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平凡な私

「すみませんでした。」

今日も下げたくない頭を下げまくる。

私、神崎唯は世間の荒波に揉まれている。

小さいころからとりたてて特徴のない子供だった。

なんとなく生きてきて、なりたいものもなく、なんとなく大学に入学し、なんとなくで会社員になった。

なんとなくで入った会社に社会の厳しさを叩き込まれる毎日だ。

「こんなこと言いたくないけどさ、今週で何回ミスしたかな?もう怒るのも疲れたから行っていいよ。」

こちらをちらりとだけ見た課長はすぐに興味を失ったように手に持っていた書類に目を向けた。

「すみませんでした。失礼します。」

(こんな会社くそくらえ)

と思いながら自分の仕事へ戻り退社のために全力を尽くす。



「ただいまー。」

へろへろになりながら自宅のドアを開けるとエプロンを着た母が奥から出てくる。

「あらおかえり。遅かったわね。夕飯出来てるから早く手を洗って着替えてきなさい。」

母の優しさに感謝しながら洗面台に向かい身支度をする。

母と食事をしたら後食器洗いは私の担当だ。

ガチャガチャと皿洗いをしていると背後で食後のお茶を飲んでいた母から声がかかる。

「お父さんと別れたからあんたには小さい頃から寂しい思いをさせてたね。」

「急になに?」

突然感傷にひたった母に笑いながら返事をする。

「そういえば昔あんたってば私は人とは違うの!人には見えないものが見えるのよってよく言ってたわね。」

「え、なんの話?」

洗い物を終えて振り向く。

「あれはあんたが中学生くらいの頃だったかしら。

私は人には見えないものが見えるのよって言ってたじゃない。その頃はお母さんも仕事であんまりあんたと一緒にいられなかったけど、いつも友達の男の子の話をしてたのはよく覚えてる。」

母は懐かしそうに目を細める。

(見えないものが見える?友達の男の子?)

自分の記憶を辿ってみるが思い当たらない。中学生の頃は多感な時期であり女友達と一緒にいることが多く、とりたてて話すような特別仲のいい男友達はいなかった気がする。

「思い違いじゃない?」

苦笑いをしながら返事をする。

「そうだったかしら?うーん・・・っていけない!明日は朝から会議なのよ!もう寝るわね。あんたも早く寝なさい。おやすみ。」

時計を見た母は慌てた様子でコップに残ったお茶を飲み干しリビングを後にした。

「おやすみー。」

すでに姿の見えない母に声をかける。

先程の母との会話を思い出す。記憶を辿るがやはり見えないものを見たこと、仲の良かったという男の子のことは思い出せなかった。

「私も早く寝よう。明日も仕事だ。」

自分に言い聞かせてリビングの電気を消し、自室へと向かった。



「行ってきます。」

今日も今日とて仕事だが仕事前にやることがある。

私には出社する前に近所の神社を参拝するルーティンがある。

階段を登り、鳥居をくぐると明るい空間が広がっている。

木々に囲まれたこの神社は木漏れ日が差し込み清浄な空気に満ちている。

手水舎で手を清めたあと参拝する。

ここで願うことはいつも同じだ。

(生まれ変わったら特別になれますように‼︎)

平凡な人生の脱却を願う。

「よし!今日も行ってきます!」

気合を入れて神社を後にする。

自宅から会社までは電車で行く。神社を出て横断歩道で信号待ちをしているとランドセルを背負った男の子が向かいの道路を歩いている。遊びで使うのだろうかピカピカに磨かれたサッカーボールを大事そうに抱えている。

(かわいいなー)

と眺めていると不意に男の子がつまづいた。

幸い転倒は免れたが抱えていたボールは彼の手を離れた道路へと転がった。男の子はボールを追いかけて道路へと歩き出してしまい近づいてきているトラックの存在に気づいていない。

「危ない‼︎」

とっさの出来事に身体が動いていた。

男の子を突き飛ばすとドンと鈍い音と共に衝撃が走りそのまま意識を失った。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

続きをいち早く投稿できるよう頑張ります!

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