[EP.3-0]寄り添いあう魂
今日は少し特別な日だ。
人里離れた場所でラムサスとフィーネと共に暮らし、毎日が妙な刺激に満ちてはいる。
それでも今日は……少し違う意味で心が落ち着かない。
アイラが、今日からこの家で暮らすことになった。
元はと言えば、あいつに炭鉱の物資配達を頼んだのがきっかけだった。
山道の運搬車のタイヤが外れて、手伝いに行ったのが最初の接点。
背はあまり高くないが力はあるし、声もよく通る。人と距離を取る俺が気づけばずっと話していた。
――ああ、思い返せばあの頃から少しずつ変わってたのかもしれないな。
ラムサスとフィーネには事前に話していた。「俺の知人がしばらくここに住む」とだけ。
多くは語らなかったが二人は特に否やもなく頷いた。
「にぎやかなのは大歓迎だ」なんて、ラムサスが珍しく冗談を飛ばしていた。
アイラがやって来たのは午後の霧が少し晴れかけたころだった。
荷物は多くない。布の袋に包んだ道具や食材を持って、戸口に立っていた。
「ここが噂のあんたの変な家か。思ってたより広いね」
そう言って彼女は笑った。
すでにフィーネが奥から顔を出していて、ラムサスも後ろで何か煮込みながらこちらを見ていた。
普通の人間なら一瞬で逃げ出してもおかしくない。
人とは思えぬ文様と異質な雰囲気、何より目の奥の深さがまるで違うからだ。
でも――アイラは眉ひとつ動かさなかった。
「へえ、あんたたちが、あの人の“家族”か。よろしくね」
軽く手を振り、少し戸惑いながらも自然に挨拶を交わした。
ラムサスは「……変わった人間だな」と口の中でつぶやき、
フィーネは何かに安心したような顔をして微笑んでいた。
夜、アイラが持ってきた野草のスープを皆で食べた。
フィーネがそれを一口飲んで「やさしい味がする」と言い、
ラムサスが「おかわりはあるか」と真顔で尋ねたときアイラは吹き出して笑った。
この家に“新しい音”が混ざった気がする。無音の空間に、あたたかい生活の音が溶け始めたような。
きっと、いい方向に向かってるんだろうな。
そう思わせてくれるのがアイラという人間の不思議なところだ。
――今夜は、久しぶりに夢を見れそうだ。
AC.0510 著:レスター




