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風で転がるカラス

ゴミ出しに行く途中、前方から風を受けたペットボトルが足元に転がってきた。ついでなので拾い上げる。

最近またゴミボックスのパズルが難化した。

カラスの進化が急だ。


今の奴らは旧来の、錠をくるっと回して扉に引っ掛けるだけのゴミボックスなどいとも簡単に開けてしまう。自治体は対抗策としてゴミボックスの錠をどんどん複雑にしていった。しかし飢えた都会のカラスが選んだ生存戦略は真っ向からこのパズルに挑むことだった。


このいたちごっこは半世紀ほど続いていて、今日からこのゴミボックスにも最新版のパズルが設置される。


一つのボックスにつきパズルは5つ。つまり一度に解くことができるのは5人だ。これは急激なパズルの難化でゴミ出しが遅れることにより社会が止まってしまうことへの配慮だ。誰か1人でも解くとゴミボックスが解錠される。

今日は3人の町内会賢者に混ざり、2羽のカラスがパズルに挑んでいる。彼らの後ろには住人がゴミを持って列をなし、戦いを静かに見守る。


(もしここで、カラスがパズルを解いても奴らはこのタイミングではゴミを荒らさないのだ。おそらく人が多いためだろう。一通り住人がゴミを捨てた後ゆっくりと荒らすのだ。

賢者3人の額に汗が浮かんでいる。最新のパズルはもはや常人に解けるような代物ではないのだ。膠着状態がしばらく続く。カチャカチャと音が鳴り出した。賢者の一角、数学好きの斉藤さんだ。そこから彼の指先は止まることなく、とうとうパズルを解き切った。住人達の歓声が上がる。

最近若手が台頭し始めているゴミ出しパズル。初老の斎藤さんは久しぶりに解けてご満悦だ。

カラス達は自分のパズルをつつき回し、しきりに首を傾げている。

喜びを共有した後、列をなす住人達が動きだし、規則的にゴミを捨てていく。限られた朝の時間のロスを少しでも取り戻すように無駄がない。


今回は人間の勝利だったが、カラスが勝つこともあった。その時住人達は後で荒らされると分かっていながらゴミを出さなければならない屈辱を味わうのだ。


ともあれ今日も無事にゴミを出すことができた。

さて、会社に行こう。

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