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れぶなんと!!~ゾンビに転生してサバイバル~  作者:
失くしたものと取り戻したもの
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リベンジ

「エルヴィン、お前はガラトナム城に残って兵站管理をするんだ。スケルトンの増産も忘れるなよ」

「了解しました。将軍」

「サラ、マリベル、カイエン。お前たちはアシッド砦の奪還が主任務だ」

「分かったわ」

「まずは砦を奪うんだよね。成功したらどうする?」

「前と同じように冒険者を狩る。目減りしたレブナントは増やした方がいいからな」

「失敗したら逃げれば良いのだろう?」

「そうだな、エルヴィンに指揮は任せるけど、その場合は俺達も帰還して第一区画奪取に加わろう」


 再建の進むガラトナム城の司令室で、ユーゴが戦力配置の指揮をしている。

 ドワーフの国からユーゴ達が帰還する頃、季節は秋へと変わっていた。

 夜が長くなり、寒さはより厳しくなる。盆地のため周囲の山に日が隠れやすい腐れ谷は、ゾンビにとって活動しやすい絶好の土地だ。この季節を逃す訳にはいかない。

 未だ未知数ではあったがユーゴの戦力アップを果たし、クリスタルドラゴン装備を大量に仕入れたレブナント軍。彼らは今はまさに行動の時を迎えていた。


 人間達に奪われた第一区画の奪取には古株のレブナントであるマリベルとカイエンを中心に10数名のレブナントを派遣する。

 彼らはガラトナム城周辺の亜人討伐などを繰り返す事で、軒並み第三位階の平均には手が届くだけのプラーナを溜め込んでいた。もちろん全員がハイ・レブナントだ。

 連れて行く手勢の多くは人間ではなく亜人のゾンビ。人間の死体は少なくなることが予想されるため、奪ったあとの第一区画で冒険者を相手に使うまで取っておきたいとユーゴは考えていた。


 その間、他のレブナントも暇をしているわけではない。

 第二位階までのレブナントはガラトナム城周辺の警戒とプラーナ回収によるレベル上げに勤しんでもらう。

 そして肝心の主戦力は再び南を目指して、首都圏外縁都市であるマレタの攻略に挑むのであった。



■■■■■



「また挑戦するのはいいんだけどさ、なんでわざわざ第一区画を取り戻すのと平行で活動するの?

 戦力は集中したほうが良くない?」


 南へ向かう馬車の上でエクセレンがユーゴに訪ねた。

 今回の外縁都市マレタの攻略はモンスター退治の腕試しではなく、首都攻略の足掛かりとなる拠点作成のために行われる。そのための物資を運ぶために、今回は馬車を使っていた。移動にかかる時間も前より多い。

 エクセレンは何かを手元で作りながらその片手間で誰かに質問を繰り返していた。彼女は何かに集中しているとき、話しながら作業をする。この時の会話の内容はだいたい聞き流されて忘れられてしまうのだが、そのほうが集中できるとエクセレンが思っているなら、とユーゴはその会話に付き合っていた。

 ドワーフの国で起こった土産話のネタはすぐに底をついてしまい、話題はようやく現代に戻ってきていた。


「十の戦力で足りる作戦に百の戦力を注ぎ込むのは無駄になるだけだよ」

「でも戦力は使ったら摩耗するんだから、ユーゴが行って余裕をもたせればよかったんじゃない?」

「余裕をもたせすぎると、人間が来なくなる。それに、粛清隊が手出しできない奥地の開拓も早めに終わらせておく必要がある。時間は有限だからね」


 冬が来れば、冒険者の数が増える。

 農作業が出来ない冬といえば手工業が主だろうとユーゴは思っていたが、こちらの世界では雑魚モンスターや亜人の討伐任務で小銭を稼ぐ者も多いらしい。

 秋は農作物を狙う魔獣や亜人対策で冒険者が駆り出される事も多く、それらの仕事が一段落する冬は本業の冒険者も含めて各地に増え始める。

 その時が来る前に第一区画を取り戻し、冬の冒険者たちを確実にコントロールしたいとユーゴは思っていた。


「でもそれならどうして第三位階になれそうな奴らを送り出したの?もっと弱いやつを送り出した方がちょうどいいんじゃない?」

「それは砦を奪い返して、新しいレブナントを増やしてからで十分さ。ガラトナム城の補修にも人手はいるから、今はまだ無駄な犠牲を出したくない」


 なるほどねー、とエクセレンの質問はそこで終わった。

 同時に、彼女は会話しながら動かし続けていた手を止めている。

 完成したのか、とユーゴは話を切り替えたのだが。


「エクセレンは何を作ってるんだ?」

「内緒。リリアーヌからヒント貰ったんだけど、まだ実戦デビューしてないから」


 内緒と言われ、ユーゴは大人しく引き下がった。エクセレンは実験の大切さを分かっている。完成と言いきれないものは表に出さず、しっかりと検証を重ねているのだ。意外と言えば意外だが。

 研究や開発が好きな彼女だが、基本的には実用を考えたものしか彼女は考えない。

 心配しなくても、完成したら無駄にはならないだろうとユーゴは信じていた。


「将軍。そろそろ外縁都市が見えてきました」

「地下道と繋がっている廃屋があるから、地図にある場所を目指せ。まずはそこをベースキャンプにする」

「了解致しました」


 スケルトンホースに乗って斥候をしていたレブナントに偵察を命じ、拠点候補地の安全を確かめさせる。

 幸運なことにモンスターが住処にしている形跡もなく、近辺のモンスターの巡回範囲にもなっていないようだった。


「エクセレン、地図と地下の様子からプラーナサーキットを引けるか確認してくれるか」

「りょーかい。偵察に出すレブナントには必ず魔法使いを混ぜて、プラーナの状態を確認させてね」

「分かってる。そのために冒険者のようなパーティーを組ませたんだからな」


 拠点の屋根を補修し、魔法で接合を強化した扉をつけて簡易拠点を完成させる。最低限雨風を凌げる程度の拠点でしかないが、ここを安定させなければ今の自分たちは吹けば飛ぶような弱者だという事実を忘れないようにするにはピッタリの設えである。

 都市攻略の準備を終わらせたユーゴ達は一晩を拠点で過ごした。敵に襲われたときに自衛できるかを試すためだ。

 幸いなことに襲撃は散発的で部下だけで夜を明かすことができ、前回リリアーヌに嵌められたときのように敵が連鎖的に引き寄せられることも無かった。


 翌朝から本格的に都市攻略戦が始まった。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんというか、「借り物の体」に「作り物の腕」って言う、あまり“なろう”らしくない主人公に新鮮さを感じてしまいますね〜 まぁ、主人公腐ってますから、その言い方だと齟齬が生じそうですけどね、、、…
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