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10:ユリナの魔法筆校

 校門の前までやってきた俺とリリィだが……。

 二人して、何かのアクシデントで帰ってもしょうがないで済まされるような事態が起きないかと待っている。

 そんな不審な俺らを見かけた警備員が声をかけてきた。


「どうも~~学園長のお知り合いのアイル先生でよろしいですよね?? 学園長から話は聞いているので案内しますね」

「いゃ…………そうです」


 なぜ噓でも違うと言えないのだ俺よ! 面倒事が目に見えているではないか…………よし! 昨日買ったサンデーグラスを渡したら、適当に他の都合が出来たとでも言ってこの街を去ろう。

 警備員に学園内を案内されながら、リリィに話しかける。


「――リリィ」

「お師匠……。この街から次の街へと向かうには学園長の許可証が必要らしいのです」

「……なるほど。それは困ったな」

「リリィたちは……袋の(ねずみ)なのです」


 生徒たちの青葉のような声で学園内は爽やかな朝の風が吹いているというのに、俺とリリィだけは判決待ちの囚人みたく足取りがさらに重くなっていた。


「こちらです。では、私は持ち場に戻りますので」

「……どうも」


 警備員までもがその仕事に充実感を見せているのに、学園長のユリナが助けを求める事とは一体何なのか……。

 個人的なしょうもないワガママであることを願いながら、扉をノックした。



 学園長室に入るとユリナが俺の姿を見るなり――。


「――――アイル先生ッ! 約束通り来てくれたんですね! 私はてっきり……とんずらするものだと思っていました。――――すみませんでしたっ!」

「まあ、俺も昔みたいに若くはないからな……それと、これはリリィが選んだものだ。受け取ってくれ」


 綺麗な柄の布袋に包装されたサンデーグラスを取り出して眺めるユリナは、まるで少女のようにそのガラス細工を眺めていた。


「良かったなリリィ」

「ふんっ。あの年代が好きそうなのを選ぶのなんて、リリィには朝飯前なのです」


 そんなリリィにユリナは――――。


「まあまあなセンスねっ。まあまあって言っても良い方の部類のまあまあだから、あなたを先生の弟子と認めてあげるわ!」


 なぜ素直にありがとうと言えんのかと思ったが、確執みたいなものがあるのだろう……。

 ここは先生と呼ばれた身として、本題を聞くしかない。


「それでユリナ……。『私を助けてください』とは一体、どういうことなんだ??」


 ユリナは生唾を飲み、「立ち話もなんですから」とソファーに腰掛けて言った。


「来月……他校との交流戦に負けたら私……そこの校長と結婚しないといけなくなってしまったのです」

「…………おめでとう。では、素敵な結婚生活を――――」


 そう言って、リリィと立ち上がったときだった。


「――――したくないから頼んでるんじゃないですかあああああ!!!」


 引き留めるユリナの腕力は強化魔法がすでにかかっているかと思う程……力強かった。

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