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悪鬼の帰還

 その後もリリアーヌと色々な情報をやり取りしたユーゴ達は、餞別を貰ってアシッド砦に帰還する途に就いていた。

 当初の目的は果たせなかったが、その代わりに得られたものも大きい。

 ゾンビ達を新たなスケルトンの素材としてリリアーヌに引き渡した代わりに、彼女から貰い受けた50のスケルトン。

 そしてその先頭を行くレブナント達が跨る、骨の馬(スケルトンホース)が物で直接的に支払われた餞別だ。


「乗り心地は悪くないけど、専用の鞍が欲しいなぁ」

「……骨の上に座るのはきついわね。感覚を無くせば問題はないけれど」


 ユーゴは馬の上でしっかり体を保ちながら、サラは不安定に体を左右に揺らされながらもバランスを保ちつつ、馬を操っている。

 この二人はまともに馬を操り、多少は走らせることが出来たが、他の者達は馬から落ちないようにするのが精一杯といった様子だ。


 異世界だからみんなあっさり乗りこなせるものかとユーゴは思っていたのだがそれは勘違いだった。冒険者の中で乗馬のスキルを持っている人間は稀だったのだ。馬は所有するだけで金がかかる。ため、その日暮らしの根無し草がおいそれと手を付けられるものではなかった。

 遠出する際は近くの町村まで馬車に相乗りさせてもらうのが普通で、砦に戻るまでの数日をかけてレブナント達はなんとか馬から振り落とされないよう訓練しながらゆったりと帰路を進んでいたのだった。


 幸いだったのは、レブナントは手綱以外でも馬を操れたということ。

 秘訣は"念話"だ。

 ゾンビや動物達に指示を与えるように、直接頭の中に指示を出せば、馬は自分から上手に動いてくれた。

 顔の肉がなければ表情も見えないのだが、念話で意思のやり取りをしていると可愛く見えてくるから不思議なものだ。

 だが、可愛がっているばかりではいられない。

 なぜなら、この馬達は、戦争のために借り受けたものだからだ。




 リリアーヌは南進以外の進路をユーゴ達に示した。

 彼女が根城にしている城は「セレーヌ城」と言うらしい。あの城が古の美姫に送られた専用の城だったという逸話があるそうだが、その話はまた今度ということで退散してきたので、それ以上の情報は無かった。


 ともあれその城から南は東西に走る山脈のせいで、空を飛べない生き物が超えるには峻険すぎるらしい。つまり、もしセレーヌ城とリリアーヌを攻略できていたとしても、更なるプラーナを求めて腐れ谷の中央に向かうというユーゴ達の道程は途切れていたということだ。

 ユーゴ達の砦から中央に向かうには、東の空白地帯を抜けて北部中央から、谷を下っていくしかないらしい。考えるまでもなく、この情報こそが今回リリアーヌから与えられた情報の中で最重要であった。

 しかも最近まで空白地帯だったその通り道には、"蛮族王"と名乗っている亜人が居着いたらしい。

 うますぎる話ではあったが、セレーヌ城の窓からは確かに東西にわたる巨大な山脈を見ることが出来た。地形の情報に嘘はなく、いったん信じてみようとサラと結論を出したのだった。


「しかし亜人かぁ。俺たちのいる地域だと見たこと無いよな?」

「ゾンビにとっては、相手が生きていれば人間の肉も亜人の肉も関係ないのだから、住み着きたくないのは当然でしょう」


 この世界では、亜人というのは人間と同じように、二本の足と二本の腕を持った、別種の生命体を指す。

 人間に友好的な亜人はエルフやドワーフが。反対に敵対的な亜人はオークやゴブリンがいる。そしてこの敵対的な亜人を、蔑称として"蛮族"と呼ぶそうだ。


 その蔑称をあえて用いて蛮族"王"と名乗っているとは、大した玉だとユーゴは笑っていたが、他の冒険者達はその笑いには釣られてくれなかった。


「蛮族王の存在は、ラトナムの冒険者の間では有名でしたよ。名うての冒険者達がたくさん挑んでいきましたけど、彼らの"軍勢"の前では無力だったそうです」

「蛮族の繁殖速度は異常ですから、間引きするための依頼は受けたことがありますけど……」


 つまるところ、人間たちでも倒しきれないような存在だということらしい。

 蛮族王は各地のゴブリンやらオークやらオーガやらの亜人を集めて一大勢力を興し、腐れ谷の各所や隣国へとちょっかいをかけつつ、徐々に基盤を広げているそうだから、確かに十人に満たない冒険者のパーティーでは太刀打ち出来ないのもムリはないだろう。

