第九章
〜復活〜
気がつくと、シグはベッドの上に寝かされていた。目を開くと懐かしい神殿区の客間の天井が映った。
「おかえりなさい、シグ様」
「ただいま、ファナ」
シグは自分の顔を上から満面の笑みを浮かべて覗き込んでいるファナに微笑み返すと、ベッドから身を起こした。
「アリルたちのところへ行こう」
ファナは小さく頷くと、シグの後ろについて神殿区の外へ向かった。
「あっ!」
「君は、スゥちゃん?」
「どうしたのスゥちゃん?」
神殿を出たシグとファナの胸に飛び込むようにしてスゥとその場に一緒にいたココルが駆け込んできた。
「お兄ちゃん、皆が皆がぁ……」
「ココルちゃん、どうしたの?まずは落ち着いて」
「スゥちゃんも、ね?」
胸に飛び込むなりずっと泣きじゃくっている二人の少女を落ち着かせながらシグはゆっくりとココルとスゥに話を聞いた。二人が泣きながら語る断片的な話によると、ルミネがどういった経路かはわからないがラ・ジェラーデ(ここ)のことをかぎつけてノアを取り返しにやってきたらしい。ラ・ジェラーデの住人を盾に取られ、ノアは連れていかれてしまう。それに腹を立てたアリルがセラたちと共にルミネの後を追ったらしい。
「じゃあアリルさんたちは今、ゼル・リアに?」
「早く追いかけてあげてよ。あいつらにやられちゃうよ!」
「わかった。二人とも、教えてくれてありがとう。大丈夫、皆は絶対に僕が守って連れて帰ってくるから」
「ココルちゃん、スゥちゃんはおうちに帰って待っててね。きっと、大丈夫だから」
「テーイル!!」
ココルとスゥをなだめるファナの横でシグは大きな声を出してテイルを呼んだ。
「キュ〜!」
シグの帰りを首を長くして待っていたテイル。もはや、長い間聞いてきた彼の声をたった数日で忘れるわけがなかった。小屋の扉を突き破り、すぐに彼の元へと走っていく。自分を必要としてくれている彼のために。
「心配を掛けたな、テイル」
テイルはわざと不機嫌そうな目をしていた。その目はまるで「まったくだ。どんだけ心配したと思っているんだよ」とでも言っているような目だった。
「早速だけどアリルたちが大変みたいなんだ。すぐに追ってくれ!」
「キュ!」
まかせろ、と言わんばかりに一声鳴くとテイルはシグと自分に乗るのは初めてと言うファナを乗せて光の柱を通ってゼル・リアのクラース草原へと降り立った。