞれだと」
おおっ! なかなか出来た人じゃないか。
そうだよね! 自由だよね! チュートリアルなんか要らないよね!
「買い物がしたいと聞きましたけど、詳しくは聞いてないんですよ。
何が入用でしょう?」
「その前に良いですか?」
「はい?」
「商人なんですか?」
「そうですよ?」
「その風貌で?」
「最初は戦士としてアバターを作ってたんですけどね。職業を選ぶ時に、商人も良いな~と思いまして。
リアルで物作るのが好きなので、本当は錬金術師とか鍛冶師が良かったんですけど、選択肢に無かったので」
「へ~、そうなんですか」
「商人も悪く無いですよ? 賢さと速さがUPしますので」
選んだ職業でステータスも変わるんだね。
そう言えば、前作もそうだったような気がする……。
「それで、何が入用なんです?」
「あっ、すみません。えっとですね、『剥取のナイフ』です」
「……チュートリアルでレベルアップと同時に貰えるやつですか?」
「多分それです」
「えっと、2つも必要ですか? もしかして壊れたとか?!」
「最初から持ってませんので」
「…………詳しく聞いても?」
俺は自分の事情を説明した。
って言うか、セージよ。伝えておいてくれれば良かったのに!
「チュートリアルをしない人なんて初めてです。驚きました」
「『楽しみ方は人それぞれ』ですから、問題無いでしょ?」
「いやぁ、さすがにそれはどうでしょう?」
「貴方が言ったんでしょ?! それで、ナイフはあるんですか?」
「えっ、ああ。『剥取のナイフ』ですよね。ありますよ。
どうせなら他の商品も見られますか?」
「見せて貰えるなら」
そう言うと笑顔さんは、背中に背負っていたリュックを降ろして中身を陳列しだした。
こんなログイン場所で店開いて良いのかな? 邪魔にならない?
並べられたのは、全部で6種類。
剥取のナイフ・モグラの皮・スライムの核・モグラ皮の胸当て・モグラ皮の膝当て・モンスター肉。
モグラの皮とスライムの核はドロップアイテムなんだろうな。
モグラ皮の胸当てとモグラ皮の膝当ては、ドロップアイテムを使って作った物だろう。
「モンスター肉ってなんです?」
「この辺りだと、モグラのドロップアイテムですね。まずいけど満腹度が少し回復します。
料理に使えるらしいですよ。1つ10ゴールドです」
「モグラの皮じゃないんですか?」
「それはレアドロップですよ」
弁当が買えない現状、これはありがたいな。まずいらしいけど。
それよりもまずはメインの値段交渉だね。
「じゃあ『剥取のナイフ』をください」
「はい。そうですね……セージさんの紹介なので、200ゴールドで良いですよ」
「……43ゴールドしか無いんですけど」
あっ、顔がひきつってる。
こんな所まで表現出来るなんて、VRって凄いな。




