第二十五章 暮らし
晴れ上がった五月に、待望の結婚式が行われた。
そう初めて二人は、久里浜で出会ったのは五月である。
ありふれた結婚式ではあったが、
二人に取っては、万感の思いを胸に秘めていた。
祭壇で誓いの言葉を交わすと、指輪の交換が始まった。
すると清美が祭壇に上がり、
皿に一つだけサンドイッチを乗せて、二人の前に翳した。
それを豊が掴み、サンドイッチの端の方を口に銜えると、
留美菜も、もう片方の端を口に銜えた。
両方から同時に食べて行くと、二人の唇が触れ合った。
そしてキスをすると、歓声が上がったのであった。
そして清美は、「これであのサンドイッチは、
二人の物と成りました」と、告げると、
更に手を叩いて喜ぶ招待者であった。
二人はキスを終えると、今日と言う日を大切な思い出として、
心に刻むのであった。
外でブーケを投げ様とする留美菜は、
清美に投げる方向を指定して、その方向に清美が立つと、
留美菜は後ろに向いてブーケを投げると、
丁度うまく清美が立っている腕の所にブーケが落ちて、
清美が両手で掴んではしゃいだのであった。
そして数日後、留美菜と豊は夜コンビニに立ち寄ると、
棚にはサンドイッチが一つしか置いて無かった。
二人は顔を見合わせて微笑み、そっと二人は棚に手を伸ばして、
二人でサンドイッチを掴んだ。
そして見詰め合い留美菜は、「有難う、
今日からあなたとここから始め直すわ」と、語ると、
豊、「ああ、レディーファーストで君に上げるよ」と、囁やいた。
留美菜は首を振り、「あなたと一緒に食べるのよ。
そこから私達の仲を修正したいの」と、願った。
すると慌てて店員が駆け寄って来て、「あ、新しいサンドイッチ、
もう直ぐ運ばれて来ますので、
ほんの少しだけお待ち頂けますか」と、焦りながら二人に告げた。
その店員は、四年前に留美菜と豊がサンドイッチを巡り、
喧嘩に成った所を目撃した店員だった。
すると豊が店員に、「もう運ばれたのでいいですよ」と、応えると、
留美菜は、「三年間掛けて愛という、
宅配便に運んで貰いました」と、語った。
店員はどう応えて良いか解らず、首を傾げるしか無かった。
そしてレジで清算をする二人は、仲良く腕を組んで店を跡にするのであった。
それを見ていた若い店員が、「あの人達確か、
久里浜の伝説の二人ですよ」と、告げると、
二人に慌てて駆け寄って来た店員が驚いて、「えー」と、声を上げたのであった。
豊と留美菜は夜道を歩いていると豊は不意に、「なあ、
俺達が防波堤で喧嘩している時の場面だけど、
俺お前にあんなにきつく言ったか」と、問いかけると、
留美菜は、「良いのよ小説なんだから、
より大胆に表現したのよ」と、豊のその意見を捻じ伏せた。
豊はその時、「はいはい」と、呆れながら素直に留美菜の意見を、
受け入れたのであった。
そして数週間後の日曜日、シェフ達と清美の会社の社員達は、
一緒に久里浜海岸に居た。
そこでビールを飲む者や本を読んでいる者、そして寝そべっている者と、
各々自由にしていた。
丁度夕日が沈みかけている波打ち際に、何故か清美と豊が座っていた。
その後ろに留美菜と良太が座っていた。
清美は豊に寄り添っていた。
すると清美が、「素敵ねー、こうして留美菜さんと、
愛を語り合っていたのね」と、浸ると、
良太が半べそ掻いて、「おーい清美、
もう少し放れろよ」と、かんしゃくを起こした。
すると隣に居た留美菜が微笑んで、「負け犬は負け犬同士、
指を銜えてうじうじしていましょうよ」と、言って良太と腕を組んだ。
良太は更にべそを掻いて、「なんすか負け犬って。
留美菜さんも清美に豊さん取られて、悔しくないんすか」と、激怒した。
それを見ていた横山が、「お前それを、
負け犬の遠吠えって言うんだよ」と、指摘した。
すると皆なは笑った。
下川が本を読みながら、「このふるかーって大田が叫ぶ所、
横山さんが俺に、しもかーと叫んでいる様子でしょ」と、問い掛けると、