 だが、ユーゴが率いているのもまたパーティーではなく、一つの軍勢である。

 そして、魔剣の存在もある。

 やってやれないことはないだろうと前向きになっていたのだが、彼に話しかけるサラの顔色は浮かなかった。


「結局、彼女の言い分を飲んで、東に進むの?」

「南の山脈に竜が住んでて、突破は難しい。って話が本当かは分からないけど、そもそもリリアーヌの城を奪うのも難しそうだろ」

「……まぁ、気に喰わないけれど、ヴァンパイアよりはゴブリンの群れの方がマシかしら」


 冒険者にとってはゴブリン討伐は誰もが通る通過儀礼のようだ。そこはユーゴの前世の知識とも齟齬がなかった。むしろ人間だったころの心地に戻るのか、全員が積極的に亜人討伐を賛成してくれた。

 この様子なら、砦に残っているレブナント達も賛同してくれるだろう。賛同しなかったところでエクセレンに無理やり命令させて納得させるだけなのだが。


 ゴブリンはいったいどんな習性を持っているのか。

 有効な戦術や、レブナントとしてどう立ち向かっていこうか。

 ぼんやりと未来図を思い描きながらアシッド砦へと帰り着いたユーゴ達が目にしたのは、人影に囲まれて炎上する砦(我が家)だった。



◆◆◆ 



 砦が燃えている。

 その事実を認識した瞬間、部下のレブナント達は不慣れな馬を走らせて駆けつけようと骨馬に念を発していたが、ユーゴの強烈な念波がそれら全てをかき消していた。


『止まれ』


 レブナントを含む全軍がぴたりと停止した。

 焦る気持ちはユーゴにもあったが、彼は退路を確認しつつ、サラに偵察を命じた。


『砦を襲っている敵の正体を確認してきてくれ。陥落済みなのか、耐えているのかも』

『馬は借りて行くわよ』

『もちろんだ。危険なら逃げろ』


 馬を乗りこなせていない他のレブナントには、馬をそこらの家屋の中に隠すように命じて、ユーゴは砦から上がる炎をじっと睨みつけていた。

 まさか、夏を前にしてまたも粛清隊が攻めてきたのだろうかと不安が募る。

 いざとなればこのままリリアーヌの居城まで撤退することも視野にいれはじめたユーゴだったが、サラからの報告はすぐに返ってきた。


『ユーゴ、敵は人間じゃないわ。亜人よ』

『マジか。先手を打たれたってのか?』

『戦略的な意図があるかは分からないけど、敵の主要兵力はゴブリンがたくさんとオーガが数匹』


 たくさん、という報告にはげんなりさせられたが、他のレブナント達はその報告を聞いて胸をなでおろしていた。

 つまり、なんとか相手にできる範疇だということだ。


『砦は陥落してるのか?』

『エクセレンと連絡が取れた。まだ大丈夫みたいだけど、油を投げ込まれて炎上してるから、ほとんど防衛が出来てないらしいわ』


 ゾンビに熱は厳禁だ。

 燃えたぎる通路は、消火のために近づくのも一苦労に違いない。

 だが、まだ生きているのならば希望はあった。


『……俺達が遊撃隊になって、砦の外を制圧するぞ』

『賛成よ。皆もいいわね?』


 次々と諾の返事が集まる。

 そうなれば後は行動するだけだった。


『サラ、敵はどっちに集中してる?』

『東の裏門の方が多い。西の正門の方が手薄らしいわ』

『そりゃ東から来てるならそうなるわな。サラはレブナントと、スケルトンの半数を連れて西門を落としてくれ』

『あなたは?』

