第20話 配信活動の許可を貰ってみます!!
白石 晴の幸せな生活は、一晩にして一変してしまった。
それ以降は彼自身も一変してしまったが、徐々に人としての心の在り方を取り戻す。
しかしそんなハルは何がきっかけか、未だ学校には来ていない。
そして僕達は、ハルにそんな背景があったとは知りもしなかった。
「はぁ~、ハルの奴は今日も休みかぁ~」
「……もう一週間になるね。」
「だよなぁ~、流石にちょっと心配だよな」
僕はそうちゃんと2人、学校でハルについて話している。
クラスレクも終わり、通常授業が始まってもう一週間だ。
まだ色々と分からない部分もあるが、おおよその高校生活には慣れてきた。
「……でも面倒で来ないのは普通じゃない?」
「まぁ、男子ならそういう人も多いって聞くけどさ、ハルはそういうタイプの人間じゃないだろう~、けっこう真面目ちゃんなイメージあるし」
「たしかに、俺もそのイメージ……」
「にしても理由が分からないよなぁ~」
「だね……」
「先生に聞いても、同じ男子とは言え個人情報だから詳しい事は話せないって言ってたし、何か家庭の事情とかなのかな?」
「妥当だね」
「だよな~、病気とかしてなきゃ良いけど、連絡も返って来ないし流石に心配だよな……」
「お見舞い行こうにも住所とか知らないよね」
「それな~、何かいい手立ては無いものか……ハルがいないと部活の件も進められないしな」
「香織にも相談してみる」
「あ~、かおりんなら何か良案考えてくれそうだな~」
「いつの間にやら妹に変なあだ名が……」
「語呂が良いから馴染みやすいよ~」
「俺も使ってみようかな?」
「流石に兄からも言われるのはどうなんだ?」
「変かな……?」
「さぁ……?」
「……悩みが尽きないね」
「大事な悩みと下らん悩みで倍増しだな」
そうこう2人で悩んでも、答えが出ないため、一先ずは保留となるが……
いくら考えても、また同じく保留となるだけだった。
「そういえばさ、配信とか始めてみようと思うんだけどどう思う?」
「大丈夫?」
「どういう意味?」
「……そういうのって金銭的に困ってやる最終手段なイメージ」
「あ~、まぁ男子だと少ないし、実際やってるの少し見てみたけど金クレしかいなかったからな~」
「そうそう」
「何て言うかさ、世間に発信出来るメディアが欲しいんだよね」
「なぜに?」
「単純に楽しそうというのもあるけどさ、やっぱり発信媒体があると世の中に対して影響力を持てるじゃん?」
「そだね」
「現状男子も女子も窮屈さを感じる世の中だし、辛い思いをしている人も沢山いると思うんだよ」
「ふむ」
「そういう人達の居場所?みたいなのが作れたら良いなと思う訳よ」
「それはまた崇高な……」
「それでいて、男子が表に見えるようなヤバイ人ばっかりじゃないって事も発信したいし、男子側にも女子側にも、人に優しくなれない今の社会はどうなの?ってアンチテーゼを突きつけたいんだよね」
「つまりどゆこと??」
「ほら、ハルとかそうちゃんとか僕はある程度性格的に柔和な感じがあるけど、世の中の一般的な男子はそうじゃ無い訳じゃん?」
「うぃ」
「つまり暴力的だったり、我が儘ばかり言うような人が男子というイメージが世の中にあるわけじゃん」
「うぃ~」
「でもそれを是としている社会もある。だけどそれが良い事とは思わない。寧ろ柔和で人に優しく出来る人が一般的になって欲しいと思うわけ」
「ほう」
「だから、暴力的じゃない男性像を提示して、それに共感してくれる男性を広げる事で、男性も女性もより過ごしやすい社会になると思ったの」
「何となく分かった気がする」
「……という建前が6で、女の子にチヤホヤされたいが4くらいかな?」
僕がそういうと、そうちゃんは頬杖をついていた手が離れ、まるでガクッっと効果音が入るような感じになっている。
「とーちゃんはとても立派な考えを武器にチヤホヤされたかったんだね」
と苦笑いを浮かべながら言ってくる。
「そりゃそうじゃん、人から好かれて嫌に思う人なんていないよ~、大変だろうけど自分を好きでいてくれる人が沢山いるというのは、とっても楽しそうじゃない?」
「……うん、まぁ……そう思えば?」
「あんま思わない感じ?」
「リスクと天秤にかけると、絶妙かな」
「例えば自分の作った曲がさ、100万人の人に聞いてもらえてそれを評価して貰えるとしたら?」
「何それ神じゃん」
「影響力を持ってチヤホヤされるのも悪くないだろう?」
「何か言いくるめられてる気がするけど、悪くは無い……」
ここ数日の付き合いでそうちゃんはとにかく音楽という物が大好きなんだと知った。
そして音楽の事を褒めたり、好きな事に共感するととても嬉しそうにする事を知った僕だからこそ出る言葉だった。
