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15.神様の居住地




「おー速い!」


 ラーマンの船は何と人力だった。嫌、マン力と言うべきか。二人のラーマンが船を曳き、運河を滑って行く。


「お客さん、グランドロックさ行ったら、草まんじゅう食いなよ。うめぇーよー」

「兎人が売ってっからよ。値段もおてごろだ」


 ラーマンの船曳きはよく喋る。船頭も兼ねているんだろう。こうやって、ヨーンの森を行き来して生計を立てているんだろう。


「神様って、どんな姿してる感じ?」

「おめぇ、そりゃ神々しいんぜ」

「んだんだ。まさに神様よ」

「なんか抽象的だな」

「あまり姿を現さないのかもしれませんね」


 途中、いくつか村に立ち寄った。クエストを回収する為だ。ラーマン達はその間、運河の係留地で待っていてくれた。非常に助かる。ハーピィの村や狐人の村等様々な村があった。


「スキルの素も貯まってきましたね」

「三次職になってから使いたいな。次のクラスチェンジがいつか分かるか?」

「どうも十五レベルごとみたいです。先行組が昨日達成したみたいですね」

「随分先まで行ってるんだな」

「私達もすぐですよ」


 森の運河は緩やかに蛇行している。上空から見たらアマゾン川のような形をしているだろうな。その運河を船が時折行き来していた。しかし、プレイヤーの姿を見ない。行ったきりなのかな。


「ほら、見な。あれがグランドロックだべ」


 ラーマンが指差す先、運河の正面に巨大な岩山が見えてきた。岩山とは言ったが、それは完全な立方体だった。高さは三十メートル程だろうか。あまりの大きさに見上げるような姿勢になる。


「すげぇ!でっけぇ!」

「マジ巨大なんですけどー」


 テルとぽぷらが驚いている。


「んだんま、オラ達はここまでだべ。周りに屋台出てっから、美味いもんでも食ってけ」

「草まんじゅう忘るでねぇぞ」


 そう言いながら、ラーマン達は引き返していった。俺達は感謝の言葉を述べて、それを見送る。


「さて、どうしましょうか」

「神様に会いに行きたい」

「さんせーい!」

「興味はあるな」

「行ってみましょうか」


 グランドロックには普通に入る事が出来るらしい。神聖不可侵な感じかと思っていたので、拍子抜けしてしまった。


「ここから入れるみたいだな」

「プレイヤーが並んでる」


 テルの言うように、プレイヤーが並んでいる。メインクエストに関係有るからなのかな。俺達も最後尾に並んでみた。


「らっきょとタリじゃないか。久しぶりだな」


 前に並んでるパーティーの魔法使いから声を掛けられた。この眼鏡フェイスは、鑑定クエストの時に一緒になったヤマトだ。


「ヤマトか、久しぶり。そっちもクエスト貰いに来たのか?」

「まぁそうだな。森の奥まで行ったら、ここでクエスト受けなきゃいけないのが分かったから引き返してきた」

「え、そうなのか。俺達は運が良かったのか」

「ぽぷらの買い物に付き合って正確だったな」

「二人はクランに入ったのか?」


 ヤマトがこちらを見回して聞いてくる。


「入った。このメンバーで全員の少数クランだけどな」

「楽しそうで良いじゃないか」


 そんな雑談をしながら順番を待つ。ヤマトが先の様子を教えてくれた。各村に敵が一定時間で湧くので、レイドを組んで倒していくらしい。一箇所倒すと次の村への選択肢が出て進む事が出来る。


