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 しっかり魔法を使えることはわかった。

 となれば後は魔物なんかを討伐したいところだよな。


「でもどうやって探そうか」


 ダッシュで駆け回るか?

 いや、それは流石に骨が折れそうだ。待てよ、そういえば魔法を使えたりしないか? そうだな試してみる価値はありそうだ。さすが俺ナイスひらめき。

 神様いわく、俺はこの世界にある全魔法を使えるようになっているらしいので、何かいい魔法の一つくらいあるだろ、流石に。


「何か周囲を見渡せるような魔法は……おっ」


 そう思ったところでまたもや一つの魔法名が脳裏に浮かんできた。

 ふっ、やっぱりな、これを唱えればいいんだろうな、よーし。


「いくぜ! アナザービジョン【千里眼】」


 俺は意気揚々と魔法を発動させた。

 そして次の瞬間、視点が少し変わった気がした。

 ……あれ? なんだ、視点が少しだけズームしたというか、前方にスライドしたのはわかったけど……そっから何も起こらないぞ……もしかして失敗とか? ってうおッ!


 俺は不覚にもつまずいて思いっきり転んでしまった。

 いった……くはないけどマジでなんなんだよこれ……キレそう。


 コケてしまった俺だったが、ここで一つでおかしいことに気がついた。

 俺はたしかに転んだ。手が地面についてる感覚もある。

 しかしながら視点は転ぶ前と変わらないままだったのだ。


 え……どういうこと? 俺は確かに転んでるのに、顔を振ったりしても何も変わらない。まるで視点が分離してるみたいな……

 もしやと思い、俺は視点を動かすように念じてみた。

 すると視点がスーッと滑るように前へと移動した。


 おお、なんじゃこりゃ。すごい。

 視点が動く、それも前だけじゃなくて左右上下にも……不思議な感覚だけど視点を自由自在に動かせるぞ! なるほど、この魔法はこういう使い方をするやつだったんだ。説明書くれよな。


(よし、じゃあ早速偵察してみますか、って、おお、俺も見れるのか)


 俺は面白くなってついその辺をブンブンと意味なく旋回させていたが、その仮定で視点を操作する俺自身を発見した。

 それはそうだ、視点は俺から分離しているので、当然三人称視点から俺の本体を見ることができる。

 俺は生前と何も変わらない姿のままだった。

 そして地面に突っ伏していた。

 おい、何やってんだよ俺、これ息できてんのか? 全く動いてないし死んでるみたいになってるんですけど。しかも自分を俯瞰して見るってなんか気持ち悪い。


(まぁいいや、とにかく先を見よう)


 俺はとりあえず前方方向を探索してみることにした。

 前方には森があったので、侵入させる。

 森の中は当然木々が立ち並んでいたが、視点の操作性は抜群で、器用にかわしながら進めることができた。まるで高性能ドローンだな。速いし小回り効くし、なんか思ったより面白いかも。


(おっ? あれは)


 そしてしばらくドローンを飛ばしていた俺だったが、ふとした瞬間、何か動くものを見つける。

 近づいてみてみる。

 それは大量の芋虫だった。

 数十匹はくだらない芋虫の群れが、樹液かなにかを寄ってたかってすすっていたのだ。


(お、おえええええぇぇええ!)


 き、気持ちわるすぎ、何匹いんだよめちゃくちゃデカイしさぁ。くそ、気色悪いもん見せやがって、気分だだ下がりだわ。

 憂さ晴らしに魔法をぶっ放しに行ってやろうとも思ったが、異世界で最初に倒す敵がこれじゃちょっとしまらない。別に近づきたくないからとかじゃないぞ、決してな。


 とりあえずこれはスルーし別を探す。

 すると今度は少し行ったところで、カエルなんかも見つけた。

 だが少し様子がおかしい、いや、俺の目がバグってるとかじゃなければ体長が優に俺以上はあるよな気がする。隣の木の大きさから考えても絶対そうだ。しかも肌の色とか蛍光色の紫だし、明らかに地球にいないだろコイツ怖えええぇぇ。それに全然動かないのがまた怖い。急に飛び跳ねたりされたら確実に尻もちを着く自信がある。


(だ、だめだ、この森だめだ)


 ああ、俺はもうこの異世界で生きて行くのは無理かもしれない。

 弱い……俺は弱い!

 そんな風に諦めかけたときだった。

 ふと、適当に飛ばしていた視点にまた何か引っかかった。


 それは人間だった。

 二人の人間が、よくわからない猿のような奴らに囲まれている。

 おっ、やばい人間だ。一人は男で……一人は女じゃないか? 見たところはこの二人だけみたいだけど……なんだろ、戦ってるのだろうか。簡素な荷馬車があって、その側で臨戦態勢をとっている。

 そしてどういうわけかは知らないが、女は立って戦う素振りを見せているのに、男は膝をついて顔を苦渋に歪めている。なんだ、休憩中か? こんな状況でコーヒーブレイクか? いや、流石にサボってるわけないか、ダメージを食らってるだけだろうたぶん。それに女の人の方もそうとう苦しそうだぞ、表情で分かる。これはあれか? もしかしてやばい? 絶対このままだと押されて死んじゃう未来になるよね。うーん、でも怖いんですよね……いや、そんなんじゃダメだ、俺はこの世界で生きていかないといけないんだ。それにここで引き下がっては男が廃れるというもの。いいさせっかくの機会だ、何かの巡り合わせと思って助けにいってやろうじゃないか。


 俺は千里眼を解除し、現場に向かうことにした。

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