そして僕は一つお願いをしてみる事にした。
「それで配信の話だけど、雑談メインが良いかなと思っていて、良かったら配信中に流すバックミュージックを作るのお願い出来ないかな?」
「お~、良いよ、楽しそう」
「本当に!ありがとう!60分動画で何曲かリピートしながらって考えているから、気分に合わせて使いやすいような曲が複数あると嬉しい!」
「まかせろり~」
「頼のもしいたけ~、作曲者名とか載せると思うし、何かそういう活動用の芸名?みたいなのも考えておいてくれると助かる!」
「うぃ~」
着々と僕の中で構想を練って企画を進めている中で、そうちゃんに音楽をお願いすると、とても嬉しそうだった。僕が始める配信に一枚嚙んで、新しい物を一緒に作り上げるというのが新鮮だからだろうか、相変わらずマイペースな話し方ではあるが、そうちゃんの目は凄くキラキラと輝いていた。
「とりあえず、ハルが学校くるまではそういう部活の前哨戦?みたいな感じでさ、僕のやりたい配信に付き合ってくれると助かる!」
「うぃ!」
そんな感じで色々と話しつつ今日も学校を終える。
自宅に帰った僕は、いよいよ形にしていきたいと思い、夕食時に家族にも相談を持ちかけるのだった。
「そういえば母さん、最近やってみたい事が出来たんだけどいいかな?」
「なにかしら~?」
「ネットで動画配信しようと思うんだけど……」
「あら、それは本気?」
「大真面目だよ」
「……やっぱりお小遣いが足りなかったかしら?」
「いやいやいや!全然足りてるよ!ただやりたいって事!」
「お母さん、多分最近はインターネットで動画配信とかするのも主流になってきたし、お兄ちゃんはそういうのでやりたいって事じゃないかな?」
「流行りなのね~、時代ねぇ~」
「まぁ、興味本位もあるけど一番は影響力を持って色々な人と交流してみたいし、辛い思いを抱えている人とか男性と話した事も無いっていう人とか、同じ男性同士でつながりが無いって人達の居場所になって寄り添えるような事がしたいと思ったんだ」
「そうなのね~、危なくは無いの?」
「まぁ、有名税みたいな意味で言えば危ないとは思うけど……最初はコンセプト決めて雑談メインにしようと思ってて、顔出しは無しでいこうと思ってる!」
「危ない事を進められる親はいないわよ?」
「まぁリスク無く影響力を持てるとは思わないけど、個人情報の取り扱いはしっかり注意するし、顔出しするとしたらそれなりに有名になれてからすると思う。その時には事務所に入るなり立ち上げるなりするから、個人のアカウントが組織運用に変わるし、安全の確保の上でも出来ることは増えると思う!」
「お兄ちゃんが予想しているよりも、ネットって怖い所だし、お兄ちゃんならすぐ伸びちゃうと思うから、ある程度事前に対策は必要だと思うよ?……でも私はお兄ちゃんがやりたいって言うなら全力で応援したい!」
「そうね~……わかった、私もとおるの事を応援するわ、あまり家では仕事の話とかはして来なかったのだけど、母さんの会社はマーケティングとか、SNS広告とか、インフルエンサーのグッズ販売に関する仕事とかもやっていたりするの。だからある程度とおるがやりたい事とやっている事は近しいのよね」
「おお、そんなに色々やってたんだ……」
「私も知らなかった!」
「やるからには本気でやって貰うわ、とおるはその配信活動で50万人を目指しなさい、そしたらうちの子会社として事務所を立てるから、母さんの会社でとおるのバックアップと安全面についても面倒を見るわ、そこまで出来たら母さんとしてはOK出せるけど、難しいなら正直リスクもあるからやめて欲しいかな」
「50万人かぁ……やりたい気持ちはあるけど、中々大きい壁だね……」
「お兄ちゃんなら多分一瞬だよ?ネットで男子を求める需要に対して、共有が足りてない、言わばブルーオーシャンだもん、絶対すぐ伸びるよ!」
「僕もそうは思うけど、いずれにせよコンテンツ性は大事だし、50万人は簡単な事では無いと思うけど、全力で頑張ってみるよ!というか、母さんはそんなに自由に決めちゃって大丈夫なの?上司とか怒ったりしないの?」
「あら、言ってなかったかしら?母さんの経営している会社だから大丈夫よ」
「ん?」
「あ~、お兄ちゃんはその辺曖昧なんじゃない?……つまりお母さんは社長って事だよ!」
「ええええ!?いや、確かに色々贅沢させて貰ってるし、役員とか上役なのかな?とか重要なポストにいるのかな?とは思ってたけど!社長だったとは知らなかった……」
(というか、前の世界の母さんは平社員で苦労していたのを知ってるからな、世界は違えど同じ母さんだし先入観もあってか社長とかだとは思わなかったな……)
