17:安息の日々
「アイル先生……現在、市場にない魔法筆への改造は……交流戦のルール違反になってしまいます……」
「はい? ……はぁ。これだから学園でやつは……」
学園長室でユリナが言ったことに俺は心底、落胆した。
確かに、成功すれば大きなアドバンテージとなる……だか、それは成功したらの話であり確証はない。
「そもそも……現行の魔法筆を作り変えたという話も聞いたことがありませんが……」
「んーーそこを何とか……」
「学園同士の交流戦というものはそういうものなのです……」
「……わかった。時間を取らせてすまない」
静まり返った学園長室をあとにし、交流戦メンバーにどんな顔を見せたものか……。その事だけが俺の頭では何度もループするのだった。
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「すまない! 魔法筆を作り変える事は交流戦のルール違反で出来ないみたいなんだ。だから、羊皮紙なしで魔法を使えるようには出来るかもしれんが、今回は諦めてくれッ」
放課後、交流戦メンバーが集まった訓練場にて俺は、自分の不甲斐なさを詫びた。
「先生……。僕たちが間違ってましたすみませんッ!」
そう言ったのは生徒会だった。
「えっ、いや。俺は……何も」
「違うんです先生。俺らは……先生を馬鹿にしてたんです。どうせ出来るわけ無いって。でも、先生は学園長にも頭を下げて下さったんですよね?」
いや、話には行ったが頭は下げてないぞと思いながらも……そんな事を言い出す人物は容易に想像できた。
ならば、便乗しない手はない。
「そんな事まで聞いたのか……」
肯定せず否定もしないものの、あたかもそれが事実だったかの様な言い回しを俺はした。
なぜならば、馬鹿にしてたという一言に一瞬だがイラッとしてしまったから……だか、ここまで来ればお互い様だろうとすら思える。
だからこそ、俺は彼らに聞く。
「お前ら、俺の指導……必要無いと思ってるだろ??」と。
そして、そんな彼らだからこそ俺に聞くのだろう。
「魔法筆屋に何を指導できるんですか??」と。
ならば、俺もする事がひとつしか無くなるではないか……。
「安息の日々――――」
そう言い指をパチンと鳴らし、学園中の魔法筆を破壊するのだった。