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一書店の言霊師  作者: 手羽先すずめ
第三章 飛んで火にいる夏の虫
14/24

水の術


 四月一日蜻蛉に御札を渡して火男の情報を提供した後、彼にはその御札が無くなったらまた来いと言って家に帰らせた。同時に、日も暮れてきたので唯名と浮夜の二人も同じように帰宅させ、ここ一書店には俺一人だけとなった。


 誰もいなくなり閑散とした店内を横断して、動かす度に喧しい音を響かせる硝子障子を閉めて鍵をかけ、カーテンで店内を隠蔽した俺は直ぐに明かりをつけてカウンターに向かう。


 事あるごとに軋む椅子に腰掛けて頬杖をつくと、大きく息を吐いて言霊師の御業を使い、数多ある本から文字だけを抜き出して空中に引っ張り出す。その文字の羅列たちが綴るのは勿論、火男に関する記述だ。


 火男の知識は頭に入っているが、それでも改めて確認だ。


「しかし、妙だな」


 目の前を横切って行く文字の羅列を目で追いながら、今回の件についての不可解な点を考察する。


「物を買い過ぎたとかで例えワンコインでも工面できない状況は、まぁ考え難いが絶対にないということもないだろう。もしかしたら盗みに入られたのかも知れない。そこはいい、そこはなんとでも納得できる。だが、ならなんで油が用意できないと知っていて、あいつらに頼らなかった?」


 曲がりなりにも人間社会で生きているんだ。そんな妖怪があいつらの存在を知らない訳も、あいつらの役割を知らない訳もないだろうに。どうして火男はあいつらを、陰陽師の連中を頼らなかった? 頼ればある程度の補助を受けられるし、油くらいなら必要なだけ恵んでもらえるはずだ。


 なのにどうしてだ? なにか陰陽師を頼れない理由でもあったのか? あの火男には。


「もう日が暮れる時間だな。……何がなんだか分かったもんじゃあないが、とりあえず探しに行くとするか」


 火男についての記述に一通り目を通した俺は、文字の羅列たちを元の本に戻して腰を上げる。


 その足で店内を渡り歩いてカーテンを開け放つと、夕暮れに赤く染まっていた景観は黒く塗り潰されていた。今宵は月の光も星の輝きも心許ない、心強いのは羽虫が集う街灯だけだった。


「いきなりテンションだだ下がりだなぁ、おい」


 出来ることならこのまま引き篭もって晩御飯を作りたい。今晩は味噌と砂糖とピーマンを焼いて作った、名前があるのか無いのか分からないご飯の友を作るつもりだったんだ。


 でも、行かなくちゃあならないんだよな。四月一日蜻蛉がまた襲われたりしないように、また誰かが火男に追い掛け回されたりしないように、火男に話をつけに行かなくちゃあならない。


 あーやだやだ、自分の性格が嫌になるな、まったく。陰陽師の野郎共に連絡一本すればそれで事足りるっていうのに、わざわざ自分から首を突っ込んで行くなんてつくづくバカな性格だ。一銭の得にもならないって言うのにな。


「まぁ、いいや。うだうだしてても始まらない」


 硝子障子の鍵を解き、俺は外へと踏み出した。



 誰かと話を付けに行くという状況下において、事前に相手の好物を持って行くのはなかなかの上策だ。それは人間も異形の者も変わらない。狐に油揚げ、猫にまたたび、鴨に葱、火に油、意味合いは多少違えど似たようなもんだ。


 という訳で、俺は夜道を生首をひっさげることもなく、徒歩で近くにあるスーパーへと足を運んだのだった。


 自転車を使わないのは、単にパンクが怖いからだ。自転車を使うときは、それなりに急を要するとき、例えばこの前の浮夜のような状況にあるときだけと決めている。


 悠長なことを言っているようだが、パンクの修理にも金が掛かる。あんまり金だ金だと言いたくはないけれど、実際問題それを無視することは出来ない。命あっての物種なんだ、少なくとも自転車の修理代くらいまともに払えるくらい生活が安定するまでは、このスタイルを貫くつもりだ。


