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5 初戦闘

 遠くの方で男女の二人が猿の群れに襲われている。

 猿の群れは魔物か何かだろうか?

 まぁなんにせよこれはマジで助けにいくしかないだろうな。ここで無視するのは流石にどうかと思うし。


「ひとまず千里眼解除と。よし、サクッといったりますか」


 でもどうやって行こうか。

 まぁ走っていくしかないだろうな。


 そう思い走り出そうとした俺だったが、ここでとある問題が発生した。

 俺の側には無用の長物と化した本が詰まった二つの紙袋が置かれている。

 要するにこの紙袋どうするの問題だ。

 ……いや、もう流石に置いていってもいいんじゃないか? でもせっかく神様から貰ったものだしな、なんか悪い気もするんだよな、かといって持っていくとなるとただただ邪魔だし……


 一瞬考え、結局俺は紙袋を持っていくことにした。

 やはり置いていくのはなんか悪いし、元々は俺が頼んだものだ。貰い物を簡単に捨ててはバチが当たりかねない。


「くそっ、これでいいのか」


 俺は紙袋を両手に走りだした。

 いや当然のように走りづらいんだが。でもなんか思ったよりは重くないな? なんでだろう、まぁそんなことはどうでもいいか。というか今の俺の絵面とんでもないことになってないか? 紙袋を両手に森を駆ける奴とかどう考えても変態以外いないだろ、あーあ、これはまた天国の神様に笑われてるかもしれないな。くそー。


 そんなことを思いながらも、俺はぐんぐんと加速した。

 そして気づけば男女が戦っている付近にまで来ていた。

 意外と早かったのかな。


「さて、どうなってるのかな……」


 まだ戦っている音がする。

 猿たちのキッキという鳴き声がうるさい。興奮状態ってやつなのかな。

 俺は近くの木陰から覗いてみる。

 そこではやはり女の方が戦っており、猿たちの攻撃を杖のようなものでなんとかいなし続けてるところだった。良かった、流石に早く駆けつけただけあってまだ無事だったな。紙袋問題で悩み続けてたら間に合わなかったかもしれないから、マジですぐに判斷した俺ナイスだな。だがどうする? このまま飛び出して援護するのか?


 ちょっとだけ様子を見てみると、やはり女の方はかなり押されていて、いつ均衡が瓦解してもおかしくない状況だった。

 やばい、助けるなら早くしないと。というか男の方はマジ何してんだよ、もう完全にお尻をついてダウンしてるしさ。まぁ俺が言うことでもないかもしれないけどさ。


「どうするやっぱり魔法を撃つか」


 というか俺の攻撃手段はそれくらいしかない。

 喧嘩なんてしたことないから、殴り方とかもよくわからないし、ここは神様に与えられた魔法攻撃でなんとかするしかないだろう。あー、不安だな、でもしょうがないよな、いずれは戦わないといけない瞬間はどっかでくるわけだし、カエルから逃げ続けるのもダサすぎるしな。よーし。

 覚悟を決めた俺は、魔法をぶっ放してやることにした。

 とりあえず猿たちを纏めて吹き飛ばそう。

 一気にバーンみたな感じでぶっ飛ばす魔法ないかな。


 そう思った俺の脳裏にまた一つの魔法が浮かんできた。

 なるほど、これか、やってみるしかないよな。


 俺は木陰から猿たちに向けて手をかざした。

 まぁわざわざ正々堂々と出ていく必要はない。怖いとかじゃなくてな、不意打ちというやつだ。



「くらえ、ウインドランページ【暴風】」



 その言葉を発した瞬間、俺の手から凄まじい圧の風が飛び出した。

 だが俺自体に危害はない。

 風は手を向けた先にまっすぐ飛んでいく。



「キキ!?」



 何かを感じ取ったのか気づく猿もいたが、もう遅い。

 暴風は猿たちの半数近くを凄まじい速度で巻取り、そのまま遠くの方へぶっ飛ばしていった。すごい、紙吹雪みたいだ、どんだけの威力だよ。



 そして通用するとわかった俺は、位置を変えるために正面に飛び出し、残りの猿に向けて再び暴風を放った。猿たちは警戒こそしていたが、なすすべもなく遠くへ吹き飛ばされた。飛んでいった先でどうなるかは知らない。まぁただじゃ済まないことは確かだろうな。


「ふぅ、案外うまくいったのかな」


 さすが魔法、最強だな。

 女の人をよけながら撃ったというのがポイント高いんじゃないか。意外と魔法の制御も効いたし、俺の意思をある程度反映してくれるのかもしれない。

 それになんかすごい気持ち良かったかも。これも異世界転生の醍醐味ってやつなのかな。



 ひとまず満足した俺は、紙袋を取りに戻った後、残った女の人の元へ歩み寄った。


「大丈夫ですか?」


「…………#%」


 女の人は放心状態のようだった。混乱しているのか言葉もよく聞き取れない。

 まぁ無理はないか。ピンチの状況が一気になくなったわけだからな。そしてその後訳わからないやつが出てきたとなれば誰だお前、ってなるよな。


「怪我とかありませんか?」


 再度尋ねてみる。

 女の人を近くでよく見ると三十代くらいの見てくれで、後ろ髪をポニーテールで縛っていた。なんだろ、遠目からだと意外と若く見えたんだけど、接近すると小じわがちょっと目立つかな。いやいやそんなこと思っちゃだめだ。一人で勝手にがっかりするなんて最低なやつがすることだ、俺はそんなこと思わないぞ。

 俺がかなり失礼なことを考えていると、女の人は再び口を開いた。


「#$H&dLWCO”%%……?」


 またもや何か意味の分からないことを喋っていた。

 まだ混乱してるのだろうか…………いや、待てよ。もしかしてこれって……言葉が通じてない?




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