第1話 目覚めたら病院にいます!!
初めまして、自称猫好きです。( *´艸`)
閲覧して下さり、ありがとうございます。
久し振りの執筆なので、少しテンポ感がつかめないままです...
凡そ5000文字程ですが、お付き合い頂けると幸いです。
散歩道中に不思議なカラスに誘われた俺、葛野 徹は綺麗な桜の根本にあった歴史を感じる祠に何の因果か、参拝する事にあるのだが、当然胸を抉るような苦しみが襲い、目が覚めるとそこは、今まで生活していた自宅ではないどこか別の部屋だった。
鏡で見た自分はあどけなさの残るイケメンになっており、驚愕するのだが、また当然の頭痛に意識を手放した。
そして目覚めた先で……
「いや、パラレルワールドにきてるぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
まだ自分の状態が良く分かっておらず、身に覚えのない記憶や意識が混在し理解するには余りあるのだが、そんな混乱する中で、一つ確かに分かっている事は、ここは今まで生きてきた世界とは、別の世界であるという事。
「いやいや、どういう事よ……」
あまりの混乱から先ほどは思わず叫んでしまったが、一先ず落ち着く必要がある。
そう思い、上体を起こして辺りをじっくりと見回すと、どうやらここは病院のようだ。
(個室じゃねぇーか、そんなお金ないぞ……)
っと大学生活を思い起こすと、涙なしでは語れないお財布事情だったっため無意識に刷り込まれているような貧乏が故か、そのような事を思う。
窓からは綺麗な日差しが差し込んでおり、温かい空気で充満している。
(今の僕はあれか、良くある物語のように異世界に行って転生した的な感じか?)
どうみても馴染みのある日本だが、そんな事を思うのは、やはりここが今までの常識とは大きく違う世界だからだろう。
というのも、未だに記憶はぐちゃぐちゃでまともな考えが出来る状態では無いが、恐らく転生というよりは、憑依ともとれるような形で、元の体の持ち主の意識や記憶が混在しており、感覚的に価値観が違う世界だと感じるのだ。
「とりあえず、落ち着こう……うん、落ち着こう」
口に出すとちぐはぐな考えも不思議と冷静になってくる。
何となく戻ってきたという感覚もあるのは不思議だが、とりあえず情報収集をしようと思い、備え付けのテーブルにおかれているリモコンを手に取って、テレビをつけてみる。
「比較的男性の多い、高齢者世代の減少に伴い、近年の男女比が1:500まで達しているという統計が出ております。
少子化問題、男少化問題に対して、どのような対策をとるべきか、政府としての考えはどのような物でしょうか?」
「昨今の少子化、あるいは男少化の対策として、政府としては、重婚枠の増加を認め、あるいは男性保護のための対策を強化するような施策を、進めて行く所であります。」
「具体的な施策内容はございますか?」
「男性保護家庭への追加補助金制度を導入し、男性がより献精を行ないやすいような、新しい施設の導入を各都道府県や自治体と協議を重ね検討しております」
「男性の人権保護の観点について……」
どうやら重鎮っぽい女性の内閣官房が、記者会見を開いているようだ。
それにしても、内容の理解が追いつけない……
(男性保護とか献精とはなんぞや?1:500って……そんな男女比ありえるのか?
というか、どういうベクトルの話だよ……少子化は分かるけど、それ以外は一ミリも分からん!)
他のチャンネルも色々と見てみると、画面に映るのは女性ばかりで、およそ男性の姿は見られなかった。
ふと高校時代の数少ない友人が、男性の少ない世界にトリップするという内容の小説にハマっていたのを思い出し、まるで物語の中のような世界だなと思ったが、現実に起きている事だと自覚する。
モテモテになれるからラッキーなんて事を思わないでもないが、そんな事よりも、仲良くしていた友人や女手一つで育ててくれた母親の事を思うとどうにも不安だ。
「母さん、ごめん……」
親不孝にも死んでしまった事を悔いていると、誰かが扉をノックする音が聞える。
コンコン
「葛野さん、入りますね~」
扉の向こうから聞こえた声に返事をする。
「大丈夫ですよ~」
すると慌てるように勢いよく扉が開かれる。
「か、かどのさん目が覚めたのですか!?」
入ってきたのは20代後半くらいの、可愛らしい看護師さんだった。
慌てふためいたその姿は、まるで小動物のようだ。
「お体大丈夫ですか!?お、お水!お水飲みますか!?ああ……ええっと……」
「大丈夫ですよ笑、お水頂けると幸いです。とにかく落ち着いて下さい。」
「す、すみません……」
シュン……というような効果音と共に大人しくなった看護師さんは、部屋に設置された小さな冷蔵庫からお水を取り出した。
「こ、これどうぞ!」
「ありがとうございます~」
「あっ……」
お礼をして水を受け取る時に、どうやら少し手が触れた事に照れているのか、看護師さんは恥ずかしそうに、目をそむける。
(……天然かな?)