『裏門の前に集まってる奴らは、俺がぶっ殺してくる』


 スケルトンの半数に自分についてくるよう指示を与えると、サラの返事も聞かずにユーゴは骨馬を駆って飛び出していった。



◆◆◆



 骨が石畳を叩き、甲高い疾走音を鳴らす。怒号の飛び交う戦場をユーゴは駆けた。

 砦の外に並ぶ無数の亜人は二種類だ。

 身長三メートルほどの巨体を誇るオーガと、一メートルちょいくらいの小鬼と呼ばれるゴブリンだ。

 オーガは低い地響きのような唸り声を上げ、ゴブリンはギャアギャアと甲高い鳴き声をあげている。

 だが、悲鳴は一つも上がらない。

 斬りつけられた亜人は全て、黒い霧へと溶けたからだ。


「そぉら!さっさと逃げねぇと全員溶けちまうぜ!」


 亜人の話す言語は人間の言語とは違うらしいが、プラーナを通して話者の意思や意図を理解するレブナントにとって、言語差は意味をなさない。

 ユーゴは魔剣の効果を見せつけて、言葉でも丁寧に説明してやっていた。

 更に念話を飛ばして、周囲の亜人全てに聞こえるように言い放つ。


 逃げねば死ぬぞ。

 触れれば死ぬぞ。


 骨馬もスケルトンも見るのは初めてなのだろう。まぁユーゴ自身も初めてだったが。

 ユーゴを地獄から蘇ってきた悪魔の騎士だと勘違いしたゴブリン達は、既に逃げ腰だ。

 だが、それでも彼らは後退しなかった。

 その理由は、上から戦場を眺めていたエクセレンが教えてくれた。


『ユーゴ、ゴブリンはオーガが居る限り絶対に逃げない!』

『そうなのか?』

『逃げたら一族郎党殺されるからね~』


 なるほど、と頷いたユーゴだが、足元に群がってくるゴブリンの顔はどれもおなじに見える。

 コレを見分けて一族郎党を始末することが果たして出来るのか、と思ったがそれは今考えることではなかった。


『……それじゃ、あのオーガを殺ればいいってことか』

『まかせた!』

『任された!』


 近づいてきたゴブリンの首を刎ね、宙に舞った生首を剣の腹をラケット代わりにしてぶっ叩いた。

 テニスの要領で飛んだ生首が、後方でゴブリンをどやしつけるオーガに命中する。


「おい、お前が直接来いよ、"木偶の坊"」


 この世界で言う所の"デカイだけの役立たず"という言葉に正しく変換され、相手へと伝わった。

 数十隊のゴブリンを率いていたオーガのリーダーが、腰の剣を引き抜き、ゴブリンの列を割ってユーゴへと歩み寄っていく。

 日頃から酷使されていて殺意を抱いていても、リーダーが戦うのならば雄叫びを上げて応援するのが亜人の常だ。


 亜人以外の声は何一つ通らないようなその地獄の中で、ユーゴも馬に乗ったままオーガへと近づいていく。

 徐々に加速して走りだした二人が交錯した瞬間、勝負は一合で決した。馬の加速を乗せた一振りでオーガの剣を弾いたユーゴは、手首をくるりと返してオーガの肉体へ軽く剣を差し込んだのだ。

 オーがの巨体が一瞬にして消滅し、後には霧だけが残った。黒い霧が。

 わずか一合打ち合うことも出来ずに大将が死んだ。ゴブリン達の混乱はいかほどだっただろうか。

 だが、ユーゴ達に油断はなかった。


 瞬間、砦の上から無数の火矢が放たれたのだ。あまりにもベストなタイミングの火矢に感心したが、エクセレンの喝采は聞こえない。


(エクセレンなら自慢してくるところだけど……他に指揮をとってる奴がいるのか?)