「とはいえ、この出費も出来ることならしたくないんだよな」


 スーパーの入り口ほど近くに設けられた商品陳列棚の前で、手に取った食用油の値札に軽く眉をひそませながら呟く。


 この食用油を買う金でインスタントラーメンが買えるだよなぁ。そのことを考えると、どうにかしなくちゃあならないことだから避けて通れないことだと分かってはいても、なんだか遣る瀬無い気分になる。このところ、慢性的な空腹に苛まれていることだしな。


「いやいやいや、これも必要経費だ。ぐちぐち文句ばかり言っていると救えるものも救えなくなるぞ」


 自分を叱咤して気持ちに踏ん切りを付けると、俺は爪先をレジに向け食用油の会計を済ませる。


 ぶつくさ独り言を呟く俺を、周りに居た人たちが気味悪がっていたのは余談である。


「あっ、にのまえさんじゃねーか」


 潔く買うものを買って、さぁ火男のいるところに向かおうかとレジ袋を引っ提げて自動ドアを抜けた矢先のことだった。そういって声をかけてきた四月一日蜻蛉と再び邂逅したのは。


「よう。あんな目にあったのに、もう夜遊びだなんて根性あるじゃあないか。あれから家に帰ってないのか?」


「まーな。あれしきのことでビビっちまうようじゃ、不良なんてやってられねーよ」


 自分が不良であることは自覚してるのな。


「そうか、でも夜遊びもほどほどにしとけよ。油断してるとまたうっかり遭遇するかも知れないぞ、得体の知れない奴にな」


「おっ、脅かすなよ」


「脅かしてなんてないさ。だが、夜ってのは色んな意味でまんべんなく危険だ。この世界には夜行性の生物やら生物じゃあない奴らがわんさか居るからな」


 あぁは言ったが、やはり脅かしていたのかも知れない。間違っても四月一日蜻蛉が俺の後を付いて来ないようにという、しなくてもいい心配を揉み消すように。


「まぁ、そう言うことだ。御札があるうちは滅多なことにはならないだろうが、それだって絶対じゃあない。もう安全だと高を括って藪をつついて蛇を出す、なんてことにならないよう早めに家に帰るんだな。

じゃあ」


 大雑把に話を切り上げて逃げるように四月一日蜻蛉に背を向ける。


 去り際に意識しなくともはっきりと認識させられる視線が背中を貫くが、それでも立ち止まることなく、振り返ることなく、突き進む。不自然な行動だったかも知れない、不信感を覚えさせる振る舞いだったかも知れない。


 けれど、警告は確かに出来た筈だ。お前には関係ない付いて来るなと、そう伝わった筈だ。


 まぁ、隠し事があるが故の過剰なものの考えかも知れないがな。本当は視線なんか俺の勘違いで、四月一日蜻蛉は何も思っちゃあいないのかも。前言を撤回するようでなんだが、警告も伝わっていないかもな。


 まぁ、それはそれで、それに越した事はないか。さっさと火男を見つけ出すとするかな。



 この広い街で油が足りずに火が体外に溢れ、身を隠しているであろう火男を捜すのは通常なら相当骨が折れる作業だろう。まさか道行く人々に話しかけて、この辺で妙に体温の高い、居るだけで気温が上昇するような男性を見掛けませんでしたか? なんて聞けるはずも無い。


