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まものが あらわれた! …いや、あたしのウチに?!  作者: ism


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3/10

ゴーレムが あらわれた!

──ゾンビ騒動から一週間後。


鉄野津家では壊された玄関の取りかえ工事を行っていた。

ルミの父・鉄野津テツオは柴犬みりんと共に庭でタバコを吸いながら工事の様子を見ている。


「あらお父さん、どうも〜」

塀からひょっこりと隣の大沢家の夫人が顔を出した。


「あ、こんちは。すみませんね工事の音。あと一時間くらいで終わるらしいんで」

とテツオは申し訳なさそうに挨拶した。


「やだもう、全然大丈夫よぉ。それより大変だったわねえ、立て続けに」

大沢夫人は心配そうにテツオに話しかけた。


「いやほんとに。あ、そういえば大沢さんのとこもかなり被害があったって聞きましたけど」

スライムの被害を受けたのは鉄野津家だけではない。


飼われていたマンションから逃げ出し鉄野津家に現れるまで、町内の家々の壁や庭を這いずり回っていたらしく、近隣では後から被害に気付いた家も多い。


「そおなのよ。綺麗に手入れしてたお庭が無茶苦茶にされちゃって…汚染された土やお花はぜーんぶ入れ替え。ホントいやになるわ」

テツオは塀の上から隣の家をのぞきこんだ。


かなり荒らされてしまったようで、庭全体を改修の真っ最中だった。庭の隅っこに汚染されて枯れた芝生や植物、土が廃棄物として積み上がっている。

なんとか無事だった花は鉢植えに移し替えられており、その横には庭の装飾に用いると思われるレンガが積まれている。

「大変ですね。え、これもしかして全部奥さんひとりでやるんですか?」

夫人はため息まじりに

「そうよぉ。だってうちの人、土いじりにひとつも興味ないんだもん。まぁもともとこのお庭は私がひとりで手入れしてるしね」

と答えた。


「へぇーすごい。プロ並みのガーデニング技術ですね」

素直に感心するテツオ。


「やるんなら本格的にやりたいから。ほらこの石畳用のレンガも造園業やってる知り合いから取り寄せたイタリア製の気温変化や雨風に強いやつで…」

と夫人が喋り出したその時、レンガのひとつがカタカタと震え出した。


夫人とテツオは、二人同時に黙ってレンガを凝視した。夫人は引き攣った笑顔で

「…き、気のせい、よね?」

と呟いた。

「は、はは、そうですよね」

とテツオが返した、次の瞬間──


レンガがまるで生き物のように、ひとりでに組み上がり出した。


「きゃあああ!!」

夫人の悲鳴がこだまする中、組み上がったレンガは頭部と右腕のみのゴーレムを形成した。


「大沢さん!!早く逃げて!!」

テツオは夫人に逃げるよう促すも、夫人は腰が抜けてしまい座り込んで動けない。


ゴーレムは右腕だけで這いずり、夫人に近づく。

テツオは塀をよじ登り、大沢家の庭に入ると夫人のそばに駆け寄る。


「だ、大丈夫ですか?!」

「だめぇ、た、立てない…」

泣きそうな顔の夫人に肩を支えてなんとか立たせる。が、足に力が入らないようで、立たせるのも一苦労だ。


ゆっくりと這い寄るゴーレム。

その時、ゴーレムに誰かがスチール製の脚立を投げつけた。脚立は上手い具合に頭と右腕に絡み、ゴーレムは外そうともがいている。


夫人の悲鳴を聞いた玄関の工事業者の男だ。

「大丈夫っすか?!」

工事業者の男の呼びかけにテツオはこたえる。

「手かしてー!一人じゃ無理!」


工事業者は壁をよじ登って越えると、テツオと一緒に夫人を支えて運ぶ。


ゴーレムは掴んだ脚立を壁に投げつける。

ガッシャーンと大きな音を立てて脚立が跳ねる。


「高橋ー!警察よべー!」

工事業者の男は一緒に工事にきた後輩の男に通報するよう大声をだした。


「もう呼びましたよ!うわー!ゴーレム?!」

高橋と呼ばれた後輩の男は塀ごしにゴーレムを見て声を上げる。

そしてゴムハンマーやスパナなどの工具をやたらめったら投げつけ始めた。


投げつけられる工具を振り払うようにぶん回した右腕が、

ドゴン!…と大沢家の壁に大穴をあけた。


「うっわ!近づいたらヤバいぞありゃ!」

なんとか夫人を外へ運び出したテツオの工事業者の男。

その時、◯◯造園と書かれたライトバンが近くに停車。降りてきた作業服の男たち数名がこちらに向かって走ってきた。


「あー!ヤバい!動き出しちゃってるよ!」

男達は大沢家の庭に無断で入り込んで行く。


男のひとりが右腕を振り回すゴーレムの前に躍り出て、何やら呪文を唱え始める。するとゴーレムの動きは徐々に緩慢になり、遂には崩れ落ちてただのレンガに戻った。


「さっさと回収してズラかるぞ!」

リーダーと思しき男の命令で作業服の男たちはゴーレムだったレンガを拾い集め出す。


「な、なんなんだアイツら」

テツオの疑問に、夫人が口を出す。

「あ、あの人、知り合いの造園業の…」


しばらくすると、パトカーのサイレンが遠くから聞こえる。

「くっそ、ポリ早いって!行くぞ!」

リーダーの声に作業服の男たちは大慌てで大沢家の庭から飛び出しライトバンに乗り込んで去っていった。


パトカーから降りてきた警官は、スライム騒動の時にも駆けつけた警官だった。

「つ、次はなんですか?!」

みな防護服を着用し、完全防備でテツオに問いかけた。



──とりあえずレンガに戻ったゴーレムの現場検証が進む中、テツオ、大沢夫人、工事業者二名は警官に事情を説明。

大沢夫人がレンガを購入した造園業者のことを話すと、詳しく事情を聞かれることになり警官らと共に警察署へ。


その後、工事業者は玄関の取り替え工事をなんとか終えて帰っていった。

そしてテツオは疲労のあまりリビングで寝てしまい、家族に工事終了の連絡するのをすっかり忘れ、翌日妻やルミから文句を言われたのは言うまでもない。


数日後。

大沢夫人が菓子折りをもって鉄野津家にお礼に訪れた。

あのゴーレムは例の造園業者が使役目的で海外から違法に輸入したものらしく、パーツ状態にして保管していた一部を誤って夫人に配送してしまったとのことだった。

無論、造園業者にはすぐさま警察の捜査が入り摘発されたそうだ。

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