転生したけど・・・
(ここはどこだろう。私はどうなったのかな。)
思うように身動きが取れない。思いまぶたを開けると高い天井にこちらを覗き込む人影が見える。
「目を覚ましたのね。アイリス。」
母と思しき美しい女性が私を抱き上げる。
(ほんとに生まれ変わったのね。)
眠気に誘われるままに目を閉じた。
あれから2年が経った。
私はナイトレイ伯爵家が長女、アイリス・ナイトレイに生まれ変わった。仲睦まじく美しい両親から生まれたからにはとわくわくしながら初めて鏡を見た時は驚いたものだ。
異世界転生のテンプレ通りだったらここであまりの美しさ、もしくはかわいさによって
「え!これが私?」
と目を輝かせて言うものだろう。
しかし私の場合は同じ言葉でも意味はまったく違った
。軽めの絶望という感情がふさわしいだろう。
ゆるいウェーブのかかった茶髪に茶色の瞳。両親のどちらにも似ておらず、横に並んだら印象に残らない顔だちをしている。強いて褒め言葉をあげるとしたら可愛らしい、だろう。
「これがわたちなの?これでおとめげーむでむちょうするなんてむりでちょ。」
口は回らず幼児の体はままならない。
乙女ゲームに登場する美形の目に留まるのは、それにかなうような美貌の持ち主でないといけないのが定番だ。
両親と使用人しか見たことはないが少なくともそれだけで判断はできる。
鏡の前で項垂れると右耳につけている緑のイヤリングがチャリと音を立てた。これは生まれ変わる寸前に光から渡されたものだ。生まれたときから右手に握りしめていたと現世の母から聞いている。以降お守りとして肌身離さずつけているが何も起こらない。
(容姿がダメでもきっとすごい才能を持ってるはず!)
容姿は平凡なことがわかった。ならば次は才能だと立ち上がる。
この世界には魔法が存在した。母は風魔法の使い手であったため魔法が使える場面は見ていた。
今度こそ特別な才能があるはずだと母にせがんだが、さすがに2歳に実戦は早すぎると断られてしまった。代わりにと座学が始まった。
座学といっても母からこの国のこと、魔術の基礎を教わるものだ。
母によると魔法を使うにあたって魔力が必要になる。
魔力を保持しているそのほとんどは王族や貴族だという。庶民の中にもごく稀に魔力を保持するものがいる。
魔法には5つの属性がある。火、水、風、土そして光だ。
人は生まれながらにそれぞれ1つの属性を持って生まれるが光属性を持つ者は約100年に1人の割合でしか生まれない。
そのため光属性の魔法使いは王家から手厚い保護を受ける。
母は魔法の基礎を教えてくれたが、2歳の娘に話すものなのでさわりだけだ。
知識を得て動くなら早い方が良い。何しろ無双しなくてはならないのだから。
しかし2歳のアイリスは言葉は喋れても字は読めなかった。
ならばと今度は文字を学ぶことにする。
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