第7話 何やら動き出しているようです!!
お鍋を囲み、家族で談笑している中、僕はこれからのために、中学はどのように過ごしていたのか、そして、高校はどこを選んでいたのかを聞いたのだが、高校は志願制との事で、家からも近く、偏差値も高い星臣学院に入学する事を決意するのだった。
その後更に情報収集を進め、およそこの世界について把握する。
【???】 とある病院の研究室にて
そこでは日々、同じ検査を繰り返す女性の陰があった。
目には隈を作り、少し痛んだ髪を後ろでくくっている研究員達。
「はぁ、今日も検査か、明日も検査、明後日も検査……
こんなの頭おかしくなるわよ……そもそも何で男性の精液検査を自動化しない訳?
現代の技術なら可能でしょうに」
私には大学時代から付き合いのある先輩がいる。
給料も高いし、仕事も意義のあるものだし、先輩から誘われて、この病院のお抱えになったのだ。
「先輩、文句垂れてないで仕事してくださいよ……」
「分かっているわよ……この仕事を目指した当時は、少しでも男性の因子に触れられるし男少化社会の役に立つと思っていたのだけど……」
「そんな変態的かつ崇高な理由があったんですねぇ~」
「何よその褒めてるのか貶しているのか分からない言葉は」
「いやだって、先輩って社会の役に立ちたいとか、思うようなタイプでしたっけ?どちらかというと推しに貢ぐために躍起になって血眼で働いているタイプじゃないですか?」
「あんたねぇ……私だって真面目だった時期はあるわよ……だいたい、あんたも似たようなものでしょ?」
「それは、そうですが……それを言えばこの手の仕事を選んだ研究員は皆同じですよ。やだなぁ~私の2年後の背中が目の前に……」
「失礼しちゃうわ……そもそもっ……てあれ?
何だかフルーティーで濃い匂いが……」
「先輩ついに頭おかしくなりましたか?
大体、ここにはそんなもの、無いですよ。
誰かが乳酸菌豊富な白い原液にでも取り替えたんじゃないですか?」
大体この仕事の影響で、鼻がおかしくなるんだよなぁ……最初はこういう感じなんだ!と新鮮だったものの慣れてくると、なんというかただ不快だし。
「いえ、明らかにタンパク質を含むそれではあるのだけど……
というか何よこれ……少し異常..いや機能が発達しすぎているのかしら?
量も多く、濃度も高い……運動率も……って元気すぎでしょ、形態も正常、特に感染症の類も見られない、至って健康ではあるけど……」
「何ぶつぶつ言ってるんですか?」
「23番の患者さんのカルテ持ってきてもらえる?」
「自分で行ってくださいよ~」
「今手が離せないの!」
「手が、じゃなくて目が、の間違いでしょうに……はぁ、分かりましたよ。
後でジュース一本お願いしますね」
「ええ、約束するわ」
そういいながら、何やらヤバイ雰囲気で機械に覗き込む先輩を背中に、患者さんのカルテを借りに行く。
「これかな?……よいしょっと」
そこに載っている男の子はかなりのイケメンだった。
「おおおぉぉ……こんな人本当にいるんだ……」
ぼーっと眺めながら研究室に戻る
「先輩!この患者さん、エグイです!激やばです!」
「ありがとう、何がやばいのかしら?」
「これ見て下さい。」
「ん?……ってえ!?何この子!ハイスペックすぎない?」
「ですよね、そうなりますよね……」
「い、いやぁ、それは今はいいのよ……あなたも見て頂戴、この結果を」
「ふぇぇ?やば、このイケメンの精液ですよね、人間ですか?」
「分からない……ただ一つ言えるのは、男としてこれ以上ない程に優秀過ぎるという事かしら」
そこに羅列される数値をみて私は驚愕する。
そう、男性の子孫維持能力は年々減少傾向にあり、いまでは細い針の穴に紐を通すような、そのような緻密な過程を経て受精へと至る。
(だけどこの人のは違う、これだけの運動量があればかなりの高い確率で妊娠出来るはず……)
「これ下手したら、小さい国買えるくらい価値ありませんか?」
「私もそう思う……これは上に報告した方が良さそうね……」
「そうですね、こんなのは前代未聞です。
もしこの人の優秀な遺伝子が次代にも受け継がれるなら、そこから生まれた子どもで男性だった場合無双しますよ?」
「ええ、今の日本には欠かせないわね、赤ちゃん無双してもらわないと困るわ、私たちの年金がかかってる……」
「先輩……私そこまでは落ちてませんよ?」
「う、うるさいわね!いいでしょ!先の事を考えると不安になってくる年なのよ!あなたも二年後分かるわよ」
「は、はぁぁ……」
疑いの目を向け続ける私であった。
【???】 会議室にて
ここは少子男少化対策本部に備え付けられた、とある一室である。
そこには、スーツを着た50代程の3人の女性が話をしていた。
「なに?それは本当かね?」
「ええ、間違い無いかと、このデータによると、通常の男性のおよそ20倍程の機能を持ち合わせていると」
「それは凄い……もしその原因を調べる事ができ、全ての男性を活性化させるワクチンを開発できれば我が国は世界に先んじて、この少子化の流れに終止符を打てる」
「はい、これは国立病院からのデータです。
そのため、かなり信頼性も高いです。」
「そうか!それは良くやった!これで暗い時代も終わりだな……」
「先ほどから聞いていれば、まだ希望が見えただけで何の解決にもなっていませんよ。
