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最高のラブレター  作者: シャイニーパステルムーン
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第十六章 補い

週末の出来事である。


留美菜と豊は銀行に行き、お金を下ろしている様子であった。


そして銀行から出ると、二人は喫茶店に向かった。


喫茶店で二人は、何か打ち合わせをしている様子で、


留美菜が携帯電話を掛けていた。


留美菜、「もしもし美奈代、あんたあれからどうしたのよ」と、答えると、


電話の向こうの美奈代が覚束ない声で、「どうしたら良いか解らない。


もう私は生きて行けない」と、拒絶して追い込まれている様子であった。


すると留美菜が、「良い病院紹介するから、


まず街外れの喫茶店ランダムタイムに来て」と、美奈代を誘った。


しばらく喫茶店で寛いでいると、俯いてとぼとぼ喫茶店に現れる美奈代。


二人を見つけて二人のテーブルに立つと、


小さく会釈して留美菜の隣に座った。


そして豊がウェートレスを呼ぶと、お盆に水の入ったコップを乗せて、


テーブルに水を置くと即座に注文を聞くウェートレス。


美奈代はホットコーヒーを注文した。


そしてウェートレスが立ち去ると、


留美菜は美奈代に、「これが偏屈な女が好きな彼氏よ」と、嫌味気に豊を紹介した。


美奈代は豊本人の前で、会社で自分が留美菜に言った嫌味なので、


後ろめたさに首を竦めた。


そして留美菜は、「会社では大騒ぎよ、


私に彼氏が出来た事の騒ぎなんて、問題では無い程にね」と、咎めると、


豊も、「俺達も噂の二人の様だけど、


それ以上に君の事で社内は、だいぶ心配している様だよ」と、告げた。


留美菜、「自殺したと囁かれていて、携帯は私からあんたしにか通じないから、


会社を代表して安否を確認しに、連絡入れたのよ」と、切り出した。


美奈代はその時、黙っていたが重い口を開いた。


美奈代、「もう死のうか思うの。


お金も無いしこのままだと行きずりの、


男の子供を産まないと行けないし」と、


身勝手な判断に留美菜は、「あんた遊び過ぎて、


お金が無いのは常日頃なのは知ってるけど、


死んだ後に悪いレッテル貼られて、誰も供養しないわよ」と、忠告した。


すると急に泣き出し美奈代は、「悪かったわよ、あんたの彼氏を変態呼ばわりして。


あんたを貶して悪いと思ってるわよ。


だからどうしたら良いか教えてよ」と、


縋り付く美代子に豊は、「やれやれ」と、呆れていた。


すると美奈代は、「悔しかったのよ。


あんたは器量だけは良いから、それで今の彼氏に見初められたと思ってた。


あんな経緯があるなんて知らなかったし、


あんな美味しい料理を毎日作ってくれ彼氏が、


あんたみたいな意固地でへそ曲がりな女が、そんな男を手玉に取るなんて、


許せなかったから、悔しくて彼氏を貶して遣りたく成ったのよ」と、


その理不尽な言い草に、いささか頭に来た豊ではあったが、


留美菜の前で感情的には成れず、そこを抑えて美奈代に告げた。


豊、「あのね、君だって器量は良い方だと思うけど、


問題はその性格だと思うけどな」と、悟った。


図星の美奈代は、その一言で黙り込んだ。


留美菜、「悔しかったのは解ったわよ。


私もあんたに彼氏を自慢げに見せてた事は謝るわよ。


あんたと、いがみ合っていた今までの事も全て謝るし、


償って行こうと思ってる。


それで私は今のあんたの痛みが解る。


今まであんたといがみ合い、あんたにも苦痛を与えた事も遭った。


私はこの間あんたに相談された時、あんたの痛みを痛感出来てた。


あの時は、冷たくあしらったけどせめてもの罪滅ぼしに、


利子無しで中絶のお金を工面して上げるから、病院に行こう。


良い病院も探して来て上げたから、安心して下ろして来なさいよ」と、告げると、


ろくでなしな美奈代も流石に精進した様子で、「有難う今まであんたを、


貶して来た事を謝るし、