「一緒のレイドになったら頼むよ。うちのパーティーは魔法使いが多いから、物理職がいるのは助かる」


 ヤマトのパーティーメンバーは魔法使い三のタンク一、支援一らしい。こっちと組むのは相性良さそうだな。


 ヤマトパーティーが先にグランドロックの中に入って行く。石の表面に吸い込まれて行くのは不思議な感じだ。


「次の人達、どうぞ」


 エルフのお姉さんが促してくれた。指示に従って全員で進む。


「おーひろー」

「天井高いなー」


 中は想像よりも広かった。蔦の絡まった壁面が仄かに光っており、空間を照らしている。奥に小さな泉が有り、そこに木が一本生えていた。大きくは無いが、神々しさを感じる。


「ようこそ、僕の家へ」


 木の方から声がした。木が喋ったのか?俺達が泉に近付くと再び木の上の方から声がする。


「こっちこっち」


 木をよく見ると、枝にリスが座っている。茶色の体に赤のラインが入った珍しいリスだ。


「あなたが神様ですか?」

「如何にも。ヨーンの森を護るスクワリートだよ。君達は外から来た人だね」

「きゃわいい」

「喋るリスだ」

「そうです。うちのクランメンバーが失礼を」

「気にしなくていいよ。それよりもね。そんな君達にお願いがあるんだ」


 スクワリート様は事情を説明してくれた。現在ヨーンの森に魔の手が伸びているらしい。幽界の王、サルマルが尖兵を送って来たのだ。森の南は幽界の将軍達に占領され、森の平安が失われている。プレイヤー達は手を合わせ幽界の占領から村々を奪い返して欲しい、との事だった。


「是非も無し」

「奪い返す事には自信があります」

「そうだな。スクワリート様、受けますよその依頼」


【メインクエスト:幽界の尖兵を開始しました】


「よろしく頼むよ」


 スクワリート様に見送られて俺達は旅立つ準備をする。最初の村に向かおうと移動しようとした時、タリが大変な事に気付いた。


「草まんじゅう。買い忘れたな」


 結局、草まんじゅうを買いに戻った。折角ラーマンが勧めてくれたしな。



 向かう先はオークの村。この場合のオークは森の住人だ。決して女性を襲ったりしない。道を進むと幽界の魔物が襲い掛かかって来た。スカルマンだ。


「鑑定」


▶スカルマン

 幽界の尖兵。スケルトンと違い。それぞれが意志を持つ。物理耐性が高く。魔法に弱い。頭が弱点。


「物理耐性高めだ。魔法メインで。頭潰せば倒せるらしい」

「魔法了解」

「先手必勝。マジックボム!」


 ぽぷらが投擲した瓶がスカルマンに当たると、緑の爆発を起こした。魔法属性のボムか、中々良い攻撃だ。スカルマンは足が無くなったのか、その場で転倒した。


「火行の太刀」


 タリの一太刀で頭が砕かれる。当たりさえすれば、魔法で一撃だな。


「メインアタッカー交代ですね。スカルマンが出たらタリさんと私で倒しますので、らっきょさんとテルでタンクと支援お願いします。ぽぷらはヒーラーとサブDPSで」

「支援了解」

「了解姉貴」


 道中出て来た敵は三種類だ。スカルマンとゴースト。それとダースドッグだ。スカルマンとゴーストは魔法に弱く。ダースドッグは素早いが物理と魔法に弱かった。比較的楽に進む事が出来ている。


「あれがオークの村だな」


 オークの村は今は入れないようだった。次のレイドまで二十分と入り口に表示されている。


「お、来たな。レイドよろしく頼むよ」

「おう。三パーティーでのレイドか。初めてだ」

「こちらこそよろしく。かりゆしだ。こっち三人ですまないね」


 ヤマトが待っていた。もう一パーティーは三人組で大剣使いとハンマー使い。ヒーラーの三人だ。


「ヤマトとかりゆしさんのパーティーで組んで貰った方が良さそうですね。魔法使いの方、どなたか一人こちらのパーティーに入ってもらえますか?」

「そうね。私が参加するわ」


 パーティーの最大人数は七人だ。これでファーニーを合わせると七、七になる。加わってくれた魔法使いの女性は翠さんだ。雷と風の複合魔法が使えるらしい。複合魔法とかあるんだな。ジョブ名は雷魔法士。


「よろしくね。魔法発動まで時間掛かるのはごめんなさいね」

「任せて下さい。伝道師のダイモンです。ヒーラーやります」

「弟のテルっす。バードテイマーやってます!こいつはファーニー。タンクっす」

「陰陽師のサルバドール=タリだ。魔法剣士だと思ってくれ」

「ユーティリティ、ぽぷらでーす。よろー」

「覚醒者のらっきょだ」

「凄い。一つも聞いた事が無い職だわ。特にらっきょさんの覚醒者は興味深いわね」

「はは。まぁ詳細は秘密で」 


 覚醒者になってから色々調べてみたが、他に覚醒者になったと言う報告は無かった。まさかとは思うが、ユニークジョブなのかもしれない。(槍)と付いている事から、(剣)等もあるのだろうが、まだ発見されていないのかもな。