 彼女が指揮に目覚めたのか。他の誰かなのか。

 ともあれ、新しい才能の出現だ。ワクワクしながら、ユーゴは馬をジャンプさせ、屋根の上を走り始めた。


 敵の居ない屋根の上を全力で駆け抜ければ、自然と敵の注目をあつめる。

 じわじわと後ろから進ませているスケルトンから目をそらさせるように、ユーゴは屋根の上を走り回り、そこから魔法をバラまいていった。

 火矢、氷の雨、風の弾丸、土の鎚。

 どこに撃ちだしても、必ず何かにあたるような状況だ。


「さぁ、このまま全滅させてほしいか!大将がいるならさっさと出てこい!!」

 

 念話を飛ばして挑発するが、オーガ以上のモンスターは全く顔を見せない。

 辺りを見回してもそれ以上の大きさの亜人はいない。であれば、どれかのオーガが大将のはずだとユーゴは踏んでいた。


「そっちが出てこないなら炙りだすだけだ……。こっちの世界に"爆発"の魔法はないらしいけど、これならどうかな?」


 剣を持っていない空いた左手を天に掲げると、手をぐるぐると振り回し始める。

 ボケっと屋根上のユーゴを見上げていたゴブリンは、見上げたまま消滅していた。

 それに気づいたのは遠くから戦場を見据えていた別部隊である。


 ゴブリン達を燃やしていた炎が、蛇となって動き出したのだ。

 数メートルの巨大な蛇の口がゴブリンを次々と飲み込み、燃やし、更に巨大に膨れ上がっていく。もはやゴブリン達の混乱は頂点に達していた。

 彼らはオーガの指揮を無視して、逃走を始めたのだ。


 オーガはゴブリンを引き留めようとしたが、オーガの拳よりも恐ろしい物が目の前に迫っているのだ。立ち止まっていたのは怯えて竦むだけのゴブリンと、怒り狂ったオーガが五体だけである。