 聞けても腹の出た肥満体型の男を紹介されるだけだ。


 人に尋ねられないのなら、もう自分の足で色々なところを廻って捜すしかない。だが、それじゃああまりにも闇雲だ、いったい何時間かかるか分かったものじゃあない。


 という訳で、俺は四月一日蜻蛉の前から姿を消した後、誰にも見られないようにして御業を使ったのだった。


「持ってて良かった漢字辞書」


 受験生でも持ち歩かないであろう、分厚い漢字辞書をどこからともなく取り出してページを開く。


 漢字辞書なんて邪魔になるものを、常日頃から無地の黒シャツとありがちなジーパンくらいしか着用しないズボラな俺がどうやって持ち運んでいたのかと言うと、まぁそれは言霊師の成せる業だと思っておいて欲しい。


 流石に漢字辞書を片手に人通りの多い道を練り歩くほど変人奇人じゃあないからな、俺は。


「どれにしようかな。まぁ、シンプルに行くか。シンプルイズベストっていうしな」


 漢字辞書から抜き出した捜の文字を御業を用いて使用し、今現在において火男が立っている位置を特定にかかる。


「えーっと……、こっちか。なんともまぁ、ものの見事に人気のない方角を差してくれるな」


 人差し指の爪に貼り付けた捜の文字に導かれるように指示された方角。その先を暫く進んで行けば工業地帯が顔を覗かせる。何を作っているのかも定かじゃあない工場がたくさん建ち並び、同時にある程度の廃工場が壊されることもなく放置されている。


 隠れるには持って来いの場所だった。その上、上手く行けば油も手に入るって寸法だ。ただ何年も放置された廃工場に置いてある油なんて、火男でも飲めたものじゃあないだろうがな。


「行くか、なんとか穏便に事が済めば良いんだけれどな」


 羽虫が集う街灯と自分の指先を道しるべにして、漢字辞書を片手に夜道を歩く。


 そうして辿り着いたのは、工業地帯の隅も隅にある一つの廃工場だった。当然あたりに人影はなく、また夜だからかゲームセンターと同じくらい五月蝿いはずの機械音もせず。まるで耳が聞えなくなったのかと思うくらいの静寂に包まれている。


「此処だな。もうこれも必要なしっと」


 人差し指の爪に貼り付けた捜の文字を剥がし、漢字辞書の元あるべき場所に戻す。


 踏み込む前に再度心の準備を改めて、錆付いた鉄扉を重々しく、けれど勢いよく開け放つ。堂々とした盗人のように入り込んだ廃工場の内部は当然のように真っ暗で、小さな窓から射す月光が局地的な部分だけを照らし出していた。


「おーい、誰かいないかー?」


 暗闇のなかに言葉を投げ掛ける。が、少し待っても返答はなし。どうやら素直に人前に出てくる様子はないらしい。


「ま、出て来るわけないよな。俺が何者にせよ」


 御業を用いて漢字辞書から光の文字を抜き出すと、そのまま天井に向けて浮かべ効力を発揮させる。すると、明かりといえば窓から射す頼りない月光だけだったこの真っ暗な空間に、時間が吹っ飛んだかのような昼の日差しが訪れる。


 光の文字は暗闇を吹き飛ばした。


「おーおー、はっきり見えて良いなー。相変わらず、誰の姿もみえないが」


 明かりによって露になったこのエリアは、かつては大きな機械や小さな機械がひしめき合い駆動していたであろう広く空けた空間だった。残念ながら機械類は総て撤去されていて、全盛期だった頃の面影をみることは出来ない。


 あるのは地面に点在する機械類の痕跡だけだ、他には何も無い。


「分かったよ。じゃあ、これならどうだ?」


 だだっぴろい空間の中央にまで行って、手に持った漢字辞書と食用油の入ったレジ袋を地面に落とす。そして徐に両手を上げて敵意がないことを示す。


 ここまでやって置いて今更なんだけれど、まさかとは思うが本当にこの廃工場のなかに火男がいないってんじゃあないだろうな? だとしたら、物凄く恥ずかしいことをしていることになっちゃうんだけれど。


「なぁ、頼むから姿を見せてくれよ、見せるだけでいいからさ。他には何もしない、本当だって。こうして怖い思いして丸腰でいるんだから、そっちも姿くらい見せてくれてもいいんじゃあないの?」


 見ようによっては間抜けな絵だよな、今の俺って。


 一向に姿を現す気配のない、そこに居るのかさえ不確かな火男に対して、諦めにも似たような感情を抱き始めたそのときだった。ぎいっと、錆付いた金属の何かが擦れる音が壁や地面に反響する。


 この音は、ドアノブを捻る音か?