シェフの輝幸が砂浜に寝そべりながら、「シェフの名前は全て同じだね」と、
留美菜に問うと留美菜は、「私この小説は、
売れる事を期待して書いたのでは無いの。
豊に私の気持ちを伝えたくて書いた小説だから、
シェフの誰かに本を買って貰う事を期待して、
それを豊に伝えて貰って、私の本を読んでくれる事を願ったの。
一緒に働いていたシェフか、豊が偶然私の書いた本を見つけてくれるか、
どちらかの可能性に賭けたの。
なのでシェフは本名を使ったの」と、言い訳をすると、
横山は、「俺達の本名を使っても、
俺達は松永さんが、今何処に居るかは解らないが、
松永さんの同僚のシェフならば、
書いた小説が松永さんに伝わる可能性が有ったと、
こう言う訳だな」と、悟ると留美菜は頷いたのであった。
豊、「小説、最高のラブレターの宛ては、
俺に向けたラブレターだったのさ」と、語ると、
皆首を立てに振った。
清美、「素敵ねー」と、言って豊の肩に頭を乗せた。
すると良太が、「清美、役者が違うだろ離れろよ」と、叫んだ。
隣に居た留美菜は、「しょうがないでしょ、
清美ちゃんに 一週間貸す約束したのだから」と、咎めると、
良太は、「そんな約束僕は許していませんよ。
何とかして下さいよ」と、留美菜にせがんだ。
するとここに居た良太を抜かして全員、
口を揃えて良太に、「お前が悪い」と、言われてしまったのであった。
そして大笑いされる良太は、気まずく成るのであった。
あれか三年が過ぎた。
豊は留美菜が住んでいた、
小高い丘の上コーポの近くに土地を買い自宅を作り、
そこで留美菜と生活を共にしていた。
豊は才覚があり、若いシェフを育ててこの久里浜に、
もう二店舗設けて大成功を遂げていた。
留美菜はすっかりシェフからは、奥様と呼ばれる様に成っていた。
自宅には立派な書斎を設けて貰い、そこで執筆活動を続けていた。
その部屋には二歳に成る、女の子が書斎で遊んでいた。
留美菜は自分の子供を呼んだ、「伽奈こっちにいらっしゃい」と、
手招きをすると、伽奈は喜んで留美菜の元に走って来た。
留美菜は書斎の机の椅子で、我が子を抱き上げた。
はしゃぐ伽奈とそれを愛らしく思う留美菜は、
今幸せの真っ只中で有る事は、言うまでも無かった。
するとその部屋の片隅のソファーで、一人女性が座っていた。
その女性は洋子に代わり、留美菜を担当する事に成った編集部員であった。
名前は北野 慶子。
洋子とは違い、スリムなスタイルではあったが、
口煩い所は洋子と替わらなかった。
慶子はそんな留美菜を見ながら、「留美菜さん今度の作品は、
三年前に書いた恋愛でお願いしますね」と、告げると、
留美菜は、「私は斉藤 すみれよ」と、言い返した。
慶子、「本名は神崎 留美菜さんでしょ」と、反論すると、
留美菜は、「松永と姓が替わりました」と、断言した。
呆れた慶子は、「この際どちらでもいいのですが、
新しい小説のタイトルが決まりましたか」と、問い掛けると、
留美菜は子供を愛子ながら、「決まったわよ」と、告げた。
慶子は、「ならば見せて頂きたいのですが」と、伺うと、
留美菜は、「机の上のパソコン見れば」と、支持した。
慶子は机に置いて有るノートパソコンを持って、
座っていたソファーに戻ると、ノートパソコンでタイトルを見た。
そのタイトルは...最低のラブレター。
それを見た瞬間、慶子は、「すみれさん」と、怒鳴ったのであった。
fin..。
原作:Shiny Pastl Moon
(松本 誠也)
FIRST IMAGE DATE 2012.7.03 Ver1.0
Correction 2012.7.06 Ver2.0
Correction 2012.7.13 Ver3.10
発送元:オリジナル:ヤフーブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/kome125
第六部作品