 ユーゴはそれらの姿をしっかりと見つけていた。


 3メートルの巨体が五匹。

 威圧感は恐るべきものがあったが、魔剣の敵ではなかった。

 ユーゴは襲いかかってきたオーガのうち、4体を魔剣の能力で霧へと変え、斬殺した。


 残る一体は力づくである。

 オーガ・スケルトンとの打ち合いで、オーガのパワーや間合い、体の動かし方は大体分かっていた。

 そもそも、膂力だけで相手を押しつぶすオーガは、自分と同じパワーを持った敵と戦った経験など殆ど無い。

 ユーゴはオーガが振り下ろした鉄の金棒を横から打ち付けて軌道を反らし、返す一太刀でオーガの心臓を突き貫いた。


 周囲のゴブリンが、法螺を吹き鳴らし、ネズミが逃げていくように一斉に引き上げ始める。

 手近なゴブリンの首根っこを掴みあげて、ユーゴは聞いた。


「これでお前らの部隊長は全員死んだのか?」

「に、ニンゲンがおれたちのコトバを!?」

「いいから答えろ。代わりはいくらでもいるんだぞ」

「そ、そのトオリだ!もうオワった!」


 オーケイ。と呟いてユーゴはゴブリンを遠くへ放った。

 仲間に受け止められて運ばれ、先ほどのゴブリンもすぐに粒のような大きさになって見えなくなった。


 すれ違ったゴブリンを適当になぎ払いながら、ユーゴはこの肉体の強さを改めて実感していた。

 強いどころではない。元の世界ではおそらく到達出来ないレベルの強度にこの肉体は達している。

 その源はプラーナだ。

 この力を極めた先に、"進みし者"の高みがある。

 何者にも害されず、生きるために。

 周囲に霧散したゴブリン達のプラーナを取り込みつつ、ユーゴは逃げ去っていくゴブリン達の背中を睨んだ。


「……乗せられてるみたいで気分はよくないけど、亜人狩りも悪くないな」

『なんか言った?あ、サラが帰ってきたよー』


 ボロボロだったくせに陽気なエクセレンには後で説教をしないとと思ったユーゴだったが、それよりも先に話すことがある。


『戻ったら話す。あと、途中で火矢の援護をした奴を連れて来てくれ』

『りょ~かい!』


 大体察しはついていたが、ユーゴは頭のなかに戦略図を描きながら、砦へと帰還した。



◆◆◆



 砦の外周を南側から反時計周りにぐるっと回ったユーゴは、西の正門から帰還した。

 待ち構えていたエクセレンはユーゴそっちのけで馬のスケルトンをしげしげと眺めていたが、ユーゴもエクセレンは無視して彼女の横に立つ少年を観察していた。

 エクセレンに死霊術師候補として与えたレブナントの少年、エルヴィンだ。


「他の者からも後で話を聞くが、君が指示を出していたんだな?」


 ユーゴが話かけると、エルヴィンは丁寧なお辞儀を返した。


「はい。僭越ながら、エクセレン様のお手伝いをさせていただきました」

「いやいや、お手伝いなんてレベルじゃなかったよ~」

「……エクセレン、お前は後でみっちり戦術を仕込んでやるから覚悟しておけよ」

「げっ!?いや~、あたしはスケルトンを組み立てる魔法の解析をしないとだから……」


 じゃあね!とスケルトンや骨馬を連れて、エクセレンはその場からさっと逃げ出していった。

 その様子を見てエルヴィンは苦笑し、サラは「捕まえてくるわ」といい笑顔をしていた。

 さすがにユーゴも庇ってやる義理はなかったので、よろしく頼むとサラを送り出した。


 残ったのはエルヴィンとユーゴの二人だ。

 念話を使えるレブナントは、秘密の話をするのに個室を使う必要がない。

 レブナント達が消火や修復作業へ移る様子を眺めながら、ユーゴはエルヴィンに念話を送った。


『人間の世界では、戦術を習えるのは一部の人間らしいな』


 レブナント達の間で、ユーゴは"ゾンビ上がりの生粋のレブナント"ということになっている。

 異世界から来たと知っているのはサラとエクセレンだけだ。

 エルヴィンもそのような情報を持っていたのだろう。ユーゴが人間の世界の常識を知らない前提で答えた。


『はい。僕は貴族の四男坊でした。魔法の才を評価され、世間を学ぶために冒険者をしていました』

『……"素直に答えてほしい"。君は人間の世界に帰りたいか?』


 死霊術としての命令だ。逆らうことは出来ないし、相手が魔法使いであれば命令されて自分のプラーナ・コアが操作されたことにも気づかれてしまう。

 だから、質問は常に単刀直入であることをユーゴは心がけていた。

 おためごかしは必要ない。

 ユーゴ達は自分たちのしていることが悪であり、傲慢であることを知っている。

 ここに居る仲間は、みんなそれを自覚してもレブナントであることを選んだ共犯者だ。


 だが、この少年は違う。

 ネクロマンサーの才能を持った少年をみすみす逃すことは出来ない。

 普段なら、レブナントになることに忌避感を覚えた冒険者はそのまま始末しているが、エクセレンはそうしなかった。

 エルヴィンには選択肢は無かったのだ。


(だから、この少年は危険だ)


 反抗心を抱えた人間を内に抱える危険は、身を持って知っている。しかもこの少年の賢さは抜群に優れている。

 粛清隊のリィンを仲間にしたときは気が引けて出来なかったが、あの過ちを繰り返すつもりはなかった。


『人間の世界に未練はありません。ユーゴ様に逆らうつもりもないです』


 エルヴィンの本心からの回答に、ユーゴは安堵の溜息をついた。

 だが、一つだけ気になったことがあった。


『様づけはしないでもいいんだぜ』

『そうですか……』


 レブナントを管理するために死霊術で縛ってはいるが、基本的に彼らは自由に動かされている。

 叛意されなければ、彼らは同じパーティーを組む仲間だとユーゴは思っていたからだ。

 だが、深呼吸をしてからユーゴを睨みあげたエルヴィンの次の一言で、ユーゴは先程吐いた溜息を飲み込むことになる。


『……であれば、僕は謀反を考えるかもしれません』


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