「ここって病院ですよね?僕の体ってどうなってますか?」
「その、凄くカッコいいです!!」
「あ、いや、そういう事ではなく……」
「あ、すみません……葛野さんはご自宅で突然意識を失い倒れられたとの事で、今朝この病院に緊急搬送されました。何か気分や体調が悪かったりしませんか?」
カッコいいと言われ、少しビックリしたが聞きたい事はちゃんと聞けたので安心する。
「気分とかは大丈夫です、ただ少し記憶?意識?が混乱していて色々と定かではないので、いくつか質問しても大丈夫ですか?」
「はい!何でも聞いて下さい!私の名前は琴葉 萌花です、因みに彼氏は募集中です!」
「あはは……えっと取り敢えず今日は何日ですか?」
「本日は3月2日の土曜日です!」
元気な受け答えで大変微笑ましいのだが、ちょっと反応に困る……
とはいえ、以前の世界と日時は同じなので、時間軸は同時平行的だと推察できる。
いや、散歩して倒れてから、アラームで一度起きているから同じ訳ではないのか?
とは言え誤差の範疇か……
「僕の名前って葛野 徹であってますか?」
「はい!お母様からはそのように伺っております!
もしかして、ご自分の名前とかも分からない感じでしょうか?」
「いえ、分からないというよりかは、少し混乱していて不明瞭って感じです」
「成る程……もしかしたら脳に何か問題があるかもしれないので、一度細かい検査を受けてから退院手続きの方が良さそうですね」
「ありがとうございます」
「えっつ!あ、はい!……ふわぁ……天使だ」
どことなくお転婆の気配を感じずにはいられないが、どうやら職務は全うしてくれるようだ。
最後の方はボソボソ何を言っているか分からなかったけど、そこまで気にするような事では無いのだろう。
その後いくつか質問を重ねて、改めて情報を整理してみる。
どうやら僕は同姓同名で葛野 徹 という人物と意識が合体したらしい。
母親であろう人物が記入した問診票によると、年齢は14歳で生年月日は2003年3月20日との事。
元の世界での生年月日は確か2001年3月20日だったので、後18日もすれば誕生日だというのには変わりないようだ。
およそ2年程の誤差があるようだが……とは言え、この世界は女性が多い世界なので、先進技術や歴史には大きな違いがありそうだ。
それを思うと、二年の違いは大した問題では無いだろう。
「色々教えて下さりありがとうございます、この後の流れって何かあったりしますか?」
「っへ?あぁ、一先ずご家族の方に連絡しますので、面会をされた後、脳の異常が無いか確認するために、頭部のMRI検査に、心電図、後は採血の流れだと思います……」
そんな説明をしながら看護師の琴葉さんは頬を赤くしてもじもじとしている。
「そ、それと……男性不妊症などの問題が無いか確認するために、せ……精液検査も最後にお願いする事となります」
「はぁ、そうですか。
確かに不妊症だったら困るので、この機会に色々調べられるのは、非常に助かりますね~、ありがとうございます」
「えっっ!?そ、そのご不快では無いのですか?」
(ん??どゆこと?)
琴葉さんは頬を赤らめ少し恐縮しながら、顔色を伺うように聞いてくる。
確かに精液と聞くと少しセンシティブに聞えるだろが、ここは病院だし、それくらいの事で動揺する事は無いだろう。
あくまでも検査だし、少し恥ずかしい気持ちはあるが、不快になるような事は何もないはずだ。
「不快……ですか?ここは病院だし、そういった検査がある事は知ってます。
少し恥ずかしい気持ちはありますが……
特別気分を害するような事では無いですよ?