 次いで、がこんっという扉が開くような少し大きめの音がして、俺は頬を伝う汗によって実感する。蒸し風呂に閉じ込められたかのように、じっとりとした熱気が全身を撫でていく感触。火男の状態は明らかに悪化していたことを。


「よう、やっと姿を見せてくれたな。火男」


 勤めて冷静に振舞い、そう声を掛ける。向かって右側の壁にある錆付いた鉄扉、それを越えた向こう側に火男はいた。


 以前にも見た巨大な体格に、更に衣服の損傷具合の増した服装をした火男は、やはり体内で火を燃やし尽くせていないらしく。衣服が燃えない程度の火、身体の表面に漏れでた薄く薄く引き延ばされた火が、ゆらゆらと不可思議に燃えていた。


 未だにこちらを警戒しているのか、鉄扉を越えてこちらの空間に入り込もうとはしない。


 ただ扉を開け放っただけ、飽くまでも姿を見せただけ、丸腰になったことに対して答えただけであって、まだお前を信用しては居ない、信用するに値しない。そう言っているかのような警戒心を剥き出しにした行動だった。


 けれど、姿を現したってことは、少なくとも話は聞いてくれるというこどだ。


「お前は何者だ?」


 改めてしっかりと聞いた火男の声は、思っていたよりもずっと低くて渋かった。おっさんにも勝るとも劣らない通りのいい声音だ。


「俺は言霊師ってのをやってる者だ。お前の敵じゃあないから、攻撃してこないでくれよ」


「言霊師……陰陽師ではないのか?」


「違う違う。そんな天下に名を轟かすような野郎共の仲間じゃあない、ただのしがない本屋さんさ」


 やっぱり陰陽師の存在は知っているか。


「なぁ、もう腕を下ろしてもいいか? 結構辛いんだよ、この体勢」


「……好きにすればいい」


 だらりと両手を下ろして、敵意無しの表現を取り下げる。


 そして、そのまま俺は一歩後ろへと下がった。下がって下がり続ける、足を止めることなく背中が壁に接触するまで、漢字辞書から食用油から火男から距離を取る。


「なんの真似だ?」


「話し合いをしよう、火男。そのレジ袋に入っているものは、その対価で今お前に必要なものだ。素直に受け取ってくれると、とっても嬉しいんだがな」


 だから、俺は後ろへ下がった。


 今いる位置からは何も出来ないと見せ掛けるために、物理的な距離を置いて相手に有利な状況を作り上げる。そうすることで相手に少なからず安心感を与え、警戒のレベルを下げることで交渉の余地を生む。こうでもしないと火男は話し合いにも乗ってこないだろう。


 だが、見せ掛けるだけだ。距離を必要以上に取っていても、本当に何も出来ないわけじゃあない。いざとなれば、幾らでも反撃は出来る。


「この私に施しをするつもりか」


「施しなんて殊勝なもんじゃあない。それは飽くまでも話し合いに応じて貰うための対価だ、それ以上でも以下でもない。で? してくれるのか? してくれないのか? 話し合い」


 長いような短いような沈黙が始まりを告げ、それから火男の熟考が始まった。


 相手の出方をただ待ち続けるという行為は、感覚的な時間の流れを早くも遅くもする。目の前に妖怪がいて、何時襲ってきても不思議じゃあない極限状態ともなれば、それはよりいっそう激しさを増す。


 どれくらい時間が過ぎた? まだ一分も経っていないんじゃあないか? いや、もう十分は経ったかも知れない。そんなことばかり頭のなかで考えながら、それでも火男から一時も目を離すことなく監視し続ける。


