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まものが あらわれた! …いや、あたしのウチに?!  作者: ism


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2/10

ゾンビが あらわれた!

ある土曜日の昼下がり。


鉄野津家はルミ以外全員出かけて家には長女のルミと柴犬みりんだけだ。


窓ガラスも綺麗に直ったリビングでスマホをいじるルミ。

窓の外を眺めるみりん。

庭に面した掃き出し窓前はみりんの定位置なのだが、もしかしたらまた変なものが来ないか見張ってくれているのかもしれない。


ピンポーン。

玄関のチャイムが鳴る。


ルミは、あ!ネット通販で頼んだ洋服が来たのかも!と、少しウキウキしながらインターホンを確認した。


そこにうつっているのは、はすむかいの根黒さんちのおじいちゃんだ。


町内会の役員を長年快く引き受ける人の良い明るいおじいちゃんで、顔を合わすとニコニコと挨拶をしてくれる。


あれー、根黒のおじいちゃんだ。なんだろ。


…そう思った次の瞬間、ルミは2日前の夜の母との会話が頭をよぎった。

「根黒のおじいちゃん、朝なかなか起きてこないから様子見に行ったら脳溢血で亡くなってたんだって。あんなに元気でついこの間だって家の前で立ち話したばかりなのに…」

十数年近所付き合いがあった母は少し涙ぐみながらルミと父親に話した。


…ん?亡くなったんだよね。生き返ったんかな?

いやいやそんなんある?


少しずつ怖くなってきたルミは返事をせずそのままインターホンの画面で様子を見た。


あのいつも笑顔のおじいちゃんとは思えない虚な表情で玄関のチャイムを何度も押し始める。そしてよく見ると、病院で入院している時に着るような服を着ており、口元をみると何か呟いている。


震える指で通話を押すルミ。

「がえっだよぉおお、がえっだよぉおぉ」

根黒のおじいちゃんは帰宅したことを繰り返している。玄関チャイムが壊れたようになり続けている。


「お、おじいちゃん、ここ鉄野津の家だよ!おじいちゃんの家、向こうだから!間違えてるよ!」

ルミは思わずインターホン越しに根黒のおじいちゃんに話しかけた。


ルミの声に反応したのか、チャイムをガンガンと拳で叩きはじめる根黒のおじいちゃん。

「がえっだぞぉおぉおおーおおぅいい」

7、8回目殴ったところでチャイムとカメラが壊れてインターホンの画面が真っ暗になり、チャイムが止んだ。


ルミはみりんを抱きかかえ、恐る恐る玄関ドアのドアスコープを覗き込んだ。


ガシャンッ!ガシャンガシャン!


ルミはビクッと肩を揺らす。

根黒のおじいちゃんは入り口のアルミの門扉を激しく揺らしている。


えええ?!どうしよう、怖い怖い怖い怖い!


門扉を揺らす大きな音にみりんもついに吠え始める。


ガシャンガシャンッ!ガラン…。

根黒のおじいちゃんは門扉を破壊。

ドン!ドンドン!

次は玄関ドアを凄まじい力で叩き始めた。


「やだやだ!なんなのマジで!」

みりんを抱えて泣きながら2階に駆け上がるルミ。

自室に入りドアを閉め、ドアの前に椅子や辞書など重そうなものを急いで置いていく。


そして道路に面した窓を開けて、目一杯大きな声で叫んだ。

「誰かぁ!!おじいちゃんがヤバいよ!助けてぇ!」


声を聞いた近隣住民が窓や玄関を開けて顔を出した。


隣の春場家のおばさんが大声でルミに話しかける。

「ルミちゃん!部屋から出ちゃダメよ!もう警察呼んでるから!」

異変に気付いていた春場家のおばさんはすでに通報していたのだ。


「うぇあぁああ!おばさぁーん!怖いぃ!」

ルミは大泣きしながら春場家のおばさんに助けを求める。


根黒のおじいちゃんは既に力のリミッターが外れてしまっており、完全に折れてしまった腕をさらにドアに叩きつけ、ついにドアも叩き壊した。


──その時、パトカーのサイレンが聞こえ出す。


鉄野津の家の前に止まった2台のパトカーから防護服姿の警官が飛び出した。

「確保!」


警官4名に一斉に押さえつけられるも、根黒のおじいちゃんはとんでもない怪力で警官たちを振り払った。

「なんて力だ…」

尻もちをついた若い警官をよそに、屈強なひとりの警官がおじいちゃんに飛びかかり取り出した注射器を首に突き刺した。


おじいちゃんはガクンと膝から崩れ落ち、そのまま動かなくなった。

恐らく、「遺体の状態に戻った」根黒のおじいちゃんはタンカに乗せられ警察の大型車両に収容された。


警官のひとりが窓から泣きながら顔を出すルミに向かって声をかける。

「大丈夫ですかー?ケガはありませんかー?」


ルミはヘタリとその場に座り込んだ。

「あーもぉー…マジ怖かったよぉー」

安堵からみりんを抱きながらまた泣き出した。

なんだかよくわからない様子のみりんは、ペロペロとルミの顔を舐める。


──ルミは様子を見ていた春場のおばさんに寄り添われながら、スライムの時と同じく警官から簡単な事情聴取をうけた。

その最中に、春場のおばさんから連絡を受けていたルミの両親が帰宅。チャイムも門扉も、玄関ドアも破壊された血まみれの家の入り口を見て唖然とした。


「ルミが無事でよかった…しかしなんでウチばっかり続けてこんな目に…」

ルミの父親はため息をついて肩を落とした。


直後、駆けつけた根黒のおじいちゃんの家族から土下座でもする勢いで謝罪をうける鉄野津家。


今日の昼前に、安置されていた病院からおじいちゃんの遺体が突如消え病院と根黒家は大騒ぎになっていたそうだ。

まさかゾンビ化して帰宅、しかも家を間違えて入ろうとしているなんて夢にも思わなかったという。


弁済は必ず行うという根黒家の遺族に対し鉄野津家の夫妻は、急におじいちゃんが亡くなられた上にこういう事態になってさぞかし大変でしょうから弁済などの話はまた後日行いましょうと、根黒家の人たちの人柄をよく知った上で心情を慮ってとりあえずその場は穏便におさめた。


門扉とチャイムはともかく、玄関が破壊されては安全に住むことは正直無理だ。


父親とみりんは家に残り、ルミとルミの弟、母親はしばらくの間ホテル生活を余儀なくされるのだった。


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