「えっへん!凄いでしょ~、とは言ってもとおるのお蔭でもあるのよ~?」
「え?何が?」
「母さんが大学生の時は、まだまだ普通に学生してて、経営学を学んでいていつかは起業したいと思いつつも、元手は無いし諦めていたのよ」
「ほうほう」
「でもとおるが生まれて、国からお金が出るようになったり、上京する事を決めたりして、少し時間の余裕が生まれたのよ、男児の育児中は男性の支援金に加え男児生活支援金も国から貰えるし、育児の合間にスキルアップと資格習得のために勉強出来たし、生活に困る事が無いからお金にも余裕が出来て、起業を始めたのよ」
「ほえ~、僕のお蔭というよりは国のお蔭だろうけど、そんなに手厚い支援を受けられるんだね」
「普通は無理なのだけど、男の子の場合はとても支援が手厚いの、結果的に上京して起業して、時間もお金もあったから最初は色々チャレンジ出来て、そんな経験を踏まえて今の会社になっていったのよ」
「私もそんな過去があったのは知らなかったなぁ~」
「会社が軌道に乗ったから、とおるが寂しく無いようにと思って水姫を産んだのよ~」
「「そうだったんだ」」
「ええ♪」
「そう思うと、男性がいるってだけで得られる支援は相当だよな~」
母さんの知られざる起業秘話に驚きつつも、つくづくと男性優遇の社会である事を実感する。
「それは当然よ、だって500倍の差よ?男女比は1:500なんだから、少しでも男性が健康的でストレスなく生活出来ないと、真っ先に国が滅ぶわよ、育児にお金を出すのは、未来の国の存続に投資しているようなものよ」
「そこまで酷いのか……」
「そういえば過去に、あらゆる平等を掲げる国で大量の男性が国外逃亡して人口不足となり、解体された国があったって世界史で習ったよ!何でも男性も女性と同じ待遇だったみたいだけど、あらゆる所で男性を巡って争いが起こり、内戦が多発して、治安の悪化によって男性は国外へ流れ、戦争と男性逃亡で人口は激減し、政権維持が困難となり解体したんだって」
「男性を優遇するという事は、国家の安定や安全において必須であると歴史で証明されたのよね~、だから男性を手厚く支援するのは国家として当然の事だし、女性市民にしても自分たちの国と生活を守るために男性市民のために税金を使う事は悪い事とは思ってないわ」
「そんな事が……」
(これはあまりにも男性が少ない事による弊害なのだろうなぁ~、人は希少な物を巡って争ってきた歴史が元の世界にもある。食料を初めに金鉱山やダイヤモンドなどの天然資源や石油などの化石燃料、そして世の中の利権など様々な必要かつ希少なもののために戦争は繰り返されてきた。そこに人口を増やすためには必ず必要な異性となる男性が少なく希少であるのだ、そりゃ戦争だろうし、納得だな)
「ええ、そして男少化の流れがある今は、今後ますます男性支援は手厚くなるだろうし、するべきよ、男性が増えれば人口が増える。人口が増えれば経済は上振れて人口ボーナスによる経済効果まで見込めるわ。国にとっては良い事でしかないわ」
「なるほどな~、確かに人口と経済は密接だし、その人口に関わる男性の母数を増やすためには支援するのが妥当か……」
「みずき難しい話はわかんないよ~」
「水姫はもうちょっとお勉強頑張ろうな」
「ええ~、お兄ちゃんの意地悪~」
「ははは、まぁそんな感じなんで、割とガチ目に配信とか頑張ってみます!という許可取り的なやつでしたと」
「ええ、応援するわ~」
「みずきも応援する!」
「母さんも、水姫もありがとう!」
(とはいえ、最初は顔だし無しだし、何か代わりとなるイラストや立ち絵があった方が動画としては見栄えが良いよな……そういえば、カフェのかおりんの看板、絵が凄く上手だったな……一度お願いしてみようかな?)
などと考えている内に夜ご飯も食べ終わった。
「「「ごちそうさまでした」」」
「そう言えばとおる~」
「どしたの?」
「男性センターからこれ届いてたわよ?」
「ん?何だろ、とりあえずありがとう」
母さんから手渡されたのはご本人様の開封をお願いしますとメッセージが添えられている、何やら色々と大事な書類の入っていそうなA4サイズの茶封筒だった。
本日もご閲覧頂きありがとうございます。
少しお母さんの話が出てきましたね~、一部設定と人物紹介を読まれていた方からすれば、お母さんの話は少しネタバレで既知の状態だったかもしれませんが、一応本作でもちゃんとお母さんの立ち位置を主人公に認識してもらう20話となりました。何やら怪しげな封筒も添えられてましたね、一体全体どうなっていくのやら……ぜひ次回もお楽しみに。
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