 二十分が過ぎ、レイドが開始される。


 村に入ると、悪魔のような姿の人型の魔物が待ち受けていた。二本の角が特徴的だ。


「このオーク共の村は頂いた!サルマル様の軍門に下れ!」


▶幽界の将軍 ビダール

 幽界十将軍の一人。二本の角にそれぞれ、火と闇の力が宿っている。毒に弱い。


「火と闇に注意!ぽぷら、毒使え!」

「毒了解」


 レイドボスなだけあって攻撃が強力だ。タンク二人のHPがモリモリ削られていく。ヒーラーがフル稼働だ。定期的に火柱の範囲技を撃ってくるのに巻き込まれると陣形が崩れる。立て直すのに時間を使ってしまう。闇の範囲技はさらに厄介だ。


「喚び出し来るぞ!」

「詠唱準備!」

「前出るぞ!」


 闇の範囲技は眷属喚び出し。あまりに数が多く捌ききれないと判断した為、タンクさんが真ん中で挑発、タンクさんごと範囲技を撃つ作戦に移行した。タンクさんはダイモンの防護魔法を重ね掛けして耐えて貰う。その間、抜けたタンクの穴を近接組三人で埋める為に強引にビダールに仕掛ける。


「魔法いける!」

「マジックヴェール。ストックリカバリ」

「防御姿勢!」

「ストーム!」

「フレイムライン!」

「プラズマブラスト!」


 三人の魔法使いによる強力な範囲魔法によって闇の眷属が一掃された。特に翠さんのプラズマブラストは派手だ。極太のビームによる薙ぎ払いは浪漫を感じた。


「まずい!ファーニーが行動不能だ!」


 しかし、ファーニーが耐えきれなかった。現在蘇生魔法は発見されていない為、戦線を離脱する事になる。


「まずいな。タリ、俺が覚醒するから、切れたら次頼む」

「分かった」

「ぽぷら!ありったけの毒瓶投げ入れろ!覚醒!」

「まっかせろー」


 黄金のオーラが全身を覆う。全能感が湧き上がって来る。


【覚醒の使用を確認 残り時間二十九秒】


 そこから三十秒は耐える時間だった。ぽぷらの毒によりジワジワとビダールのHPが減るのを待つ間、ひたすらビダールの攻撃を往なす。大技は使えない、今はドットダメージが優先だ。オーラが切れ、ステータスが低下する。


「交代だ。天将回現:騰蛇」


 背後から現れた紫の蛇は、太刀では無く、タリに纏わりつく。


「紫焔憑依」


 紫の蛇が羽衣のようにタリを護っていた。その動きは明らかに強化されていて、全てのステータスが増加しているのが分かる。特に耐久力が上がっているようだ。切り結びの間に火魔法を受けているが、そこまでのダメージを受けていない。HPは後少しだ。たが、紫の焔が消えていく。


「時間切れだ!」

「俺達の番だろ!」

「おらあああ!」


 大剣さんとハンマーさんが前に出てくれた。あとミリだ。頼む耐えてくれ!俺も下がったステータスだが、槍を突き入れる。タリも並んで斬りつけている。タンクさんも戻って来てくれた。


「おおおぉぉ」

「早く倒れろー!」

「ぬうううう」


 もう駄目かと思った瞬間。ビダールはポリゴンになって消えていった。


【メインクエストボス:幽界将軍ビダールを倒しました】

【レベルが上がりました】


らっきょ Lv23


ジョブ 覚醒者(槍)


サブジョブ 商人


筋力   43→44


頑強   39→40


知恵   24→25


器用さ  39→40


敏捷   34→35


魔法抵抗 29→32


運    11→12


スキル 


互換性Ⅱ


空歩Lv1 覚醒Lv2


重心移動Lv3 天柱落Lv2 身体能力向上Lv5 健康Lv2


頑強Lv4 健脚Lv3 体力増強Lv4 体捌きLv2


槍術Lv4 棒術Lv4 挑発Lv4 交渉術Lv1


鑑定Lv3


アビリティ


両手突き 打ち払い 投槍 上段突き 


ハーフスイング 三連突き 牙突

 

 流石に強敵だった。覚醒のレベルが上がった。内容としては強化率と制限時間が四十秒になった。これは嬉しい。


「強いなあんたら、まさか一人でレイドボスを抑えるとは」

「助かったよ」

「こちらこそ」


 オークの村は解放された。消耗品を買い足し、次を目指す。選択肢は三つ出て来た。また一緒に戦う事もあるだろう。フレンド登録をして分かれる。今日はここまでという事で解散となった。次は二日後と約束する。明日は協会に行かなければいけない。テルは起きれるのだろうか。ログアウトし、眠りに付いた。

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