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最高のラブレター  作者: シャイニーパステルムーン
20/25

第二十章 スカウト

暮れを迎えてあくせく働く豊は、


今新たなる目標に向かい、希望に満ちていた。


そう、留美菜との愛を育み、生きる希望が芽生えていたからである。


12月24日のクリスマスは、バブル時期程では無いが、


クリスマスはカップルで賑わい、


店側はクリスマスの特別な料理で、客を持て成していた。


そんな中、相変わらず控え室で、


一人だけ豊が作る料理を、堪能している留美菜が居た。


結局留美菜はあのストラスブールでの弁明も虚しく、


豊に甘やかされていた留美菜は、精魂込めた豊の賄い料理を出されて、


豊に味を聞かれると留美菜は、「まあまあ」と、


応える留美菜に豊は、「お前、もう捨てるぞ」と、脅かすと、


留美菜は途端に小さく成るのであった。


豊は本気で言っていない事は、留美菜は承知していたが、


自分の本心を身を持って捧げてしまった留美菜は、言い返す言葉が無かった。


営業を終えて留美菜と豊は二人で帰宅していた。


すでに留美菜は豊の済むマンションに入り浸りで、


帰る場所は豊の住むマンションであった。


帰り際、留美菜はしっかりと豊に寄り添い歩いていた。


豊、「寒くないか今日は薄着だが」と、問い掛けると、


留美菜は、「寒くは無いよ豊が湯たんぽ代わりだから」と、


どう捉えて良いか解らぬ返事であったが、よく留美菜の心を把握ている豊は、


急に留美菜を突き放して走り出した。


するとその場でしゃがみ込む留美菜は大声で「人でなし」と、叫ぶのであった。


そして豊はゆっくりと留美菜の元に歩いて行き、留美菜の前でしゃがむと、


豊は、「なあ、今の心境を言って見ろよ」と、問い掛けた。


すると留美菜は俯き、「寂しい」と、呟いた。


そんな留美菜に豊は人差し指で、


留美菜のおでこを突っついて、「お前な自尊心と甘えを、


履き違えている事に気づけよ。


お前のあの時の営みは、ただ俺に激しく抱かれたいだけの、


欲望だったのか」と、尋ねると、


留美菜はべそを掻いて、「両方」と、答えた。


それを聞いた豊は、「あの時の気持ちは、


俺にベッドで鼻っ柱折られるのを自ら許して置きながら、


今は俺に甘えたいから、だだこねてるだけだろ」と、攻めると、


留美菜は半べそ掻いて、「そうだよ」と、応えた。


呆れた豊は、「今日はどうされたいんだ。


強引にされたいのか、優しくされたいのか」と、尋ねると、


留美菜はぐずりながら、「優しくされたい」と、呟いたのであった。


更にめんどくさい留美菜にさせてしまったのは、自らだと責任を感じた豊は、


留美菜の両手を持って、自分と一緒に立ち上がらせた。


すると留美菜は、「ちょっと甘えたかっただけなの」と、告げると、


豊は、「なあ、その態度は俺だけだよな。


会社の連中の前で、その態度を見せてないよな」と、問い掛けると、


留美菜は真顔で、「見せてない」と、答えた。


豊は、「ならいいよ」と、強引に留美菜の手を引いて歩くのであった。


すると留美菜は、「今日は強引でもいいよ」と、呟くと、


豊は、「嘘をつけ、今日あの時の様に激しく抱いたら、


明日は立ち直れないだろ」と、強く言うと、


留美菜は素直に、「ごめんなさい」と、謝るのであった。


常に自分を構って貰いたい留美菜は、豊に気を引く様な態度を示すのであった。


豊のマンションに辿り着くと、キッチンのテーブルの椅子で、


留美菜はなんとなく拗ねていた。

                           