何か気になる事でもありましたか?」
俺は単純に疑問だったので聞き返してみる
「は、はえぇぇ……葛野さんって凄いですね……職業柄、男性とお話する機会には恵まれていますが、こんなにちゃんとコミュニケーションが出来る方は初めてです!
そ、それに何だか達観していてよく出来た大人みたいですね……」
「そうでしょうか?」
「は、はい!とくかく、良い!凄く良いと思います!天使です!」
「て、天使ですか?恥ずかしながら、そこまで褒められるような事は無いですよ(笑)
確かに年齢にしては少し落ち着いた性格ではありますが、このくらい普通ですよ!普通!あはは……」
達観してる、とか大人みたい、とか言われると、精神年齢的には当にお酒も経験済みの21歳とは言えず、内心ドキドキして苦笑いをしてしまう。
(少し普通を強調しすぎたかな……?まぁ……いっか)
「普通だなんてとんでもない!
男性の葛野さんにお話するのは心苦しいですが、普通の男性だと、ボソボソ何を話しているのか分からなかったり、急に怒鳴り声をあげたりと……それはもう大変なんですからぁ~」
「そうなんですね……それは大変ですね……」
「それに比べて葛野さんは、凄く親切で、受け答えもしっかりしていてカッコいいし、可愛いし、性格も良いとかもう天使だし……とにかく、全然普通の男性とは違いますよ〜!凄く良いと思います!」
琴葉さんは推しを語るオタクのようにまくし立てるように話す。
どうやら僕は、この世界の男女比が女性に偏っているという事実を軽く見過ぎていたようだ。
(というか、この世界の男性ってそんな珍獣みたいな感じなの!?
コミュ力とか以前の問題じゃんか……)
「そんなに褒められても何も出ないですよ~チップでも渡した方が良かったですか?笑」
(男として出せるものはあるが、後の検査に必要だな……)
などと内心下らない事を思いながら返事をする
「そ、そんなとんでもないです!寧ろ私がチップを支払うべきでしょうか……?」
などと琴葉さんは頓珍漢な事を口にしている。
(というか、あまりにも男性に対して過剰じゃないか?この反応も、この世界の女性としては普通なのかな〜?男としては褒められて嬉しい気持ちもあるが……やりすぎなくらい褒められると流石に恥ずかしいな……)
「いや、流石に冗談ですから、チップなんて渡すにも、貰うにも困りますよ(笑)」
「そ、そうですよね……」
価値観が違うと、こうも話が嚙み合わないのか……と思っていると、琴葉さんは時間を確認してから慌てて話しかけてきた。
「あ、そういえばまだご家族の方に連絡していなかったですね!
お母さまも早く目覚めたことを知りたいでしょうから、一度失礼致しますね!」
そう言って琴葉さんはペコリとお辞儀をしてから慌てて退出した。
「わちゃわちゃしてて、何だかリスみたいな可愛い人だったなぁ……」
そんな事を呟いて、おれは病院のベッドに背中を預ける。
(にしても、あれだな〜、14歳の話し方にしては流石に変だったかな?
病院はまだ良いにしても、家族とか学校とか、そういった場では、もう少しフランクな方が良さそうだな……しばらくは色々慣れるまで大変だけど……)
「あまりネガティブに考えない方がいいか……」
(せっかくあんな死ぬ経験?をしたからには、この世界での人生はちゃんと楽しまないとな……
それに、合体してしまった元の持ち主の事もあるし、ちゃんと幸せにならないと……
いっその事、今まで出来なかった事とか、やりたかった事とかノートにでも書き出して、一から叶えてみるのも楽しそうだなぁ……)
そんな事を考えているうちに、短い時間だったが、この世界の人と初めて話した事の緊張で疲れ、だんだんと瞼たが重くなり、やがて微睡に意識を委ねるのだった。
最後まで閲覧して頂きありがとうございます!
男女逆転系は個人的に好きだけど、あまり作品数が多くは無いので
気分転換にでも執筆しようと思ったのがきっかけです!
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