無能
「おい、あれって‥‥」
「ああ、無能だろ?」
ヒソヒソ‥‥
うん、聞こえてるんだよ?お前ら、俺が好き好んで無能になったわけじゃない!
「おーい。カイくーん。」
「はぁ‥‥。」
もう一つの悩みの種がこれだ。
早苗はなんだかんだ言っても、美少女の部類だ。そんな彼女が無能の俺に馴れ馴れしく‥‥
あとは分かるだろ?安定の、妬みと嫉妬の視線ですよ、はい。
「どうしたの?カイくん。元気ないね。」
「はぁ‥‥そりゃあね‥‥勇者補正が掛かって当然の世界で、1人だけ掛かってないんだぜ?そりゃあ落ち込むよ‥‥」
「だ、大丈夫だよ!みんなの役に立てるよきっと!」
はい、慰めとフォローの言葉いただきました。こういう言葉が余計に人を落ち込ませるって言うことを自覚して欲しいもんだ。
「はいはい、もうすぐ、魔法の訓練じゃないのか?」
「あ!そうだった!じゃあね!カイくん!」
早苗は猛スピードで走り去ってしまった。
ドンガラガッシャーン
「すみません!すみません!」
‥‥アイツ、またやらかしたな?
早苗は、いわゆるドジっ子だ。まあ、ドジっ子だからこそ、守りたい衝動に駆られて、人気も上昇するんだろうが。
「おい、無能ぅ~。さっさと戦闘訓練行くぞぉ~。」
「‥‥はいはい。」
うん、何か、イジメにあってる人の気持ちがよく分かるね。分かりすぎて涙が出て来るよ。
そうして、俺は、戦闘術を習いに、足を運んでいくのだった。