それを見て豊は、「どうしたんだ今日は、


先程からやけに御機嫌斜めだが」と、尋ねると、


留美菜は、「ねえ、あのしつこいお客は豊はどうなの」と、問い掛けた。


豊は気が付いて、「それで今日は機嫌が悪いのか。


店が軌道に乗ているのに、


態々イタリアでシェフなんて遣らないよ」と、今日店に訪れたイタリア人が、


厨房まで入って来て、シェフ達をスカウトしていたので、


留美菜は豊がイタリアに、行ってしまうのではないかと、


懸念して拗ねていたのであった。


特に豊の料理が気に入った様で、しつこく豊をスカウトしていたからだった。


豊、「イタリア人はしつこいんだよ、何年か前にもスカウトされたが、


あまりに強引に自分の都合だけを、押し付けて来るから断ったんだよ」と、


留美菜に語ると留美菜は拗ねながら、「それならいい」と、呟いたのであった。


豊は優しく留美菜の額にキスをすると、留美菜は気が治まらない様子で、


留美菜、「キスをすれば私の機嫌が直るとでも思っているの」と、嘆くと、


豊は、「旅行で言っていた君の話は、その場限りの激しい営みが、


欲しかっただけなのか」と、反論した。


留美菜はやはり拗ねながら、「ちょっとそれも有る」と、答えた。


呆れてはいたが豊は、「まあいいよ、気紛れなのも君らしいから」と、                          

風呂にお湯を溜めに行こうとすると、豊は留美菜を見た。


そして留美菜に、「何か言わないと気が済まないのだろ。


言ってスッキリしろよ」と、言うと、


まだ拗ねて構って貰いたい留美菜は、「私をお風呂に入れて、


そこで抱いたら、私が素直に成るとでも思っているの」と、だだをこねると、


豊は、「事実そうだろ」と、嘆くのであった。


その時、留美菜は黙り込むのであった。


結局留美菜は豊と湯船に浸かり、


豊に湯船で抱かれていた留美菜は素直に成っていた。


豊は、『これでは、悪い男の思う壺に成るな』と、


心の中で嘆いたのだった。


留美菜、「ねえ、豊の作る料理、


ストラスブールを旅したら 一味違うね」と、褒めた。


豊、「イタリアンばかり熟知していたから、


あのフランス料理の繊細な味付けに、気づかなかったよ。


何でも調和が大事だな」と、考えさせられた。


留美菜、「言い返さないの」と、尋ねると、


豊は、「何を言い返せばいいんだ」と、逆に訪ねた。


留美菜は、「私が賄いを食べていて豊が味を聞いたら、


私が、『まあまあ』と、答えたでしょ。


その事に対して、言い返して来るのかと思った」と、今更ながらの問い掛けに、


豊は呆れて、「留美菜それよりも先程風呂に入る前に、


お前は、『私をお風呂に入れてそこで抱いたら、


私が素直に成るとでも思ってるの』と言う、


今の状態での言い訳をしろよ」と、追求した。


すると留美菜は、「意地っ張りがまた出たの」と、俯いた。


豊、「構って貰いたいだけだと言えよ」と、嘆くと、


留美菜は、「解っているなら言わないで」と、膨れた。


豊はその時、「やれやれ」と、呆れるのであった。


そして風呂上り、文句を言う割には留美菜は甘えていて、


体を拭かれ下着もパジャマも豊に着て貰い、


キッチンに二人は向かった。


豊は冷蔵庫を開けると、


中からクリスマスケーキを出してテーブルに置いた。


留美菜は驚いて、「これどうしたの」と、尋ねると、


豊は、「今日仕込みの最中、ついでに作ってマンションに帰って、


冷蔵庫に入れて置いたのさ」と、告げると留美菜は喜んだ。


すると豊は、「一言何か言うか」と、問い掛けると、


留美菜は、「今日は私を抱きたいから、


ケーキで気を引いてもいいよ」と、応えた。


豊は流石に頭に来た様で、軽く拳骨を留美菜の頭に落とした。


豊、「素直なんだか、意地っ張りなんだか解らない奴だな」と、溜息を付いた。


そんな留美菜ではあったが、豊はシャンパンも冷蔵庫から出して、


栓を抜きガラス棚からグラスを出すと、グラスにシャンパンを注ぎ、


一つ留美菜の前に置いた。


留美菜はグラスを持ち口に付けて一口飲むと、


風呂上りだけに、冷えたシャンパンは格別だった。


シャンパンを飲んでいるとケーキを豊がカットして、


キッチンの引き出しからフォークを一つ出して、


