故に僕は殺される
いわゆる胸糞系のお話です。
ご注意を。
世間じゃ聖人と呼ばれるガレリウスは一人の女性に酷いことをした。
女性は村に暮らすただの娘に過ぎなかった。
パン屋の娘。
よく働き、よく笑う一人の娘。
家族は両親のみで、財産らしい財産と言えば店くらいしかない。
彼女には幼馴染の青年がおり彼とは恋仲であった。
順当にいけば彼女は青年と結婚をして、パン屋を継いだ青年と共に老いていっただろう。
それをガレリウスが許さなかった。
理由などない。
少なくとも取り立てて大きな理由など。
彼女はそれなりに整った顔立ちをしていたが、誰もが振り返るような美人ではなかった。
すれ違った時に「あぁ、綺麗だったな」と感想を抱くが振り返ることはない。
本当にその程度だ。
ガレリウスからすればどうでもよい相手。
翻ってみれば数え切れないほど犯した覚えていない程度の罪でしかない。
ガレリウスは彼女と青年が歩いているところを配下の者に襲撃させた。
青年は抵抗したので殺した。
泣き叫んだ彼女を攫い、そして辱めた。
ガレリウスのしたことは『それだけ』だ。
『事後処理』もしっかりしていたが故に、彼女が真実に辿り着いたのはまさに執念としか言いようがない。
――そして。
僕はガレリウスのした罪故に殺される。
父、ガレリウスの故に。
「あなたには罪はない」
女性は震えながらそう言った。
一義的には事実だろう。
少なくとも僕は十年の人生の中で一般的に罪と呼ぶような行為は一つとてしたことがない。
「だけど、あいつを苦しめるにはこの方法しかなかったの」
女性はガレリウスが苦しむ方法を考え抜いたのだと言う。
どうすれば最も苦しむか。
どうすれば相応しい罰を与えられるか。
そうして出た結論が罪なき自らの息子が理不尽に奪われるというものだった。
故に僕は殺される。
父の犯した罪故に。
「ごめんなさい」
女性は震えて泣いた。
構わないと思った。
父の成したことを思えば、父に与えられるべき罰として相応しいと感じた。
僕に成される行為としてはあまりにも理不尽であるけれど。
「すぐ。終わらせるから」
震える手で握るナイフ。
それがゆっくりと迫る中。
僕は純粋な疑問を口にした。
「父は。僕の死を悲しむと思いますか?」
直後、僕の思考は全て痛みに変わる。
口から垂れ流されるのは許しを願う言葉だけ。
意識続く限り僕は必死に命乞いを続ける中、それでも僕はどこか冷めた思いで考えずいられなかった。
父は僕が惨殺されたとして、果たして悲しむだろうかと。
聖人と呼ばれた父の真実が悪人であった。
では、悪人たる父は息子が死んだことで悲しむだろうか。
*
聖ガレリウスが成した幾つも弱者救済……特に孤児に対する多大な寄付の功績は今日でも心温まる物語として各地で聞くことができる。




