15:羊皮紙なしでも魔法を
リリィとの夕食中、訪ねる。
「リリィ、魔法筆にちょっと聞いて欲しいんだが……。羊皮紙なしでは魔法が使えない人間と空中にそのまま書ける人間の違いを聞いてくれないか?」
「わかったのです! リリィも教科書読んで気になってたのです」
リリィはペンデュラム・ウィッチを取り出し、うんうんと頷いている。
やはり、本当に会話ができるのだろう。
「なるほど、なるほど。……お師匠、デュラちゃんの話ではそもそも羊皮紙は必要ないらしいのです。簡単にいうと、空中に書いた文字は魔法筆から放出したマナの力と空中のマナが反応して『そう見える』だけらしいのです」
「……ということは、簡単にいうと空中のマナに触れて反応した光が書いているように見えるということか?」
「そういうことらしいのです。だけど、ほとんどの人間はそもそもマナを目視できないから魔法の発動にまでいかないらしいそうなのです」
「なるほどな~~、だからマナの溜まりやすい羊皮紙に『目視できるように』触れることで魔法が発動するわけか……これは困ったぞ」
「そうなのですか? お師匠は実際のところ魔法筆なしでも魔法使えるじゃないですか?」
「いや、俺じゃなくてな。交流戦に参加する生徒たちに羊皮紙なしでも魔法が使えるようにしてやるって言ってしまったんだよ……明日の放課後が憂鬱だぁ」
「お師匠が自らそんな約束を……。うんうん、その素材が手に入ればもしかしたらできるかもしれないのね」
「えっ? 今、リリィ……なんて??」
その後、リリィから聞いたデュラの話では空中のマナが反応する……俗に言うところの『インク』が魔法筆から出るようにすればいいとのことだった。
だが、これには二つ問題点がある……。
一つ目がインクの原料になる素材が簡単には手に入るものではないこと。
そして、二つ目が今の魔法筆にインクの通るガイドラインを開けないといけないということ……。
つまり、失敗すればその魔法筆は使い物にならなくなってしまうことを意味する。