豊さんにも大事な留美菜を貶した事を深く反省するわ。


寂しかったの同時に悔しくも感じてた。


留美菜は偏屈で意地っ張りだけど、男性社員からは支えられていた。


あんたは単純な所を見透かされていたから、


男性社員から可愛がられてた所も有るでしょ。


自分では気づいてない様だけど。


確かに私はモテていた。


でも直ぐ男が去って行く。


男に高望みをしてしまう癖がいつも痣になるの。


今まで自分に合う男の理想が高くて、常にそれを求めていた。


最高の金持ちを見つけてこの人だと思うと、その男の欠点を見付けると、


直ぐに嫌に成ってしまう私だったから、尚更寂しさが増して行った。


そんな時、魔が差したの。


理想が高いと言い寄る男も、私は足元を見てしまいがちなる。


すると金が有るより、私に猛烈に愛をいだく男が愛しく感じてしまった。


バーで 一目見た私に優しく愛を語りかける男が居た。


私も酔いが回っている勢も有り、


寂しさのあまりその男に惹かれてしまったの。


その場限りの一時で納まらなく成った、行きずりの男と寝たの。


まさかそれが過ちだったなんて、信じられないの今でも」と、語ると、


留美菜は素直に、「大して私と変わらないじゃない。


私と同じ様な過ちを犯してる」と、告げると、


美奈代は、「一つだけ違うわ。


留美菜の方が男に愛情がある事。


私は男に愛情が無い。


豊さん見せたでしょ、留美菜は意固地でも愛情が有る所を」と、豊に問い掛けると、


豊は素直に、「ああ見せたよ俺といがみ合っていても、


亡くした妻の話をしたらね」と、答えると、


美奈代は、「私と留美菜の違いは常にそこに有る事を、やっかんでいた私が居た。


留美菜は人の痛みが解るの。


そう、この頃その違いがはっきりと実感出来たのは、


留美菜が子供を下ろした過去が遭ったと、聞いた時からだった。


その時から留美菜の気持ちが痛感出来たの、


私のお腹に子供が出来た時からね」と、答えると、


初めて留美菜と美奈代は、心が通じ合えたのであった。



そして夜に成ると留美菜と豊は、街の居酒屋のカウンターで呑んでいた。


するとぞろぞろと、留美菜の会社の社員達が、居酒屋に入って来た。


社員達は二人を囲む様に二人を挿んで、


カウンターの両サイドの椅子に腰掛けると、


各々自分が呑みたい酒を注文していた。


上司の市川が徐に、「それでどうだった」と、切り出した。


留美菜が、「今日話を付けて、東京都内の大きな病院に連れて行ったの。


本人も安心した様子で、治療を受けるみたいです」と、答えた。


社員達はその時、同時に溜息を付いた。


大田、「加藤、神崎の事悪く言える立場かよ」と、非難した。


それについては、同意見で有った会社の社員は、何も言わずに頷いていた。


市川、「それにしても、行きずりの男性との間に、


出来てしまうとはだらしが無いな」と、呆れた。


古川、「数日から、何だか元気が無さそうでして、


多分その時、既に妊娠検査薬に反応が、


出ていたのでしょうね」と、悟った。


留美菜、「数ヶ月前から生理が来ない事が、分かっていたとは思うけど、


美奈代の私生活はだらしが無いから、


変だと思っていても見逃していると思います」と、告げた。


大田、「神崎に金を借りていた事も、有ったのだろ」と、問い掛けると、


留美菜は、「ほんの数千円ね、多くても五千円程度。


初めて会った時から、お金にはだらしが無かったから、


絶対万単位は貸さなかった。


でも美奈代は、男から貰ったブランド物のプレゼントを、


飽きると私にくれたの。


私が拒んでも、無理やり押し付けて来るから、貰って質屋に流してた。


私は別口座を作って、質屋に流して得たお金を、その口座入れて置いたの。


その金額だけでも八十万は有るから、


それを中絶出来るお金として貸したの。


その事は美奈代には告げて無いけど、自業自得だと思う」と、告げると、


社員達は呆れてものが言えなかった。


豊、「留美菜からその貯金の事は、僕は聞いて無ったのですが、