寧ろここからが勝負です。本人に許可を得る必要もありましょう」
「ああ、そうだな」
「それに、いくら希望とは言え、本人が研究に使う事を認めなければ、それは人権侵害に成り得る。
勝手に使う事は出来ません。」
「となると、いくらか本人を納得させられるだけの予算も組んだ方が良いでしょうね」
「仰る通りですな、頼めますかな?」
「国の一大事です。任せて下さい」
「今回は財務省のやつらとて、頭を縦に振るでしょう」
「「ですなぁ」」
「となると、献精施設の建造、並びに備品の一新。
これらの事業を上手く纏め、進めていく必要もあるでしょう」
「これが上手くいけば、男性はより活発に施設へ足を運ぶでしょう。
5年10年じゃ収まらないかもしれないが...この大きな大きなプロジェクト、必ず成功させましょう」
「そのためには、国民の理解も必要ですね」
「……それは任せて下さい」
「まさか、次の選挙に立候補されるので?」
「なに、当てはありますよ。私とてもう30年以上政治屋さんですから」
「我々も協力しましょう」
「ですな」
「ありがとうございます。三位一体、みなで協力してより良い日本を作っていきましょう。」
「ええ」
「そうですね」
派閥を超えた関係が纏まり、チームとしての闘争が始まる。
一方そのころ、葛野家では盛大にパーティーが行なわれていた
「お兄ちゃん、15歳の誕生日おめでとう‼」
「とおる、15歳の誕生日おめでとう~!」
「二人とも、ありがとう!」
そう言って僕は、ケーキの上にあるロウソクに息を吹きかける。
「おお~いっきにいけたね!」
「そうね~、縁起が良いわねぇ」
「ははは、これくら普通だよ。にしても凄く美味しそう!これ駅前の高いケーキでしょ?」
「ふふふ」
「お兄ちゃんは甘党だもんね~!」
そう、僕の意識がこの世界にやってきてから、早くも二週間以上が経過した。
最初は色々と戸惑う事も多かったけど、家族の支えがあってかなり慣れてきた。
水姫と毎日散歩に行っていた事もあり、家の周辺に何があるか、だいたい把握できるようになる。
高校生になっても迷子になるような事はないだろう。
「それにしても、とおるはもう15年生きたのねぇ~」
「お兄ちゃん昔はちっちゃかったのにね!」
「いや、水姫よりはずっと大きかったからな?」
「私はまだ成長期だもん!まだまだ伸びるもん!」
「水姫、知ってるか、女の子は中学生の段階で、身長が止まる子がほとんどなんだぞ」
「え……冗談言わないでよ~!」
「水姫……それは、いや……やっぱり母さんは何も言わないわ」
「ちょ、ちょっと!その途中で止める優しさやめてよ!寧ろ色々察するじゃん!ムキーーーー!!」
「ははは、まぁ水姫は可愛いんだから、そのままでいてよ」
「ふ、ふ~ん、まぁ、それなら?
お兄ちゃんのために可愛いみずきでいてあげる!」
「何で急にツンデレ?」
「昨日読んでた漫画のキャラが可愛かったから」
「なるほど理解」
僕の疑問には、すぐに答えが返ってきた。
「あら、仲良しさんね、微笑ましいわ」
「お兄ちゃんと私は、例え世界が違っても巡り合える程の絆で結ばれてるのよ!」
「ははは、確かにそうだな」
(ほんと、確かにそうだなぁ……確かにそうなんだよなぁ……)
「あらあら、いいわね!母さんも混ぜて~」
「勿論だよ!お母さんは特別なんだから!」
「嬉しいわぁ~」
「二人とも、嬉しいけど恥ずかしいよ……紅茶が冷める前に、ケーキ食べちゃおうよ」
「あ~、お兄ちゃんが照れた!」
「あら、いくつになっても可愛いわねぇ~」
「はいはい、その辺でストップ!」
「ふふふ、そうね。とおるはもうすぐ高校生だもんね」
「私もすぐに追いつくよ!」
「まぁ、頑張って追いつかなくても学生なんてあっという間だよ」
「あら、母さんもそう思うわ~、二人とも、貴重な今をしっかり楽しむのよ!」
「うん!」
「ああ」
いまの家族とかなり打ち解けたと思う。
毎日が新鮮で、毎日が幸せで、毎日が笑顔で溢れてる。
葛野家は今日も幸せで溢れていた。
「うん……甘い」
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因みにですが、主人公の妹、葛野水姫のイメージを
AI画像で作ってみたので載せてみます。
本日も閲覧して頂きありがとうございます!
日を追うごとにブクマも評価も増えており、大変嬉しい限りです!
皆さま本当にありがとうございます。
また、皆様の応援のおかげで、日間現実世界〔恋愛〕ランキングBEST100で
なんと「5位」になっていました!凄い!!
思わず興奮して昨日食べた炒飯も鼻から零れ落ちてきそうな勢いです!
引き続き応援して頂けると幸いです!
「まぁ、頑張れよ!」という方は、ぜひ(・∀・)_bや★★★★★も
宜しくお願い致します!感想やレビューも拝読しております。
元気になるような、優しいコメントの数々、本当にありがとうございます!
引き続きこの作品を楽しんで頂けると幸いです(*‘ω‘ *)
余談ですが、炒飯をお皿に移す前に、少しだけゴマ油を
垂らしてあげると、風味が出て美味しいですよ!
とは言え、最近は卵も高いので少し贅沢品となりつつありますが...
っと、一人暮らし学生である作者からの浅知恵でした。