食べ易い大きさにカットすると、留美菜の口の前に持って行った。


留美菜は口を開け、ケーキを頬張ると満面な笑みを浮かべた。


留美菜は食べながら、「あの時の味にそっくりね」と、喜んだ。


それはストラスブールの、あの小さなレストランで食べた、


イチゴのムース フランボワーズと同じ味で、


生地の中にはラズベリーが、細かく刻まれていたのであった。


豊もケーキを食べながら、「あそこまでは繊細な味は出せないが、


何とか近い味を出してみたよ」と、告げると、


留美菜は微笑んで、「凄く美味しいよ」と、答えた。


豊は呆れて、「甘やかすと評価は高いか」と、嘆いて、


先程の賄い料理の評価を思い出し、


その時の気分で評価を変える留美菜は、


ぐずる幼い子供と思考が同じだと思い、


今後の留美菜の対応に、どう対処して良いか悩む豊であった。


暮れの忙しい時期も落ち着き一段落した頃、


昼間に豊は厨房で兄と揉めていた。


無論経営の事であった。


何しろこの兄は後先を考えずに、多角経営したがるたちで、


金も無いのに店舗を増やす事ばかり考え、


尚且つ傲慢な遣り口に豊だけではなく、他のシェフ達も呆れていた。


今日は兄の和也と、豊の二人だけで揉めていた。


豊、「兄貴の言う事は無茶だよ。


やっと一軒が潤った状態で、


いきなりイタリアで店を賄うなんて、出来る訳無いだろ」と、嘆いた。


和也、「あのイタリア人は、お前が厨房を賄えば経営権を、


渡してもいいと言って来たのだぞ」と、豪語した。


豊、「その売り上げを、兄貴に回せと言いたいのか」と、察知した。


和也、「その売り上げでだな、日本に我々の店を増やせば、


忽ち大金持ちさワハハハ」と、笑い飛ばした。


豊、「新しくナポリにレストランを創るので、


その経営権を俺に渡して、その十パーセント支払ってくれれば良いとの話は、


俺は信じない」と、きっぱり兄の話を断った。


和也、「どうしてだ」。


豊、「昔からイタリア人の調子のいい奴は、決まって嘘つきなんだよ。


俺の同僚も一人唆されて、イタリアで店を任されたが、


ごっそり売り上げを持っていかれて、『お前はここの店の賄い人で、


俺がオーナーだから』と、言われて大喧嘩して日本に帰国したよ。


それもたった一ヶ月でな」と、訴えた。


和也はそれに対して納得が行かない様子で、


和也、「お前、昔はフランチャイズ店の、味の研究員をしていたのだろ。


俺達もブランドを作らないか。


新たなるイタリアンのフランチャイズを、模索してみないか」と、伺うと、


豊は、「遣り尽したよ何もかも。


安い美味いを追求して来た結果、俺はここでシェフをしているんだ。


俺が今でも研究員で居れば今ここには居ない。


必ずライバルが出来て相打ちに成り、結局個人で一軒の店を出した方が、


経営は安定するんだ。


俺に付いて来てくれたスタッフとシェフ達に聞いてみろよ、


必ず俺と同じ事を言うから」と、がんとして豊かは自分の意見を曲げなかった。


それに気に食わない和也は、厨房の鍋を拳で一発殴って豊から離れた。


それを見た豊は、「あれだから経営が上手く行かないんだ。


どんなに頭に来ても道具に当たる奴が、良い料理を作れる訳が無いだろう」と、


激怒すると厨房で仕込みを行うのであった。


その夜の事である。


いつもの様に、留美菜が控え室で豊の料理を食べていた。


すると何気なく和也が控え室に入り留美菜を見て、


和也、「お前、豊の昔の彼女知ってるか」と、聞かれ、


留美菜は首を傾げた。


和也、「お前寄りも上品で大人だったな。


なんであいつは別れたのか知らないが、


妻を亡くして直ぐ彼女が出来たが、実はまだ密かに続いてるんじゃないか。


お前に隠してはいるがな」と、告げて控え室から出て行った。


当然留美菜は虚ろな眼差しになった。


12月も終わり頃、今年も後僅かとなった季節に、


二人は夜道を家路に歩いていた。


留美菜は黙っていたが急に立ち止まり、豊の前に立ちはだかった。


そして顔を強張らせ、「ねえ豊、今でも昔の彼女と密会してるの」と、藪から棒に尋ねると、


豊は首を傾げて、「いや、昔の彼女とは妻を亡くして一年後に付き合った、


フランチャイズの同じ研究員の、西崎 聡子の事か」と、問い掛けた。