留美菜と知り合ってから、その美奈代さんの話を聞いていると、


いつかそう成る様な気がしましたが、


懲りそうもない様ですね」と、悟った


すると市川は豊に振り向いて、「始めまして、


私し神崎と同じ会社に勤めている、


市川 広茂と申します」と、告げると財布から名刺を取り出して豊に渡した。


差し出された豊も焦って、「も、申し訳ない、つい考え事をしていまして、


挨拶が遅れました」と、慌てて自分の財布から名刺を取り出して、


市川に渡すと、「もう社内では噂に成っている様なので、


御承知で有るかと思いますが長瀬でデリツィオーゾと言う、


イタリアンレストランを経営しています」と、頭を下げた。


すると社員達は、クスクス笑い出した。


市川は渡された名刺を見ながら、「大変御苦労されたとか、


加藤君にも苦労させられた様ですが大したものですね。




この子を見事に更正させた様で」と、問いかけると、



豊は謙遜して、「とんでも無いですよ。


更正させて貰ったのは僕の方で彼女の愛情で、


僕も素直に成れました」と、自省した。


市川、「いやいやあなたが居なければ、


この子は一生嫌者で寂しい老後を、


迎える事に成っていたでしょうから、


加藤君にとっては、最良のパートナーを見つけたと思いますよ」と、称えた。


豊、「市川さんのそのお褒めのお言葉も、留美菜から伝えて貰いましたが、


ついこの間まで僕も偏屈で意地っ張りでして、


そんなに褒められる程の者では無いのですが」と、照れた。


すると社員達は同時に、「いやいやいや」と、否定して、


大田が、「御立派ですよ。


まずあなたから我が振りを直し、強情な神埼に耐えたのですから、


相当精神力が無いと出来ませんよ」と、関心すると、


社員達は同時に、「うん」と、言って同時に頷いたのであった。


その時、留美菜が、「そこまで言われる程私は強情だった」と、訴えると、


社員全員、「強情だった」と、念を押した。


各々で留美菜の過去の話していたが大田は、「まず褒めると、


馬鹿にしたかと思われてだな、


優しくすると『口説いてる』と、勘違いされて、


『そんなに軽い女じゃない』と、言われてだな、


それに対して喧嘩に成ると、徹底的に自分の正当性を主張するしだな、


だからって放って置けば、何だか切ない様子に成るしだな、


可愛そうだからまた構うと激怒するしだな、


それに耐えて加藤の心を穏やかにさせた松永さんは、


人並み外れた精神力だよ」と、語ると、


一斉に社員達から、「そうだそうだ」と、留美菜は罵声を浴びせられた。


今までの留美菜に対しての、うっぷんが爆発してしまったのである。


すると豊は、「留美菜今日は部屋で泣くなよ。


泣いても今日はお前を慰めないからな。


精進しろよ。


そうだとは思ってたけど、俺意外にも被害者はこれだけ大勢居るぞ。


俺よりもずっと前からお前に愛情掛けてくれた人は、


こんなにも大勢居るのだから、


その人達に償ってから俺に甘えろよ」と、からかうと、


本気で焦る留美菜は、「豊はこの話を聞かないでよ。


それに私のプライベートを、


ここでベラベラしゃべらないでよ」と、本気で怒った。


すると大田は、「今までの報いだな」と、断言すると、


豊を含め留美菜意外は大笑いであった。


立場が無くなる留美菜は、ただ黙って俯いていたのであった。


大田、「松永さん今夜は、一晩中神崎の愚痴を聞かされると思いますから、


僕達と梯子しましょうよ」と、誘った。


豊は、「いいですね行きますか。


留美菜の涙が涸れるまで、呑んでいましょう」と、応えると、


留美菜は急に泣き出し、「もう豊と別れて遣るから、


この人でなし」と、かんしゃくを起こした。


その時、社員と豊は同じ思いに駆られて、「まだまだだな」と、同時に呟いて、


留美菜意外は皆肩を落とすのであった。


まだまだ緩い留美菜である事を悟られて、夜は更けて行ったのであった。


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