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とにかく、ナイフは手に入れる事にしよう。
男女に礼を言って、町に戻った。
道具屋の前で待ってれば、誰か来るだろう。
その中で装備が良さそうな人に声をかけたら良いと考えてる。
なんせここは、始まりの町。良い装備なんか売ってない。
こんな町の道具屋に良い装備の人間が来るなら、それは課金で手に入れたと思われるからだ。
そういう人間ならナイフも買ってるだろ!
頼み込んで使ってないのを売ってもらおう!
って、3ゴールドしか無かった!! どうしよう!!
諦めてモグラ狩りに戻った。
倒しながら思う。ナイフがあれば、モグラからも何かアイテムが入手出来たのではないか?と。
くそっ! チュートリアルめ! いや、運営め!
町でナイフを売れよ!
結局20匹倒した所で町に帰る事にした。
日が暮れてきたからだ。
夜になったら違うモンスターが出て来るに違いない。
前作ではそうだったし。
手持ちは43ゴールドか……。
弁当も買えないわ。やっぱりスライム狩りにしないとな。
レベルも上げなきゃいけないし。
町に帰ると、ログアウトの場所にセージが立っていた。
今からログアウトかな?
「あっ! 帰ってきたか!」
「ん? 俺に用事なのか?」
「ああ。肝心な事を伝え忘れたからな」
「ええっ?! 何を忘れたんだよ!」
「モンスターを倒したら10秒の間に剥取のナイフを刺すとアイテムが出るぞ」
「知ってるわ! 今日人がやってるのを見たわ!」
「あっ、そうだったか。じゃあ良かった」
「良くないわ! ナイフが無いんだっつーの!」
「はぁ?! 何で……あっ、チュートリアルしてないからか。
しないと入手出来ないのね。初めて知ったわ」
「譲ってくれ!!」
「いやいや、俺も必要だし。
あっ、そうだ。俺の友人に商売してるやつが居るから、そいつに聞いてみろよ」
「商売してる?」
「あぁ。プレイヤーから買ってプレイヤーに売る」
「それって儲かるのか? 皆道具屋に売るだろ?」
「これだから、オッサンは。道具屋で売ってない物があるだろ?
と言うか、売ってない物の方が多いんだよ。例えばモグラの皮とか。
防具を作るのにモグラの皮が必要だけど、狩る以外手に入らないだろ?
そういうのを売買してるのさ。
買う方は、面倒な狩りをしなくても入手出来る。売る方は儲ける事が出来る。WINWINだろ?」
へ~、なるほどね。
上手い事考えてるなぁ。
って、モグラって皮を残すのか! しかもそれは防具の材料になるのか!
俺はどれだけ無駄にしたんだろう……。
「オッサン、明日は何時にログインする?」
「オッサン言うな。明日も19時かなぁ」
「判った。じゃあそれくらいの時間にここに来るように言っといてやるよ」
「良いのか?」
「アフターサービスだ。ま、頑張れや」
「おお。サンキューな」
良いヤツだな、セージ。感謝感謝。
明日にはナイフが入手出来るぜ!
しかし、43ゴールドで買えるのかね?
うん、そこは交渉しよう。
期待に夢を膨らませて、今日はログアウトした。