「いいだろう」


 そうとだけ言って沈黙を破り、火男はここで初めてこちらの空間に足を踏み入れる。


 鉄扉を潜り抜けて真っ直ぐ歩みを進め、レジ袋に手を伸ばす。プラスチックのボトルに入った食用油を掴むと、火男はそのまま浴びるように食用油を口のなかへ流し込み、かっ喰らう。


 油の補充が完了した。体内で油を用いた火の処理が始まり、火男の表面を覆っていた薄い火はみるみる内に消えてなくって行く。火を燃やし尽くしたことで熱源が消失し、廃工場内の気温も著しく下降し始める。


 なんとか第一段階突破ってところだな。


「対価は受け取った。話し合いだ」


 空になったプラスチックの入れ物を投げ捨てて火男は言う。


「なら、遠慮なく単刀直入に聞かせてもらうが。どうしてそんな状態になるまで、陰陽師を頼らなかった? 頼っていれば、こんなことにはならなかっただろう」


「私も初めは陰陽師を頼ろうとしていた。だが、ある噂を聞いて、私はそれを断念せざるを得なかった」


「ある噂? それはなんだ?」


「助けを求めて訪ねた陰陽師に、妖怪がことごとく滅せられている。という噂だ」


「なんだと?」


 陰陽師の連中が妖怪を滅している? いや、それ自体はなんの問題も無い。


 問題なのは、助けを求めてやってくる妖怪達を殺しているということだ。確かに、あいつらは妖怪を見れば親の仇を見たように滅しに掛かるが、それでも人間社会に溶け込んだ、人との共存を選んだ妖怪は例外だったはずだ。


 助けを求められれば例え相手が妖怪でも手を差し伸べる。恨むべきは、人に仇なす悪鬼羅刹。それがルールだった。陰陽師の連中が定めた、古くから続く掟だったはずだ。なのにどうして、そんな噂が流れている。


「事実を確かめた訳ではない、噂の信憑性はむしろ低いものだ。だが、私達妖怪にとっては真相の是非に関わらず、そのような噂が流れている事実だけが問題なのだ」


 そんなこと当たり前じゃあないか、助けを求めようとしている相手は自分の天敵なんだ。例え、噂が事実無根であったとしても、一度芽生えた疑惑は留まることを知らない。もし助けを求めて殺されたりでもしたら、そう考えて当たり前だ。


 そんなもの仕様がない。なんらかの理由で必要な油がなくなり、まともに人間を装うことも出来なくなった火男が、たったこれっぽちのライターオイルのために人を追いかけても仕様がないじゃあないか。


「すまなかった」


「なぜ謝る」


「これは、明らかにこちら側の人間が負うべき責任だ。噂の真偽がどうあれ俺は妖怪に携わる者として、お前に謝らなくちゃあならない。すまなかった」


 本来、どうあっても流れてはいけない噂なんだ。


 徹底して噂が流れる前に、発生する前に、根源を叩き潰して根絶させるべき事柄なんだ。こんなものは、基本も基本だ。そんな当たり前のことが出来ていないだなんて、幾らなんでも仕事が杜撰すぎる。前々からいけ好かない奴らだと思ってはいだが、まさか此処までとはな。


 もう呆れて物も言えないぞ、陰陽師の連中。


「貴方が頭を下げる必要はないと思いますがね」


 精一杯の謝罪の気持ちを込めて頭を下げた、その直後だった。


 硝子を共振させるほど大きな悲鳴が轟き、俺の耳を劈いたのは。


 地面の上に薄く広がる水と散らばる雫。


 微細な波となって押し寄せて足元を濡らし、同時多発的に発生する数多の波紋を描くそれを見て、俺は漸く今この場で起こっている出来事を呑み込んだ。火男は何者かに襲われたんだ、火の弱点である水、水の術によって。

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