アークデーモンが あらわれた!
「おいおい、まさかコイツがモンスターを呼び寄せてたんじゃあ…」
ルミの父・テツオは物置きに仕舞い込まれていた不思議な石が装飾された木彫りの像を見て訝しんだ。
「これは──」
と、江楠賀が説明する前にルミが口を挟む。
「──ううん父さん、これ気持ち悪いデザインしてるけどウチのこと護ってくれてんだと思う。何となく」
江楠賀はルミの直感に少し驚きながら補足する。
「すごい、正解!よくわかったわね。これたしか北欧の狭い地域で信仰されてる守り神の像よ。日本で言うところのお地蔵様みたいな。でもかなり強力なやつ。その辺のお寺にある仏像を遥かに上回るわ。おじい様が旅行中にどうやってこんなもの手に入れたのかわからないけど」
江楠賀の話に、鉄野津家の面々はこの彫像の正体に驚きの表情を見せる。
だがルミの母・メイコは、新たに浮かんだ疑問を口にする。
「え、ちょっと待って。そんな強力な守り神がウチを護ってくれてるのにわんさかモンスターが出てくるっておかしくない?さっきだって守り神がしまってあった物置きの後ろから飛び出してきたし…」
江楠賀は、メイコのその疑問に対する答えを持っていた。
「物置きに近づいてハッキリわかりました。原因は鉄野津さんのお家ではありません。裏のお宅です」
テツオは驚いて物置きなら後ろの、壁を挟んで鉄野津家の裏の家を見上げた。
「裏?!裏って不破さん?何で?!」
江楠賀はタブレットを確認しながら言葉を返す。
「──不破アツトさん、大学で教授されてる有名な研究者の方ですよね?」
「今近隣の居住者の情報を確認して私も思い出しました。不破アツト教授…考古学・民俗学がご専門の。かなり前ですが教授の本を読んだことがありますよ。…“悪魔召喚術の変遷と歴史”、でしたっけ」
その本のタイトルに、突如不穏な何かを感じる鉄野津家の面々。
「なんか考古学の先生とは聞いていたけど…アクマ?そういう研究されてる方って知ってた?母さん」
テツオの問いにメイコも不安そうな顔で答える。
「いや私もそこまでは…」
裏の不破家は、鉄野津家が引っ越してくる前から住んでおり主人の不破アツトを含め家族はみんな気さくな人達だ。
近所付き合いはさほどないが、ゴミ捨て場などで会えば天気の話など雑談をすることもある。
「私、いわゆるモンスターに関する案件を20年近く担当しておりまして…その経験と元々の生まれ持った体質から“モンスターに気配”をかなり敏感に感じとれるんですが…」
江楠賀は自身の“専門家”として能力を前置きしつつ鉄野津家にしっかりと説明する。
「単刀直入に申し上げますが、不破さんのお宅のどこかの部屋が、魔界と繋がっています」
「えええっ!?」
鉄野津家は一斉に声を上げる。
「いやマジっすか?!」
江楠賀に帯同してきた斑多市警の警官・郡宮も突然のことに驚き江楠賀に確認する。
「このお爺様のお土産の彫像が、良くいえば悪影響を最小限に押し留めていたんです。悪くいえば効き目が良すぎて原因をわからなくしてしまっていたというか。モンスターたちは魔界と繋がった穴からうっすら漏れてる魔界の悪い空気に寄ってきていたんでしょう」
江楠賀の説明に狼狽え始める郡宮。
「うわぁヤバいヤバい!あ、すぐウチの宝葉に連絡します!」
慌ててスマートフォンを取り出し上司に連絡をする。
「鉄野津さん、すぐ避難して下さい。普通に生活出来ていたのが不思議なくらい、良くない状況です」
江楠賀は鉄野津家にそういうとスマートフォンで何処かに連絡を取り始める。
その言葉に一家はパニックに。
「マジかよ!母さん!とりあえず大事なもんだけ持ってすぐ出るぞ!」
「え!大事なもんってなに?!えっと財布と通帳と印鑑とカードと…」
「みりん!みりん連れてくる!」
慌てる父母をよそに柴犬のみりんを連れ出そうと家の中に向かうルミ。
「江楠賀です。鉄野津さんのお宅を訪ねたら予想外のことが…」
と、“本庁”に連絡をとりながらふと守り神の彫像に目をやった。
良く見ると、彫像の後ろには大きな亀裂が走っている。メキッと音を立ててさらに亀裂が広がった。
江楠賀は即座に理解した。
彫像の守護はすでに限界を超えていた。いつ“最悪の事態”が起きてもおかしくない。
──そう直感した次の瞬間。
ズドォォン!!
という爆発音とともに、家の屋根を突き破って不破家の中から巨大な人影が姿を現した。




