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妖精と王子様のファーストダンス(へんてこワルツ7)  作者: 魚野れん
最初から雲行きが……?

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4/15

4

 マロリーはそのまま話し続ける。彼女の歩幅に合わせながら見下ろした。


「必ずしもパートナーの悩みを解決する必要はないのよ。ただ、一緒に解決しようと思い、行動してくれるだけでと良いの。

 悩みを聞いて寄り添ってくれさえすれば、それだけで良いの。私はがんばれる」


 マロリーの言っている事は分かる気がした。すぐに解決できなくても、一緒に悩んでくれるだけで幸せな気持ちになれる。少なくとも、エルフリートはロスヴィータがそうしてくれたら嬉しく感じるに違いない。

 ロスヴィータもそうなのだろうか。エルフリートが彼女の悩みを聞き出そうとしたら、彼女の矜恃を傷つける事になるのではないかと思っていた。


 決して、ロスヴィータの事を傷つけたいわけじゃない。ただ、エルフリートはロスヴィータの負担を減らしたいだけだ。

 それでも、エルフリートの動きがロスヴィータの気持ちを曇らせる原因になるかもしれないと思えば、勇気が出なかった。


「好きな人なのよ。一緒にいてくれるだけで嬉しいし、幸せに決まっているでしょう。私、嬉しかったわ。話を聞いてくれて、それに力強く答えてくれて……」


 エルフリートの反応を待たずにマロリーは続けた。


「正直に聞いてみたら良いわ。結婚に関して何か不安だったり気になったりしている事はないかって。

 ロスの悩みは私の悩みとは違うだろうし、その内容によっては解決する事はできないかもしれないけど、話を聞く事はできるのだから……気になるなら聞けば良いのよ」

「うん……」


 マロリーはくすくすと笑いながらつけ足した。


「夫婦になるなら、ちゃんと話し合いなさい。私から見たあなたたちはお似合いだけど、話し合いはしないとだめよ」

「う……うん」


 エルフリートがぎこちなく頷けば、マロリーは唐突にエルフリートの背中を叩いた。


「わわっ!?」


 彼女のそれは、たいして痛くもなかったし、エルフリートを転ばせるような威力もなかった。頭を揺らしたエルフリートがマロリーに顔を向ければ、彼女は目を細めてにやりと笑う。


「しっかりなさい。あなた……結婚するんでしょ?」


 人通りのある場所に差し掛かったマロリーは「誰と」とは言わなかったが、エルフリートは思わず頬を赤くした。

 そうだ。もうすぐエルフリートはロスヴィータと結婚するのだ。だから、彼女の不安を取り除きたいと考えているのだ。話を聞くべき相手はマロリーではなく、ロスヴィータの方だと今さら気付く。


「相談してくれて嬉しかったわ。また何かあれば聞いてあげても良いわ。私、これでもあなたたちを応援しているの」


 彼女が上機嫌なのは、エルフリートが真剣な気持ちで相談を持ちかけたからなのかもしれない。エルフリートは胸の奥があたたかくなるのを感じた。


「まあでも、もしかしたらバティに相談した方が良い内容もあるかもしれないわね。私だけではなく、バティもいつでも相談に乗ってくれると思うわ」

「そうだね……二人とも本当に頼りになる」


 とても良い友人を持った。エルフリートは心の底からそう思う。背中を預けて共に戦う相手であり、人生の相談もできる相手はとても得難い存在だ。


「本当にありがとう」

「良いのよ。今後は私も魔法以外で相談するような事があるかもしれないし」


 そういえば、仕事や魔法関係でしか相談された事がない気がする。エルフリートはもう何年も一緒に活動している彼女たちとの交流が思いの外浅い事に気付いてしまった。

 マロリーとの会話は気付きが多い。エルフリートは何度目になるか分からない気付きを得ていた。


「私が役に立てそうな事なら何でも言って。最優先で頑張るよ!」

「気合いを入れすぎて空回り……は、しなそうね。あなたって、こう見えて(・・・・・)能力が高いもの」

「こう見えてっていうのは余計だよ!」


 せっかく人が……とエルフリートがぶつぶつと言えば、マロリーはくすくすと笑っている。こうして話をしていると、二人はただの女友達みたいだ。

 騎士でもなく、魔法剣士でもなく、ただの少女としての友情を育んでいるような気持ちになる。もちろんエルフリートは女装している少年だから、現実はそうではないが……。


「ふふ、でも……うん。私が力になれる事があったら声をかけて。力になりたいっていう気持ちは本物だから」

「ありがとう。何かあったら本当に頼るから、その時はよろしくね」


 エルフリートは大きく頷いた。


「雑談は終わりね」

「あ、うん」


 目の前に、待機中の騎士が何人か立っている。これから警邏をする仲間の騎士だ。エルフリートは大きく手を挙げて振った。


「おまたせー!」

「おっ、ぎりぎり間に合ったな。時間までには来ると思ったが、さすがに遅いなと心配していたんだ」

「心配してくれたの? ありがとう!」


 小言を口に登らせた騎士がエルフリートの笑顔に口を噤む。毒気を抜かれて戦意を喪失したみたいだ。


「今日も一緒に頑張ろうね」

「遅刻寸前のお前が言うな。ここは俺が号令をかけるところだ」


 彼がそうしかめっ面をする隣で、もう一人の騎士が「可愛いから心配になるよな……でも、こいつは俺より強いぜ……」と半笑いしていた。

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