留美菜、「名前なんて知らないわよ」と、訴えた。


豊、「兄貴が言ったのか、そんな根も葉も無い事を」と、尋ねると、


留美菜は、「昼間私が仕事している間に、昔の彼女と密会していたのね。


私よりも落ち着いている大人で」と、追及した。


豊は冷静に、「どうして俺がお前を差し置いて、


今更昔の彼女と密会しなければならないんだ」と、首を傾げた。


留美菜は急に態度を変えて、「うるさい、あんたの気持ちなんて、


私は知る訳が無いでしょ。


そうやって私をはぐらかして置いて、本当は元カノと寄りを戻して、


そちらとの仲を優先させているのでしょ」と、激怒した。


すると豊は、「嘘だ、嘘だな留美菜。


俺の気持ちを知っている。


兄貴が嘘を付いてると承知してる。


俺の顔色を見れば今の留美菜ならば、


俺が嘘を付いているかどうか、直ぐ判断出来るはずだ」と、悟ると、


留美菜は更に激怒して、「知らないと言ってるでしょ。


この卑怯者」と言って、豊の頬を一発張り倒した留美菜。


豊はそれでも冷静な態度で、ポケットから携帯を出して留美菜に渡した。


豊、「何処にその女とアクセスした形跡が有るんだ。


それでも疑うのならば他のシェフに密会しているか、


聞いけばいいだろ」と、語ると、


留美菜は、豊の携帯電話を持ちながら、「どんなごまかしかただって出来るはずよ。


その女は豊が買い物をどこで済ませるか知っていたり、


魚を仕入れに港でも会える」と、疑いは晴れなかった。


豊、「なあ留美菜、いつかこんな時が来ると思ってた。


落ち着いて聞いてくれ」と、願うと、


留美奈は怒りが収まらず、「何が冷静に聞けよこの人でなし。


私を思う様にして来て、今更何を企んでいるのよ」と、怒りを露に訴えた。


豊、「いやそれは違う。


知らぬ間に君が俺を、思い通りにして来たんだ。


優しかった、いや強情だった俺が君に優しく成り、


君の言う事を何でも叶えて上げた。


でもそれはいつか痣と成った」と、告げると、


留美奈は聞く耳持たず、自分の主張を述べるのであった。


留美菜、「私はあなたを信じてた。


いつも私の隣で愛を語ってくれた。


優しく抱きしめていてくれた。


それは全て私を自分の都合のいい様に、


し向ける様コントロールしたかったからでしょ」と、


顔を強張らせて拳を握り締めた。


豊、「幾度と無くこの繰り返しをして来た。


今君は俺が潔白であると解っている。


俺がここで君の怒りを抑える事で、今以上に強い愛を与えてくれると、


君の体が覚えしまっている。


会社でも以前の留美奈とは違い、素直で正直な態度を示す事で、


君は男性社員から慕われ、可愛がられたが君はそれに溺れた。


会社で泣けば慰められ、女性社員に誹謗中傷されれば男性社員に庇われる。


俺に激怒する事で君の過去を知っている俺は、


慰め気持ちが治まるまで、抱き続け素直になる。


だがその行為が今、エスカレートしてしまった。


甘えと言う形だけが残り、精神面の強化に繋がらない。


逆に言えば以前の君の姿寄りも、


今の方がずっと弱い精神面を、露にしている君がいる。


俺は君を何もかも包んで上げる事で、君の性格が穏やかに成り、


会社での待遇も改善されると思い君を補って来た。


でもそれがいつか、甘えに転じて今の君を作り出した。


もう一度言うこれが最後だ。


俺は浮気などしていない、君の前の彼氏とは違う。


本当に君と結ばれたいと思っている。


思っているから毎晩君に、愛情を込めて賄い料理を作って上げる。


俺の最高のラブレターそれは君に愛情こもった料理を、


毎日食べさせて上げる事だ。


誰にも作らない最高の味を君に出している。


それが僕から君への最高の愛なんだ」と、語ると。


この恋が終わる最後の一言を、告げてしまった留美菜。


「あんたなんか単なるペテン師よ。


イタリヤでも何処にでも、行ってしまえばいいのよ。


もう顔も見たくない」。


豊はその時、何も言わず携帯を留美菜に渡したまま、


去って行ったのであった。


怒りが収まらない留美菜は息を荒くしながら、


豊の歩く姿をじっと見詰めるだけであった。


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